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トランプ大統領の施政方針演説について

中西 治

2017年2月28日に米国のトランプ大統領が米国議会上下両院の合同会議で大統領就任後初めての施政方針演説をしました。

Trump address to joint session of Congress 2

トランプさんは演説の冒頭で米国において毎年2月に催されている「黒人歴史月間」が終わるにあたり、「今夜、私たちはこれまでの公民権運動の歩みとまだ残されている課題を思い起こしています」と述べ、「拍手」を受けました。

続いてトランプさんは「アメリカのそれぞれの世代は真実、自由、正義のたいまつを今日まで受け継いできました。そのたいまつはいま私たちの手にあります。私たちはそれを世界を照らすために使います。私は今晩ここに団結と強さのメッセージを伝えるためにいます。それは私が心からの思いを込めて送るメッセージです。米国の偉大さの新しい章がいま始まっています。私たちが今日、目にしているのはアメリカ精神の再生です」と述べました。

さらにトランプさん次のように語りました。

「9年後の2026年にアメリカ合衆国は建国250年ー独立宣言250年を祝います。それは世界史における偉大な里程標の一つです。アメリカは250年を迎えるときどのようになっているのでしょうか。どのような国を私たちは子供たちに残すのでしょうか。」

トランプさんは演説の開始と同時に聴衆の意識を1776年7月4日の独立宣言に戻し、自己をその思想の継承者として位置づけました。

トランプさんはこのあと米国の現状を次のように描きだしました。

  1. 多年にわたり米国の雇用や富が外国に流れ、国内の中間層が縮小しました。外国のプロジェクトには次々と融資し、建設してきましたが、米国のシカゴ、バルティモア、デトロイトなどの市の子供たちの運命は無視されてきました。他国の国境は守ってきましたが、自国の国境は開けたままでした。誰もが国境を越え、ドラッグ(薬物)が流れ込んできました。米国は中東だけでおよそ6兆ドルを使いましたが、米国内のインフラはぼろぼろでした。
  2.  労働人口に加わっていない米国人が9400万人います。4300万人を超える人々が貧しさのなかで暮らしています。そして4300万を超える米国人がフードスタンプ(食糧配給券)に頼っています。働き盛りの5人に1人が働いていません。
  3. 北アメリカ自由貿易協定(NAFTA)が承認されてから製造業の雇用の4分の1以上を失いました。中国が世界貿易機関(WTO)に加入してから6万以上の工場を失いました。2016年の米国の世界貿易赤字は8000億ドルに達しました。

トランプさんはこの現状に対し不満を持つ民衆を2016年の大統領選挙のときに自己の支持者に変えました。「地殻変動」が起こり、トランプさんが大統領となりました。

トランプさんは次のような施策を提起しました。

  1.  米国人の職を奪う「環太平洋経済連携協定(TPP)」からの撤退。
  2. 「暴力犯罪減少のためのタクスフォース」の創設。薬物の流入阻止、若者への汚染阻止。
  3. 「南側の国境沿いに大きな壁」を建設。
  4. 「過激なイスラムのテロリズム」から国を守るために強硬手段をとる。
  5. 「歴史的な税制改革」。大きな税率カット。企業への税率を減らし、中間層に対しても大型減税実施。
  6. 米国内のインフラに官民の資金で「1兆ドルを投資」し、数百万の新規雇用を生み出す。この取り組みの核となるのは「米国製品を買うこと」と「米国人を雇用すること」。
  7. 「オバマケア(オバマ前大統領の医療保険制度改革)」の廃止。新しい制度改革の実施。
  8. 数百万人ものアフリカ系米国人やラテン系米国人の子供たちを含む若者が「通学する学校をえらべるようにする資金」を提供。
  9. 警察官や保安官などの「法の執行者を支援」。
  10. 「犯罪被害者への支援」。
  11. 米国の安全を保持し、米軍に武器を提供するために「米国史上で最大級の国防費の増額」。

「大盤振る舞い」です。問題は「歴史的な税制改革」の中でこれらの施策が実現できるのか否かです。

トランプさんは対外政策について次のように述べました。

  1. 北大西洋条約機構(NATO)を強く支持します。しかし、私たちのパートナーは財政上の義務を負わなければなりません。
  2. NATOであれ、中東であれ、太平洋であれ、私たちのパートナーが戦略的、軍事的な作戦の中で直接的で意味ある役割を担い、そして応分の費用を負担することを期待します。
  3. 米国はすべての国が自国の未来図を描く権利を尊重します。私の仕事は世界を代表することではなく、アメリカ合衆国を代表することです。
  4. 私たちは過去の失敗から学ばなければなりません。戦争や破壊などの人道危機を解決する唯一の長期的方法は、自らの土地を追われた人々が再び安全に故郷に戻り、生活を再建する長い、長いプロセスを始められる状況をつくることです。
  5. 米国は利害関係を共有する新たな友人たちと出会い、新たな関係を築くことに前向きです。米国は過去の敵とも今は友人です。最も緊密な同盟国のいくつかとは、何十年も前、ひどい、ひどい戦争で敵国として戦いました。この歴史から私たちは、よりよい世界をつくれる可能性を信じることができるはずです。

最後にトランプさんは再び2026年の建国250年に戻り、次のように語りました。

建国100周年だった1876年に全土の市民がフィラデルフィアに集ったとき、アレキサンダー・グラハム・ベルが初めて電話を展示し、レミントンが最初のタイプライターを紹介し、トーマス・エジソンが自動電信と電気ペンを見せました。アメリカの250年に私たちの国はどのようにすばらしいものを知ることができるのでしょうか想像してください。

トランプさんは「もう一度、アメリカを信じて下さい」、「合衆国に神のご加護を!」との言葉で演説を終えました。

トランプさんはずいぶん「アメリカ合衆国大統領」らしくなりました。

ロシア、中国、朝鮮半島の問題については沈黙を守りました。

トランプさんの周りに知恵者がいることを感じました。

最大の問題は「米国史上最大級の国防費の増額」が実際にどのようになるのか、それが米国をどこへ導き、世界をどこへ導くのかです。

「国防費増額」は不況のときに考える政治家の「浅知恵」です。それが「戦争」へと導くのです。

真の政治家は「開戦・戦中・戦後」を考え、平和的に問題を解決することを考えるのです。

2016年の米国大統領選挙を終えて

中西 治

2016年の米国大統領選挙最終結果が出ました。

Breaking: Final Election 2016 Numbers! | Alternative – Before It’s News によると、結果は次の通りです。

ドナルド・トランプさん  得票数62,972,226 選挙人数306人
ヒラリー・クリントンさん 得票数62,277,750 選挙人数232人

トランプさんが得票でも選挙人でも多数を占めました。いよいよ米国で「オバマ時代」が終わり、「トランプ時代」が始まります。

この機会に、これから米国・世界・地球・宇宙はどうなるのかについて考えてみたいと思います。順序を逆にし、宇宙と地球がどうなるのかから始めます。

クリスチャンとスピールの「宇宙の未来年表」やNewton別冊『大宇宙――完全版――』によると、宇宙はいずれなくなります。そのなくなる時期は「10の10乗の76乗年後」とか、「10の100乗年後」とか様々です。「10の10乗」が「100億年」、「10の14乗」が「100兆年」ですから、いずれにしても、21世紀に生きる私たちが宇宙の消滅を心配する必要はありません。地球を含む太陽系がなくなるのは50億年後から80億年後と言われています。これもせいぜい100年しか生きない私たちが心配することもないでしょう。

宇宙と地球の誕生・消滅は直接トランプさんと関係ありません。にもかかわず、私がこのことから論じ始めるのは「万物」を「変化」するものとして捉え、「宇宙」の歴史の中に位置づけようとするからです。

次は世界と米国はどうなるのかです。

前記事の「トランプ米新政権の対外政策について」で指摘したように、現在は第二次大戦後の「米ソ中心時代」から「多中心時代」への移行期です。この「多中心時代」がどのような「多中心」になるのかです。

2050年と2100年に世界がどのようになるのかについてはすでに相当わかっています。

『国際連合経済社会局世界人口推計2015年版』によると、世界人口は2015年の73億人から2050年に97億人、2100年に112億人に増えます。

2015年の国別人口の第1位は中国13億7604万人、第2位はインド13億1105万人、第3位は米国3億2177万人、第4位はインドネシア2億5756万人、第5位はブラジル2億0784万人、以下、パキスタン、ナイジェリア、バングラデシュ、ロシア、メキシコでした。日本は1億2657万人、第11位でした。

これが35年後の2050年に、第1位はインド17億0500万人、第2位は中国13億4800万人、第3位はナイジェリア3億9900万人、第4位は米国3億8900万人、第5位はインドネシア3億2100万人、以下、パキスタン、ブラジル、バングラデシュ、コンゴ民主共和国、エチオピアとなります。日本は1億0700万人、第17位です。

85年後の2100年には、第1位はインド16億6000万人、第2位は中国10億0400万人、第3位はナイジェリア7億5200万人、第4位は米国4億5000万人、第5位はコンゴ民主共和国3億8900万人、以下、パキスタン、インドネシア、タンザニア連合共和国、エチオピア、ニジェールとなります。日本は8300万人、第30位です。

人口について、現在、中国が第1位、インドが第2位ですが、2050年と2100年には中国とインドが入れ替わり、インドが第1位になります。現在、米国は第3位ですが、2050年と2100年にはナイジェリアに抜かれて第4位になります。

次に2015年と2050年の主要国の国内総生産(GDP)を見ましょう。

2015年の名目GDP(米国ドル)は「世界GDPランキングベスト(20位)2015年最新版」と“World GDP Ranking 2015 | Data and Charts” によると、第1位は米国17兆9470億、第2位は中国10兆9828億、第3位は日本4兆1232億、第4位はドイツ3兆3576億、第5位は英国2兆8493億、第6位はフランス2兆4215億、第7位はインド2兆0907億、第8位はイタリア1兆8157億、第9位はブラジル1兆7725億、第10位はカナダ1兆5523億でした。

PwC調査レポート『2050年の世界』によると、2050年の主要国のGDPは購買力平価(PPP)を2014年ベースの米ドルに換算して、第1位は中国61兆0790億、第2位はインド42兆2050億、第3位は米国41兆3840億、第4位はインドネシア12兆2100億、第5位はブラジル9兆1640億、第6位はメキシコ8兆0140億、第7位は日本7兆9140億、第8位はロシア7兆5750億、第9位はナイジェリア7兆3450億、第10位はドイツ6兆3380億となります。

比較の基準が「名目」GDPと「購買力平価」GDPで異なりますので、単純に比較できませんが、それでも米国、日本、ドイツ、英国、フランス、イタリア、カナダなどの西側先進国が2050年に2015年の上位から下位に落ち、中国、インド、インドネシア、ブラジル、メキシコ、ナイジェリアなどのアジア・ラテンアメリカ・アフリカの新興国が上位に立つことがわかります。ロシアも12位から8位に上がります。

2100年のGDP予想値はまだ出ていませんが、人口増とGDP増はほぼ一致します。人間は消費者であると同時に生産者です。人間が知恵と知識と技術を身に着ければ、偉大な生産者になります。21世紀後半から22世紀にかけてインド、中国、パキスタン、インドネシアなどのアジア諸国、ナイジェリア、コンゴ、タンザニア、エチオピア、ニジェールなどのアフリカ諸国が歴史の前面に登場してきます。

つまり、前述の「多中心時代」の中でBRICS (ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)・EU(ドイツをはじめとするヨーロッパ連合)・USA(アメリカ合衆国)などが林立するようになります。もはや「米ソ中心時代」ではないのです。ましてや「米国中心時代」ではないのです。

米国人のこれに対する焦燥感と貧富の格差増大に対する怒りがトランプさんを米国大統領にしました。トランプさんは米国人の雇用と生活を守るためにムスリム(イスラーム教徒)の入国拒否とか、追い出しとか、メキシコとの間に壁をつくるとか言っていますが、実際にこれをおこなえば、米国はいっそう困難な状況になるでしょう。

米国は建国以来「移民」の国です。そのおかげで発展してきました。いまのところ2015年の人口3億2200万人は2050年に3億8900万人、2100年に4億5000万人に増えていくと予想されています。しかし、トランプさんが移民の阻止とか、追い出しをすれば、人口はどうなるでしょうか。2050年に購買力平価GDPで中国とインドについで第3位を維持できるでしょうか。

ついでながら、英国の人口は2015年の6471万人から2050年に7536万人、2100年に8237万人に増え、フランスも6439万人から7113万人、7599万人に増えます。他方、ドイツは2015年の8068万人から2050年に7451万人、2100年に6324万人に減り、ロシアも1億4300万人から1億2900万人、1億1700万人に減ります。

日本の人口も1億2700万人から1億0700万人、8300万人に減ります。日本の人口減は深刻です。日本のこと、日本と米国との関係については別に書きます。

トランプ米新政権の対外政策について

中西 治

米国でトランプ新政権が来年2017年1月から正式に発足します。選挙運動中にトランプさんは日本との関係についてもいろいろとしゃべりました。これから世界はどうなるのでしょうか。この問題について簡単に書いておきます。

まず、第二次大戦終結から今日までの国際情勢の変化を振り返ります。

第二次大戦の結果、米国とソヴェトが世界的大国となりました。アメリカとロシアが世界史の前面に登場したのはこれが初めてです。「米ソ中心時代」が始まりました。

この「米ソ中心体制」は「朝鮮戦争・ヴェトナム戦争・アフガニスタン戦争」によって揺らぎました。1991年12月にソヴェトは解体しました。米国の国際的威信と影響力も低下しました。私は第二次大戦後の米ソを中心とした「国際秩序」を崩壊させたこれら一連の戦争を一括して「第三次大戦」と規定しています。

ソヴェト解体から四半世紀経ち世界は変わりました。現在、世界にはドイツ・フランスを中心とする「ヨーロッパ連合(EU)」、ロシアを中心とする「ユーラシア経済連合」、中国を中心とする「上海協力機構」、ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカなど5か国の「BRICS」などが存在します。「多中心時代」の到来です。

米国は「ソヴェト解体」に幻惑され、「米国中心時代」が到来したかのごとき「錯覚」をいだいたようです。

米国は2001年の9.11事件に対してアフガニスタンとイラクへの出兵で応え、失敗しました。にもかかわず、米国はいまもシリアをはじめとする中東で「世界の警察官」の役割を果たそうとしています。

これに対してトランプさんは米国はもはや「世界の警察官の役割を果たせない」と言いました。私も「その通り」だと思います。しかし、オバマさんも、ヒラリー・クリントンさんもこれは言えません。彼らはこれを言い、実行してきたからです。

トランプさんがこれを言えたのは、彼が安全保障問題の「素人」だからです。

「戦争」と「平和」の問題では「素人」の言葉に「真理」があります。「屁理屈」をこねないからです。戦場で死ぬ多くは「素人」の「兵隊」です。「戦争ごっこ好き」の「玄人」は実際に戦争が起こったときには戦場から遠く離れた机の上で「戦争ごっこ」をしています。「本当に戦争の恐ろしさ、悲惨さを知っている」「玄人」は戦争に「反対」です。

日本は戦後一貫して「連合国軍の占領下」、「米国軍の駐留下」にありました。戦後71年、そろそろ「外国軍の駐留をやめさせるべきとき」です。トランプさんは良いきっかけをつくってくれました。大いに「素人談義」をしましょう。「素人談義」も主権者の半分をこえれば、大きな力をもつのです。

米国大統領選挙で「総得票」で勝っても「選挙人」で負ける場合があるのは、アメリカ合衆国(United States of America)が各独立国家「State(国)」の「United(結合した)」「国家連合」、「国家同盟」であるからです。各独立国家(州)に選挙人の選出権があります。各州が独自の州兵を持っています。

トランプ劇場開幕中

中西 治

トランプ劇場は今回の米国大統領選挙運動開始とともに始まっていました。私はそれに気づいていませんでした。

本日、2016年11月9日早暁(日本時間夕方)に共和党大統領候補トランプさんが民主党大統領候補ヒラリー・クリントンさんからの祝いの電話をうけ、米国大統領当選演説をしました。このとき、はっと気づきました。その「演説」がこれまでの「まともでない演説」と比べて、あまりにもよくできた「まともな演説」であったからです。これは良く準備された「劇」だ、「トランプ劇場」だと思いました。

8年前の大統領選挙で米国の有権者は民主党のオバマさんを大統領にし、4年前の選挙で再選しました。この8年間のオバマ大統領の政治は選挙民にとって「満足」すべきものではありませんでした。

トランプさんは選挙民のこの「不満」を敏感に捉え、「貧困」と「格差」を厳しく批判しました。外交問題でも「思い切った」ことを言いました。これが有権者の「心」をつかまえました。米国の有権者は「何をするのか分からない」トランプさんに「賭け」ました。これが「成功」しました。

トランプさんは当選と同時に「まともな演説」をする「大統領」に変わりました。トランプさんは「豹変」し、「序幕」は終わりました。「第一幕」ではどのように演じるでしょうか。トランプさんが「名優」か「大根役者」かは今後の「舞台」によって決まります。

私はかつてヒラリー・クリントンさんが米国史上最初の女性大統領になるだろうと思っていました。2002年9月11日にニューヨークの9.11事件の跡地近くでヒラリー・クリントン上院議員と会い、挨拶しました。

ヒラリー・クリントンさんの今回の敗因は彼女の性格と行動にもあります。旧来の民主党の支持者がヒラリー・クリントンさんから離れました。これが致命傷です。トランプさんの勝因は「敵失」にもあります。

「人の世」は時として今回のような重要な「舞台」を生み出します。これが歴史的な転換をもたらす「大場面」になるかも知れません。「出番」がきたら私たちも「舞台」に上がりましょう。楽しみながら、世の中を変えましょう。

12年ぶりに米国を訪ねて

中西 治

2015年8月10日から25日まで米国のハワイ州オアフ島とカリフォルニア州サンディエゴを旅してきました。1973年に初めて訪米して以来12回目の米国訪問です。2002年4月から2003年3月にかけての1年間の米国での研究以来12年ぶりです。

オアフ島到着の翌日、8月11日にホノルル市パールハーバー(真珠湾)の「アリゾナ記念館」を訪れました。二度目の訪問です。今回、日本人はあまり見かけませんでした。

ここには1941年12月7日(米国現地時間、日本時間12月8日)に日本海軍の不意打ち攻撃によって沈没した米国戦艦アリゾナ号と同艦とともに海中に没した乗組員1,177名がいまも艦内で「永遠の眠り」についています。私は「深い祈り」を捧げました。

「アリゾナ記念館」に行く船を待っていたとき、私と同じく「車いす」に乗って待っていた米国人から「どこから来たのか」と声をかけられました。「日本から」と答えると、相手の付き添いの人が「ジャップ」と小さな声で囁きました。初めて訪米した1973年にも「ジャップ」と呼ばれました。「ジャップ」は日本人に対する「蔑称」です。

私は2006年に南京の「侵華日軍南京大虐殺遭難同朋記念館」を訪れたときの私を見る中国人の厳しい冷たい目を思い出しました。

2015年8月14日に安倍晋三首相が発表した「戦後70年談話」をホノルル市内のホテルの日本語テレビで見ました。彼は戦前の日本が「世界の大勢を見失っていき」、「進むべき進路を誤り、戦争への道を進んで行きました」と言っていました。私は彼の言葉に「真実味」を感じませんでした。

それでも「いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」と述べ、さらに「いかなる紛争も、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである」と強調していましたので、そのあとの言葉に注目していました。出てきた言葉は「「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります」でした。

このような文脈のもとでは「積極的平和主義」は当然「積極的に紛争を平和的に解決する主義」になります。ところが彼の場合は違うのです。彼の「積極的平和主義」は「積極的に自衛隊を海外に派遣して力で紛争を解決する主義」です。

彼は人々が「平和」を願い、「戦争」を嫌っていることを知っています。だから「戦争法案」を「平和法案」と言い、「戦争主義」を「平和主義」と言っているのです。このような「言葉の詐術」を人々が信じると考えている人は「人々を愚かだと考えている人」です。

第二次大戦中に「東洋平和のためならば何で命が惜しかろう」と歌ったことを想起しています。「戦争」を始める人は「平和」のためと言います。

2週間、長男一家とともに過ごしました。「多くのエネルギーと生命」をもらいました。「新しい出発点」に立ちました。「新しい旅立ち」です。

オバマ大統領の演説について

中西 治

2009 年 11 月 14 日午前 10 時 10 分頃から 30 分間ほど、オバマ米国大統領のアジア政策についての簡潔な演説を NHK テレビで拝見・拝聴しました。私も簡潔に感想を述べます。

第一は、オバマ大統領が日米の友好関係の重要性を強調されたことを歓迎します。このところ「日米同盟」が喧伝されていますが、私は「日米同盟」とは「日米軍事同盟」ではなく、「日米友好同盟」であると考えています。それが 21 世紀のあるべき「日米関係」です。

第二は、沖縄の普天間基地について米国はこれまでの立場を大きくチェンジし、普天間基地を撤去すべきです。日本人の多くがオバマ大統領に期待しているのはこのことです。 1945 年 8 月の敗戦後の軍事占領とそれに続く日米安全保障条約によって、日本には、すでに 64 年余にわたって米軍基地が存在してきました。もう十分であると思います。

第三は、オバマ大統領が朝鮮戦争の完全終結と朝鮮半島の非核武装化および米朝国交の正常化によって、アジア・太平洋地域の平和と安定のため、また、核のない世界を実現するために大きな成果をあげられることを心から望んでいます。

オバマさんの大統領就任演説を聞いて

中西 治

オバマさんの大統領就任演説は、アメリカ合衆国大統領の重責を担った 47 歳の人間が、その重みに必死に耐えようとしている重苦しいものであった。それは選挙運動中の歯切れの良い、華やかな演説とは異なっていた。聴衆の反応も重苦しく、熱狂的な拍手はなかった。

なぜか。それは現在の米国がかかえている問題が余りにも多く、重く、米国民が「重大な危機にある」からである。

第一は「戦争状態」である。「敵は憎悪と暴力のネットワークを持っている」という。これに対して「イラクから撤退し始め、イラク人に国を任せる。そして、アフガンの平和を取り戻す。」という。アフガンの平和をどのようにして取り戻すのか。聴衆が聞きたかったのは、それである。

第二は「経済状態」である。「その原因は一部の人々のどん欲さと無責任さにあるものの、私たちは困難な選択を避け、次世代への準備にも失敗している。」という。これに対して「新しい職場の創造だけでなく、成長のための新しい基盤を作らなければならない。」という。どのようにしてか。ニューヨーク株式市場の反応はダウ工業株 30 種平均の 332 ドル安、8000 ドル割れの急落である。

オバマさんは「私たちが成功するか否かは、労働と誠実さ、勇気、フェアプレー、忍耐、好奇心、忠誠心、愛国心にかかっている。」という。その通りである。しかし、米国民がオバマさんを大統領の座につけたのは、現実に戦争を止め、平和を回復し、経済を繁栄させ、生活を良くするためである。地球上の多くの人々が望んでいることもそうである。オバマさんはこの民衆の要望に実際に応えなければならない。

米国大統領選挙結果(追伸)補正版

中西 治

米国大統領選挙結果の票数はまだ公式に確定していませんが、United States presidential election, 2008 – Wikipedia (2008 年 12 月 2 日日本時間午前 6 時) により、ほぼ固まった票数をお知らせします。カッコ内は前回お知らせした数字です。

大統領選挙では民主党のオバマさんが大統領選挙人 538 人のうち 365 (364) 人を獲得、共和党のマケインさんの 173 (163) 人を大きく引き離して、第 44 代大統領に当選しました。オバマさんは 28 州と首都ワシントンおよびネブラスカ州の 1 人、マケインさんは 22 (21) 州を制しましたが、うちネブラスカ州の 1 人はオバマさんがとりました。ネブラスカ州の大統領選挙人の定数は 5 人ですが、うち一つの選挙区でオバマさんが過半数をとり、1 人の大統領選挙人を獲得しました。前回まだ決まっていなかったミズーリ州の 11 人は、マケインさんがとりました。得票数はオバマさんが 6846 万 5974 (6468 万 8689) 票、得票率は 52.80 (52.5) %、マケインさんが 5941 万 7826 (5695 万 451) 票、45.82 (46.2) %です。

日本ではこの二人しか紹介されていませんが、この他にも、もと緑の党、今回は無所属のラルフ・ネーダーさんが 72 万 6462 (66 万 8473) 票、0.56 (0.5) %、リバタリアン (自由主義者) のボブ・バーさんが 53 万 2995 (49 万 4551) 票、0.41 (0.4) %、憲政党・アラスカ独立党のチャック・ボールドウィンさんが 19 万 1340 (17 万 8406) 票、0.15 (0.1) %、緑の党のシンシア・マッキンニーさんが 15 万 8427 (14 万 4543) 票、0.12 (0.1) %、その他の候補者が 18 万 8660 票、0.15%を獲得しています。いずれも大統領選挙人の獲得にはいたっていません。

上院議員選挙では定員 100 人のうち 35 人が改選、当選は民主党 19 (18) 人、共和党 14 人。非改選を合わせると、いまのところ、民主党は改選前の 49 人から 7 (6) 人増えて 56 (55) 人、共和党は改選前の 49 人から 9 人減って 40 人です。改選前の民主党は同党系無所属 2 人を含んでやっと 51 人の過半数を確保していましたが、今後は単独で過半数を維持します。 2 (3) 人はまだ未定です。いずれも現職は共和党ですが、ミネソタ州は票の再確認中、ジョージア州は 12 月 2 日に決選投票がおこなわれます。これらの 2 州も民主党が獲得すると、民主党は同党系無所属を含めて 60 議席を確保し、長時間演説による議事妨害を阻止できます。これを filibuster-proof と言います。

今回の大統領選挙の投票者はいまのところ 1 億 2968 万 1643 (1 億 2309 万 7708) 人、投票率は 62 (56.0) %でした。前回、2004 年の大統領選挙では投票者は 1 億 2230 万人ほど、投票率 60.5 (60.7) %でした。投票者は 700 万 (80 万) 人ほど増え、投票率は 1.5%ほど増えています。

前回、2004 年の選挙で共和党のブッシュさんが 6200 万票ほど、民主党のケリーさんが 5900 万票ほど獲得しました。今回の選挙で共和党は前回より 300 万 (500 万) 票ほど票を減らし、民主党は 900 万 (500 万) 票ほど票を増やしました。今回は共和党が減らした 300 万 (500 万) ほどがそっくり民主党に移り、それに 600 万上乗せしたことになります。共和党の支持者の 300 万 (1 割) ほどが民主党に鞍替えし、さらに 600 万人が新たに民主党の支持者になったのです。前回より増えた 700 万人の投票者のうち 600 万人がオバマさんに投票したことになります。これがオバマさんと民主党に大勝利をもたらしました。

2008 年 12 月 2 日 午前6時 改訂

米国大統領選挙結果について

中西 治

2008 年 11 月 4 日におこなわれた米国大統領選挙結果がほぼ明らかになりました。

大統領選挙では民主党のオバマさんが大統領選挙人 538 人のうち 364 人を獲得、共和党のマケインさんの 163 人を大きく引き離して、第 44 代大統領に当選しました。オバマさんは 28 州と首都ワシントン、マケインさんは 21 州を制しました。まだ決まっていないのはミズーリ州の 11 人だけです。2008 年 11 月 7 日午後 5 時 (日本時間) 現在、得票数はオバマさんが 6468 万 8689 票、得票率は 52.5%、マケインさんが 5695 万 451 票、46.2%です。

日本ではこの二人しか紹介されていませんが、この他にも、もと緑の党、今回は無所属のラルフ・ネーダーさんが 66 万 8473 票、0.5%、リバタリアン (自由主義者) のボブ・バーさんが 49 万 4551 票、0.4%、憲政党・アラスカ独立党のチャック・ボールドウィンさんが 17 万 8406 票、0.1%、緑の党のシンシア・マッキンニーさんが 14 万 4543 票、0.1%を獲得しています。いずれも大統領選挙人の獲得にはいたっていません。

上院議員選挙では定員 100 人のうち 35 人が改選、当選は民主党 18 人、共和党 14 人。非改選を合わせると、民主党は改選前の 49 人から 6 人増えて 55 人、共和党は改選前の 49 人から 9 人減って 40 人です。改選前の民主党は同党系無所属 2 人を含んでやっと 51 人の過半数を確保していましたが、今後は単独で過半数を維持します。3 人はまだ未定です。

下院議員選挙は定員 435 人全員が改選で、当選は民主党 254 人、21 人増、共和党 181 人、21 人減です。

州知事選挙は改選 11 人で、当選は民主党 7 人、共和党 4 人です。民主党がミズーリ州で共和党に勝ち、1 人増やし、29 人、共和党は 21 人となりました。

大統領・上院・下院・州知事のいずれの選挙でも民主党が圧勝しました。

米国の選挙は州が単位です。もともとグレートブリテンから独立した 13 のステート (STATE=国=州) がユニオン (UNION=同盟=連合) を結んでできたのが、ユナイテド・ステーツ・オブ・アメリカ (UNITED STATES OF AMERICA=アメリカ合衆国) です。

各州は大きくても小さくても同等な独立国。それぞれの州から 2 人ずつの代表者を出して作る会議がセナート (SENATE=上院) 、議員はセナター (SENATOR=上院議員) 。現在は 50 州あるので、定員は 100 人、任期は 6 年。2 年ごとにおこなわれる下院選挙に合わせて定員の三分の一、33 人か 34 人が改選されます。今回は任期が 2009 年 1 月 3 日から 2015 年 1 月 3 日までの 6 年間の 33 人と任期が当選後すぐに始まり 2013 年 1 月 3 日まで続く 2 人の計 35 人の選挙がおこなわれました。

各州から人口数に応じて代表者を出して構成されるのがハウス (HOUSE OF  REPRESENTATIVES=下院) です。現在の定数は 435 人、任期は 2 年です。各州に割り当てられた定数の数だけ各州に選挙区が設けられます。すべて定数 1 の選挙区です。

首都ワシントンは連邦政府の直轄地で特別区です。上院議員も下院議員も選出できません。ただし、大統領選挙では 1961 年以来、3 人の選挙人を選出することが認められています。この 3 人と上院議員 100 人、下院議員 435 人、合わせて 538 人が米国全体の大統領選挙人の数です。それぞれの州の大統領選挙人は上院議員の定数 2 と下院議員の定数を合わせた数です。

今回の大統領選挙ではオバマさんとマケインさんの選挙人の獲得数の差は 200 人ほどと大きく開きましたが、得票数の差は 700 万票ほど、得票率の差は 6%ほどです。この程度の得票と得票率の差で獲得選挙人の数に大きな差が出るのは、ほとんどの州で、大統領選挙での得票が 1 票でも多い候補者がその州の選挙人を総取りする、からです。だから時には全米の総得票数で勝ちながら、選挙人数で負けて、大統領になれないことが起こるのです。

たとえば、現在のブッシュ大統領が初当選した 2000 年の選挙では、民主党のゴアさんの総得票数が 5099 万票、ブッシュさんが 5045 万票、他にネーダーさんが 276 万票とっていましたので、ブッシュさんの得票率は 48%でした。このように総得票数が少ないのに当選した例は 1824 年、1876 年、1888 年にも起こっています。2000 年の選挙のときにも一応問題になりましたが、にもかかわらず、この制度を変えないのは、米国は州という独立国家の同盟だという建前からです。同盟の代表者は各州の代表者が集まって決めるというのが原則なのです。

今回の大統領選挙の投票者は 1 億 2309 万 7708 人、投票率は 56.0%でした。前回、2004 年の大統領選挙では投票者は 1 億 2230 万人、投票率 60.7%でした。盛り上がったわりに投票者は 80 万人ほどしか増えておらず、投票率は落ちているのです。米国と日本の一部の報道で、今回の投票者数と投票率は前回に比べて大幅に増えたと伝えられましたが、これは間違いだったようです。

前回、2004 年の選挙で共和党のブッシュさんが 6200 万票ほど、民主党のケリーさんが 5900 万票ほど獲得しました。今回の選挙で共和党は前回より 500 万票ほど票を減らし、民主党は 500 万票ほど票を増やしました。今回は共和党が減らした 500 万ほどがそっくり民主党に移り、それに少し上乗せしたことになります。共和党の支持者の 1 割ほどが民主党に鞍替えしたのです。何故このようなことが起こり、これからどうなるのでしょうか。

第一は、ブッシュさんの人気があまりにも悪かったからです。もともとブッシュさんは大統領の器ではなかったのです。当選もおぼつかなかったのに無理をして大統領になりましたが、人気はいまひとつでした。ブッシュさんを救ったのは 2001 年の 9 ・ 11 でした。米国人の怒りを利用してアルカイダ狩りと称してアフガニスタンに出兵しました。いまだにオサマ・ビンラディンは捕まっていません。タリバンは息を吹き返しています。大量破壊兵器を持っていると称してイラクに出兵しました。大量破壊兵器はありませんでしたが、サダム・フセインは殺されました。米国はアフガニスタンとイラクで戦争の泥沼にはまり込んでいます。多くの人を殺し、殺され、巨額の金をつぎ込んで財政赤字をもたらし、金融恐慌に陥っています。米国民はこれに気づいたのです。

第二は、オバマさんの人柄です。初のアフリカ系大統領と言われていますが、オバマさんはアフリカ系でもあれば、アメリカ系でもあるのです。これまでも黒い人と白い人の混血はありましたが、米国社会はこのような人を大統領として受け入れるところまできました。人種差別の激しかった米国を垣間見、いまもときに触れて感じている私は、この米国人と米国社会の変化を喜んでいます。人間も社会も変わるものです。米国は多文化の共存と共栄を認める社会になりつつあります。これは多年にわたる歴史のなかで培われたものです。オバマさんは米国社会が生み、育てた人材です。

第三は、オバマさんの真価が問われるのはこれからです。米国の人間も社会も多様です。政治的には民主党、共和党のほかに緑の党や自由主義者党、州の独立党、社会主義者・コミュニスト等々がいます。自己主張の強い人がたくさんいます。これをまとめて政治をおこなっていくのは大変です。オバマさんはイラク戦争には反対していますが、アフガニスタン戦争は支持しています。これはおかしいのです。この二つの戦争は一つです。一方に反対し、他方に賛成するのは矛盾しています。しかし、オバマさんがイラク戦争にもアフガニスタン戦争にも反対していれば、おそらく民主党の候補にも、大統領にもなれなかったでしょう。米国民の 9 ・ 11 に対する恨みは深いし、報復心は強いのです。イラク戦争が始まったとき私は米国で研究中でした。ニューヨークでイラク戦争の開始に反対するデモを見ましたが、他方では、テレビや新聞などを通じて開戦に賛成する意見や考えを多く聞かされました。オバマさんは大変難しいところで政治をすることになります。気長にじっくりと政治を進めるしかありません。いずれ、米国民も現実に学び、いまイラク戦争に反対しているように、アフガニスタン戦争に反対することになるでしょう。

第四は、時代の流れです。米国は独立宣言以来、南北戦争、第一次大戦、ロシア革命、大恐慌、第二次大戦、米ソ対立、中国革命、朝鮮・ベトナム戦争、公民権革命、ドルの価値低下、湾岸・アフガン・イラク戦争などに直面してきました。そして、いま新たな金融恐慌の嵐のなかにあります。米国人だけでなく、地球上の多くの人々が転換を求めています。オバマさんは時代の子です。人間は時代の要求を正しく把握し、人々の願望を実現するために努力するときに英雄となります。しかし、この願望から離れ、敵対するようになったとき、かつて天まで持ち上げた同じ人が英雄を地獄に叩き落とすのです。私はそのような光景を何度も見てきました。オバマさんの当選を祝ってシカゴに集った人々、それをテレビを通じて地球上の各地で見た人々をオバマさんは失望させてはなりません。

第五は、日本です。「オバマさんが大統領になっても、日米の同盟関係は変わらない」と気落ちしながら力なく言うのではなく、第二次大戦後の日米関係を見直し、日米安保条約を日米平和友好条約にかえ、21 世紀にふさわしい新たな日米関係を築きたいと元気よく言う人はいないのでしょうか。日本は、このさい、戦後 60 年余にわたって多くの米軍基地をかかえて苦しんでいることを率直にオバマさんに言うべきでしょう。オバマさんはそれを聴く耳をもっていると思います。

オバマさんの米国大統領当選を喜ぶ

中西 治

米国民主党の大統領候補者バラク・オバマさんがアメリカ合衆国大統領に当選しました。正式に大統領に就任するのは 2009 年 1 月 20 日ですが、まずはオバマさんの大統領当選を喜びます。

米国史だけでなく、地球史の転換点です。

1776 年 7 月 4 日の独立宣言以来 232 年にして、やっと、アフリカの黒人を父とし、アメリカの白人を母とする人が米国大統領になりました。米国の民主主義はここまできました。歴史はジグザグの道を歩み、遅々としてではあるが、間違いなく、前進しています。

オバマさんは公約通り、まず、イラクから米軍を撤退させなければなりません。今日の金融危機も元を質せば戦争にあるのです。1973 年のドルの固定相場制から変動相場制への移行は、米国がベトナムで多額の戦費を使い、金の保有高を減らし、ドルと金との交換ができなくなった結果でした。今回の金融危機もアフガニスタンとイラクで戦費を垂れ流している結果です。

オバマさんはアフガニスタンからも軍隊を引き揚なければなりません。古来、アフガニスタンは「エンパイアの墓場」といわれているところです。マケドニアのアレクサンドロス大王しかり、グレートブリテンしかり、ソビエトしかりです。一時はこの地で勝利を収めたかに見えても、結局は敗退し、追い出されるのです。オバマさんもアフガニスタンにこだわると失敗します。心しなければなりません。アフガニスタン問題も戦争ではなく、話し合いでしか解決できません。

いまはもう「戦争は儲かる」という時代ではないのです。ごく一部の軍需産業は戦争で儲けますが、多数の民衆は殺され、貧乏にされ、不幸にされるのです。戦争は国を滅ぼします。人間の命と幸せは平和の上にしか築かれないのです。

オバマさんの勝利により日本でもっとも大きな打撃をうけているのは、アフガニスタンとイラクでの米国の戦争を支持してきた人々です。麻生さんはますます選挙ができなくなりました。

日本にとっては、これらの戦争から手を引く絶好のチャンスです。麻生さんもそうすれば選挙をたたかえるでしょう。