月別アーカイブ: 2011年11月

9. #17 「労働の専門化」: ユニバーサル・ヒストリー(宇宙地球史)入門(2)

中西 治

「労働の専門化 (specialization of labor) 」とは、「部族 (tribal) ・氏族 (clan) 組織」と言われているものである。

ある人々があることを他の人々よりもうまくできるという考えは、記録された歴史が始まる相当前から私たちのところにあった。

おそらく、このようなことの最初の例は、ある人々は狩猟に適しているが、他の人々は採取に適している、ある人々は野原のどこか向こうにいるのがよいが、他の人々は食べ物を料理するのがよい、といったことを認めることだった。

性的二形性 (sexual dimorphism) も私たちに役割を分かつ能力を与えている。私たちは今日、社会において、この性的二形性の境界を押し動かし続けている。

伝統的社会はこれらの役割を比較的よく調整している。

世界における摩擦の大きな源の一つは、これらの役割を乗り越えている社会とそれが選択できない社会との間の衝突である。

労働の専門化は、社会における役割の専門化をはるかに越えて進んでいる。ある人は火打ち石を打ち、道具を作れるし、他の人はそれらの道具を使うことができる。ある人は矢と弓と槍を作ることができるし、他の人はそれを使って狩りができる。

これらの役割を専門化することによって社会を建設できるという考えが、多くの人々と多くの時を自由にし、効率を高め、価値を創り出した。

8. #18 「化石燃料」: ユニバーサル・ヒストリー(宇宙地球史)入門(2)

中西 治

今日、私たちは「化石燃料 (fossil fuels) 」と聞くと、つい、何か、この問題でトラブルに引き込まれたのかなと考えがちである。しかし、化石燃料は過去 100 年間、決定的に重要であった。

石炭が初めて使われた記録が残っているのは、およそ紀元前 1000 年、中東においてであった。

そのとき、そこには木炭のように燃える岩があると言われた。それは露天の石炭現場であった。そこで人々は簡単に表面からかけらをとり、集めた。それはまた大変温かい、持続的な火をもたらした。石炭と木炭は多くの、その他の重要な技術に貢献した。

しかし、石炭を採掘するようになるまで、長い間、待たなければならなかった。

その独自の目的のために、また、そうではなく、たとえば、「デルフィの神託 (the Oracle of Delphi) 」として知られるようになった炎のために、掘り出された天然ガスを初めて使用したのは 1859 年であった。

そのとき私たちはオハイオで初めて天然ガスをうまく掘り出した。

同じ年に西ペンシルヴァニアで最初の石油がうまく掘り出され、最初の石油精製がおこなわれた。

それから 1 世紀半、私たちの化石燃料中毒は、おそらく、もはや止められないことを理解するに至った。

化石燃料は経済が機能する方法を変えた。はじめて、エネルギーと燃料の密度が物の移動を可能にした。それは運輸の変化を意味した。

ミシガン州のディアボーンにあるフォード博物館には高さ 80 フィートの蒸気機関が幾つか展示されている。今日ではソフトボールくらいの大きさの動力草刈り機のような小型エンジンを造ることが出来る。

これはすべて、化石燃料のエネルギー密度のおかげである。

私たちは私たちの一生のうちに化石燃料を完全に取り替えることはできないであろう。しかし、 A 地点から B 地点に移動するのに燃やすのには、石油と天然ガスは余りにも高くつきすぎているのではないかと、私たちは考え始めている。それは、これらの炭化水素が驚異的な薬品やプラスチックス、私たちが必要不可欠と考えているその他の数千の物を作る物質でもあるからである。

7. #19 「動くタイプ (印刷機) 」: ユニバーサル・ヒストリー(宇宙地球史)入門(2)

中西 治

科学技術革新の多くのリストのトップに現れるのは「動くタイプ (moveable type) 」である。

多くの西洋主義者たちは 1436 年のグーテンベルグ (Gutenberg) の印刷機 (press) に最初の「動くタイプ」の名誉を与えたいであろう。

実際は、「動くタイプ」は 1040 年の帝政中国にまで遡る。そこでは活字 (pieces) は陶器 (ceramic) であった。

朝鮮人の発明も早く、中国から 200 年ほど遅れて、幾つかの金属 (metals) を使って、これをおこなった。

困難は次の点にあった。

中国語と朝鮮語のような、 5000 字もの文字を有する象形言語にあっては、 5000 字の入った箱システムから一字一字活字を見つけ出し、置き換えるのに時間が掛かり、タイプをセットするのが、非実用的で、非効率であったことである。

朝鮮人と中国人はまた、官僚制度と政府制度に対して印刷を制限した社会機構を持っていた。そこには印刷物に対する私的市場がなかった。結局、これらの文化は一枚刷りの木版印刷に戻っていった。

私たちにとって幸いなことに、グーテンベルグは「動くタイプ」、特殊インク、および、効率的印刷のアイデアを思い付き、タイプ金属と呼ばれていた錫、鉛、アンチモンに将来性があることを理解した。

彼の科学技術革新はすでに準備されていた市場を発見した。その時までに、ヨーロッパのすべての教育をうけた人はウルガタ聖書 (Vulgate Bible=教会公認のラテン語訳聖書) を望んでいたからである。自分自身の聖書を持ちたいという願いが市場を駆り立てていた。

これはまた発明品を守ることに失敗した例であった。

グーテンベルグは彼の工場のすべての見習い工、および、彼の店で働く全員に厳格な非公開協定に署名させていた。ところが、グーテンベルグが「動くタイプ」を使い始めて 5 年以内に、この技術が広く普及し、彼の見習い工たちが去り、それぞれの店を持った。そして、かくなった。

6. #20 「科学」: ユニバーサル・ヒストリー(宇宙地球史)入門(2)

中西 治

これは世界観 (world view) 以上のものである。それは科学 (science) そのものの考え方 (concept) である。

それは相当前までトーマス・ジェファソン (Thomas Jefferson) の時代には自然哲学 (natural philosophy) と呼ばれていたものである。ここでは、哲学の研究と、世界における人間の地位および人間の神に対する関係についての研究、との間に区別はなかった。

ニュートン (Newton) 自身は次のように語っていた。

世界と宇宙を理解しようと試みている、そうすれば、神の計画を知ることができるから、と。

アインシュタインはニュートンのこの言葉に共鳴し、次のように語っていた。

私は物理を研究している、「神の心」を理解しようと試みているから、と。

世界を理解し、成文化する科学的方法と客観的システムの利用は、紀元前 16 世紀のギリシャに起源を発している。

そのとき、私たちは観察から理論に向かった。観察は長い先行理論を持っていた。それは、あなたがカレンダーとか、天文学とか、いつ植えて、いつ刈るのかを理解したいと望んだときに、あなたがおこなったことであった。しかし、それらは完全に経験的であった。

そこにはある客観的理論が存在する。その理論は、ある事柄と、人間の経験によっては理解されていないものとをつなぎ合わせている。このようなアイデアを私たちに与えてくれたのはギリシャ人であった。

ギリシャ人たちは、また、数学、論理学、統計学などの形式的システムを私たちに与えた。

後に思索家たちは場の価値 (place value) のような概念 (ローマ数字で大きな数字を書こうとする場合を考えよ) と正にゼロの概念 (the very concept of zero) を私たちに与えた。

5. #21 「水力」: ユニバーサル・ヒストリー(宇宙地球史)入門(2)

中西 治

蒸気機関の前、本当に厳しい仕事を成し遂げたいとき、水力 (water power) を用いた。

水力が最初に利用されたのは、共通暦紀元前 (BCE=before common era) 240 年、中東の肥沃な三日月地帯と小アジアであった。それはきわめて効率の良い科学技術革新であった。牽引用動物を使わないで重い荷物を運んだからである。それは流れる水の動きを有用な仕事に変えた。

水力は社会と経済の重要な部分として残り、うまく発展した。それがヨーロッパで工業革命を発火させた。

事実、ある人は次のように主張している。

ヨーロッパにおける豊富な降雨と多くの河川が水力を基礎とした経済を作り出し、そのことが、ルネッサンス後期に始まる世界の他の地域を凌駕する技術の発達をヨーロッパに許したのであると。

米国ニューイングランドの工場制度の場合も同じである。ここでは製粉所がマサチュセッツ、ニュ-ハンプシャー、ロードアイランド、コネチカットの河川を利用して建てられた。

効率 (efficiency) について言えば、自動車のガソリン・エンジンが到達し得る効率水準は燃料対効果の転換率に換算してわずかに約 30%である。

水が水車の下を流れる「アンダーショット (undershot) 」水車は 2000 年以上も前に発明されたが、その効率は 25%を超えている。人工水路を造り、「オーヴァーショット (overshot) 」水車にすると、水が水車の上を流れ、その効率は 75%に急上昇する。

もし、自動車をこのように造ることができると、 100mpg (1 ガロン当たりの走行マイル) 自動車はまったく問題なくなるであろう。

問題は大きさの十分な貯水タンクを丁度うまく造ることである。

4. #22 「蒸気力」: ユニバーサル・ヒストリー(宇宙地球史)入門(2)

中西 治

電力 (electric power) の前は蒸気力 (steam power) であった。

最初の蒸気機関 (steam engine) は 1690 年の「フランス人パパンのエンジン (The French Papin engine) 」であった。

1690 年から 18 世紀初期、および、 1712 年のセイヴァリ (Savery または Savory) からニューコメン (Newcomen または Newcomb) を経て、最後はワット (Watt) に至るあいだに、蒸気機関は人間の仕事をする能力を増大させ、巨大な違いを生み出した。

蒸気機関の前、何か、実質的なことをするためには牽引用動物 (draft animals) が必要であった。

採炭は危険をともない、小規模であった。鉱山の排水用ポンプを動かすのに利用された蒸気機関は、石炭採掘を現実的にした。最終的にかなり十分に採炭できるようになり、それが逆に蒸気機関の基本的な燃料となった。これは燃料化の科学技術革新が他の科学技術革新を可能にし、それが逆に最初の科学技術革新に影響を与える例である。

私たちが歴史の研究で学ぶことの一つは、そこには上昇直線はなく、それは常にジグザグであることである。

蒸気機関は確かに一歩前進であった。けれども、それが最終的な形となり、動く蒸気機関車 (locomotives) や蒸気汽船 (steamboats) の目標に達し、運輸を永遠に変えるためには 100 年以上の歳月を要した。それがまた経済と国家を変えた。

3. #23 「進化と自然選択」: ユニバーサル・ヒストリー(宇宙地球史)入門(2)

中西 治

ダーウイン (Darwin) がこの理論を初めて提起したのは 1859 年の『種の起原について (On the Origin of Species) 』であった。この理論は制作に 25 年を要した。

ダーウインは、私たちがいま理解しているような理由で、その出版をものすごく恐れていた。それは私たちが自然の秩序の中で占めている場所の見方を変えた。

ある人々は、それは人間 (humankind) を永遠に貶めたと言いたかったようである。というのは、ダーウインは私たちが正に動物 (animals) である、特別な種類の動物 (animals of a special sort) である、それにもかかわらず、動物であるということを明確にしたからである。

私たちの進化 (evolution) と自然選択 (natural selection) についての理解は、その後、生物学、生態学、健康管理、人口動態、および、自然界における人間行動の多くの結果についての私たちの理解をすべて形作っている。

ハシックはダーウインについてここまでしか書いていない。米国ではいまもダーウインについて自由に論ずることは難しい。人間は神が創造したものであり、ダーウインの説は神の権威を傷つけると考える人がいるからである。

ダーウインはいかなる非難にも屈せず、敵を苦しめて喜ぶ人間の子孫であるよりも、飼育係の命を救おうとして敵に立ち向かった猿の子孫であることを願っていた。

2. #24 「電磁気」: ユニバーサル・ヒストリー(宇宙地球史)入門(2)

中西 治

人々と動物が骨の折れる労働をするのが常であった仕事に電気 (electricity) を利用することができると考えるのは革命であった。

ハンス・クリスチャン・オーステッド (Hans Christian Orsted) は 1820 年にその効果に気付いた。

1821 年にマイケル・ファラデー (Michael Faraday) が電動機 (electric motor) を思い付いた。

現代社会における原動力 (motive force) のほとんどと T.ボーン・ピッケンズ (T. Boone Pickens) が燃える化石燃料 (fossil fuels) によって作られていると宣伝しているすべての電気、エレヴェーターとエスカレーターで私たちを持ち上げ、私たちの自動車でターンさせているものなど、すべての物は、私たちのために働く電動機を有しており、電灯 (electric lights) を有している。

これらすべては電磁気 (electromagnetism) の諸理論から来ている。

電気がいかに重要であるか。

エジソン (Edison) がニューヨークのマンハッタンに最初の電球を取り付けてから 5 年後、最初の発電会社「エジソン電気会社」は大晦日の真夜中に 5 分間、電灯のスイッチを切ることによってその記念日を祝うことを望んだ。ニューヨーク市長は、これは公共の安全を危険にさらすと宣言し、エジソンが電源を切らないようにした。

冷凍庫と冷蔵庫のケースに繋がる電気が切られている食料品店に行くことを考えてもみよ。私たちの食料供給制度、私たちの通信・運輸制度を考えてもみよ。

工業化された社会で私たちが何もしないというのは、電気がなければ、可能である。

実は、イラクとアフガニスタンで私たちが成功できるか否かを計る手厳しい物差しは、私たちがインフラストラクチャー (infrastructure:文明社会の基本設備) を建設でき、照明を確保できる能力を持っているか否かである。

1. #25 「相対性と量子力学」: ユニバーサル・ヒストリー(宇宙地球史)入門(2)

中西 治

科学技術革新#25 は 1912 年に発明された相対性 (relativity) と量子力学 (quantum mechanics) である。

特殊相対性 (special relativity) 以来、 1905 年のアインシュタイン (Einstein) の奇跡的な年以来、私たちはやっと 103 年である。私たちが工業化された社会で触れているものはすべて、アインシュタインと彼の同僚の恩恵を受けている。

事物と宇宙を観察する私たちの全体的な見方は、 1905 年から 1912 年までの 7 年間に変わった。

現実に、あなた方は、このペーパーをスクーリンで読み、電話で話し、テレヴィジョンを見、自動車を運転していないだろうか。もしくは、ソリッド・ステート (solid-state:電子管の代わりに半導体や集積回路などのような固体物性を利用した素子) なエレクトロニクス (electronics:電子工学) を使っていないような、現代的な驚くべき、その他のものを使用していないだろうか。

このエレクトロニクスは、最大の諸銀河系 (galaxies) から最小の原子内粒子 (subatomic particles) に至るまでの、宇宙の構造 (the structure of the universe) についての思考方法における革命的な科学技術革新によって可能となった。

この思考方法の革命的革新が私たちをしてマイクロエレクトロニクス (microelectronics:超小型電子工学) やナノテクノロジー (nanotechnology:ナノメートル=10 億分の 1 メートルレベルの微細加工技術) を作ることを可能にしている。

現実に、私たちが 20 世紀に作り出した原子爆弾 (the atom bombs) をいかにして取り除くのかという、 21 世紀のより厄介な、未解決な挑戦の一つが存在することもまた、この相対性と量子力学に負っている。

はじめに : ユニバーサル・ヒストリー(宇宙地球史)入門(2)

中西 治

2011年11月20日に配信された2011年度第4号講義を複数回に分けて掲載いたします。―事務局

特定非営利活動法人 地球宇宙平和研究所
ユニバーサル・ユニバーシティ・インターネット
2011年度講義録第4号 (2011年11月20日)

ユニバーサル・ヒストリー(宇宙地球史)入門(2)
――科学技術革新を中心として――
中西 治

はじめに

前回に引き続き「ユニバーサル・ヒストリー (宇宙地球史) 入門」について講義する。

今回はイノヴェーション (Innovation) を中心とする。

イノヴェーションは一般に「技術革新」と訳され、近年の電子工学・石油化学工業などにおける新技術の開発を意味するとされているが、「技術革新」は決して近年の「技術革新」に限定されるものではない。それは人類誕生以来の「技術革新」である。

あらゆる「技術革新」の前には必ず「意識革新」がある。いまのままでは不便である、生活しにくい、改革しなければならないという「現状改革」の意識である。自覚するか否かにかかわらず、この「意識革新」なしに、「技術革新」はない。

意識と知識を体系化し、原理化し、応用するのが「科学」である。

イノヴェーションは「技術革新」であると同時に、「科学革新」であり、「科学技術革新」である。

国際ビッグ・ヒストリー学会会員向けニューズレター (IBHA Members’ Newsletter) 第 1 号 (2011 年 4 月) は、米国のフィラデルフィアにある対外政策研究所上級研究員ローレンス・ハシック (Lawrence Husick) が 2008 年に科学技術革新の歴史についておこなった講義「石からシリコンまで: 科学技術革新の簡潔な概観 (From Stone to Silicon: Brief Survey of Innovation) 」を掲載している。

彼はこの中で「科学技術革新」は単なる諸々の科学技術革新の成果だけではなく、新しい方法、アイデア、もしくは、製品などを導入することによって生ずる変化のプロセスも含むことを強調している。

そして、「人間の歴史においてもっとも重要な科学技術革新は何か」という「難しい問」を提起し、自ら次の 25 の重要な科学技術革新を挙げている。

1. 相対性と量子力学、 2. 電磁気、 3. 進化と自然選択、 4. 蒸気力、 5. 水力、 6. 科学、7. 動くタイプ (印刷機) 、 8. 化石燃料、 9. 労働の専門化、 10. 紙、 11. ホイル (円形の物) 、 12. 公式法典、 13. 貨幣、 14. 神と宗教、 15. 書法、 16. 食糧貯蔵、 17. 冶金学、 18. 陶磁器、 19. 農場、 20. 衣類、 21. 象徴的コミュニケーション、 22. レバーのような単純な器具、 23. 傾斜板のような単純な器具、 24. 火の制御利用、 25. 話し言葉。

この科学技術革新の順番は、ほぼ新しいものから古いものに遡っている。

最後に、「 26.  志向的教育」を追加している。

ここでは、この 26 の科学技術革新をハシックの順番にしたがって、紹介しながら、科学技術革新と人間の生活の変化、社会の変化、ユニバーサル・ヒストリーの発展を考えることにする。