月別アーカイブ: 2011年6月

シンポジウムのお知らせ

事務局

下記のように、グローバルアカデミー(GA)のシンポジウムを行います。重大かつタイムリーなテーマです。皆さんとの議論の時間もかなり取っております。ぜひご参加いただき、議論に加わってください。会員向けにインターネット中継も行う予定です。宜しくお願いいたします。

グローバルアカデミー(GA)シンポジウム
統一テーマ「今、原発問題を考える」

日時:7月10日(日)午後4:30から7:00まで
場所:かながわ県民センター604号室(36名対応)
横浜駅西口徒歩5分

報告者:片山博文(桜美林大学准教授)
「リスク社会における原発の経済分析」

竹本恵美(創価大学非常勤講師)
「原子力ヒバク問題をめぐる科学の限界と社会的判断」

討論者:林 亮(創価大学教授)

司会:岩木秀樹(地球宇宙平和研究所理事)

参加費:無料

御礼と近況報告

中西 治

まだ梅雨が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか、お伺い申し上げます。

昨年、2010年6月20日(父の日)に脳梗塞を発症し、入院して以来、1年が経過しました。

この間に随分多くのことを経験し、学びました。2010年10月22日に妻・節子が永眠し、人間の生命の問題を深く考える機会を得ました。

私の病気・妻の逝去に際しましては、ご高配をたまわり誠にありがとうございました。

改めて篤く御礼申し上げます。

やっと、最近、新しい生活のリズムに慣れてきました。週に3回、月・木・土に、ヘルパーさんの付き添いで、近所の医院に片道30分・往復1時間かけて歩いてリハビリに通っています。少しずつ左の手と足が蘇っています。一晩経てばまた元の黙阿弥ですが、それでもわずかですが良くなっています。

主治医・療法士・看護士・介護士・福祉士・ヘルパー・友人・息子夫妻たちのお陰で生きています。

本年、2011年3月30日に妻・節子に贈る書『ロシア革命・中国革命・9.11 ――宇宙地球史の中の20−21世紀――』南窓社、を上梓しました。これが最後の著書になるのかなと思っていましたが、新著を読み直して、もう一冊書かねばならないと思っています。

2004年から中国・朝鮮・ヴェトナム・キューバを歴訪し、ポスト・ソヴェト期の社会主義がどうなっているのかを見ました。ロシアはいまでは社会主義と言っていませんが、このところ10年以上、訪問していません。久しぶりにロシアを訪ねたいと思い、その準備として、プーチンとメドヴェージェフのロシアを研究しています。

そろそろロシアと米国の大統領選挙。それまでにロシア・中国・米国に行きたいと願っています。実現できるかどうか、天が決めると思っています。

気楽に、愉しく、一日一日を大切に暮らしています。

ご健勝をお祈り申し上げます。

2011年6月19日(父の日)に
敬意と謝意を込めて

宙(そら)読む月日 (4) プロジェクト・チーム紹介 後篇 クリスチャンほか

のぶおパレットつじむら

デイヴィッド・クリスチャンさんは、1946年、アメリカ(米国)のニューヨークで生まれました。父はイングランド人、母は北京生まれのアメリカ人でした。父はブリテン(英国)陸軍の兵役を終えると、当時ブリテンの植民地であったナイジェリアの行政にたずさわることになり、クリスチャンさんは7歳までナイジェリアで育ちました。その後はイングランドで全寮制の学校に通い、1968年にオックスフォード大学 Oxford University を卒業します(専攻はモダン史)。まもなくカナダのウェスターン・オンタリオ大学 University of Western Ontario で教員(チューター)として働き、翌年には同国でアメリカ人女性と結婚、そのまた翌年(1970年)に同大でロシア史の修士号をとっています。

クリスチャンさんがロシア史を専攻したのは、ドストエフスキーやトルストイを愛読していたからでもありますが、とりわけ十代にイングランドで体験したキューバ危機が鮮烈だったようです。危機のさなかのある夕、クリスチャンさんが下校しようとすると、友だちの1人が来て、彼の手を握りました。「一体どうしたの?」ときくと、友だちは「もう会えないかもしれないだろ」と答えるのです。クリスチャンさんはショックを受けました。今このときに、何百万もの人が死に、多くの文明が一掃されてしまうかもしれない。ソヴィエトにも、同じようなことを思っている子どもたちがいるのだろうか。クリスチャンさんの脳裏を、そんな問いかけがよぎりました。核戦争の危機が、まったく異なる世界(とクリスチャンさんは感じていました)への関心と想像力を発動させたのです。

さてクリスチャンさんは1970年に母校のオックスフォード大学へ戻り、1974年にロシア皇帝アレクサンドル1世の行政改革についての論文で、博士号を取得しました。その後、オーストラリアのマッコーリー大学に職を得、1975-2000年までロシア史、ヨーロッパ史、世界史を講じました。この在任中にビッグ・ヒストリーの講義と研究を始めます。2001-2008年は米国のサンディエゴ州立大学 San Diego State University に勤めました。2009年からはマッコーリー大学へ戻り、教授として教壇に立っています。

著作に『生きている水:ウォッカと解放前夜のロシア社会』(1990年)、『帝政およびソヴィエト・ロシア:権力、特権、現代の挑戦』(1997年)、『ロシア・中央アジア・モンゴルの歴史 第1巻 先史からモンゴル帝国までの内陸ユーラシア』(1998年)、『時間の地図:ビッグ・ヒストリー入門』(2004年)、『この儚き世界:人間の概説史』(2007年)などがあります。

クリスチャンさんは、出身をたずねられても、なんと答えるのがベストかわからないと言います。自分はスターリンの言う「根無し草的コスモポリタン」だと。だから、歴史というのは本質的に一国史 a national history である、あるいは特定の文化、集団の物語であるといった考えに、いつも居心地の悪さを感じていました。それだけに、フランス歴史学界のアナール学派 Annales School 、とりわけフェルナン・ブローデル Fernand Braudel さんには大きな影響を受けたようです。(*8)

クリスチャンさんの原体験には、核の危機と各地の遍歴・混交がありました。

つづいて4人の学術顧問について紹介します。(*9)

マーニー・ヒューズ-ウォリントン Marnie Hughes-Warrington さんは歴史学者です。彼女は1995年、オックスフォード大学でR・G・コリングウッドの歴史哲学についての論文で、博士号を取得しました。2001年にクリスチャンさんが渡米した際は、彼女がマッコーリー大学のビッグ・ヒストリーの講座を引き継いでいます。2009年には同国のモナシュ大学 Monash University 教授および副学長補に就任しました。今までに『鍵となる歴史思想家50』(初版2000年、第2版2008年)、『歴史学は映画に向かう:映画の上の歴史を研究する』(2007年)などの本や、「ビッグ・ヒストリー」(初版2002年、加筆修正版2005年)という論文を発表しています。(*10)

トレイシー・サリヴァン Tracy Sullivan さんは、マッコーリー大学オーストラリア史博物館 Australian History Museum 館長です。彼女は、ニュー・サウス・ウェールズ大学 University of New South Wales 、シドニー大学 University of Sydney 、マッコーリー大学で歴史教育を講じてきた経験豊富な教員です。研究上の関心は、学際的なカリキュラム作りということです。これまで述べてきたことから、マッコーリー大学がオーストラリアにおけるビッグ・ヒストリーの拠点であることがわかるでしょう。

ボブ・ベイン Bob Bain さんはベテランの歴史教育者です。26年間アメリカの高校で歴史と社会科を教え、7度の表彰に輝きました。2008年にはミシガン年間最優秀社会科教諭に選ばれています。また、1998年には若者向け政策の歴史についての研究で、同国のケース・ウェスターン大学 Case Western University より博士号を取得しました。現在は、ミシガン大学 University of Michigan の教育学部と文学・科学・教養学部で准教授を務めています。専門は、歴史の教育・学習法です。

サル・カーン Sal Khan さんはカーン・アカデミー Khan Academy の創設者・常任理事です。教育事業を始めたきっかけは、ボストンのヘッジファンドでアナリストとして働きながら、いとこたちの家庭教師をしたことでした。いとこたちとは住むところが離れていたので、カーンさんはユーチューブ YouTube に動画を投稿して、それを通して教えていました。ところが動画は無料で誰でも見れたため、視聴者はどんどん増えていきます。カーンさんは潜在的なニーズの巨大さに気づいて退職し、「世界クラスの教育を、無料で、だれでも、どこでも」受けれるカーン・アカデミーを創立します。(*11) いわばオンライン教育の先駆者です。

なおプロジェクトは、シアトルを本拠地とするコンサルタント会社インタナショナル・フューチャーズ International Futures: iF 社と国際ビッグ・ヒストリー学会を提携機関としています。次回は、国際ビッグ・ヒストリー学会について書きましょう。

注記
(*8) 辻村、前掲論文、95-97頁; Christian, Big History, Disc 1, Lecture 1 What is Big History? (2008) (see note 2); Christian CV (履歴書) (n. d.), viewed on Jun. 10, 2011.
http://www-rohan.sdsu.edu/dept/histweb/faculty_and_staff/emertus_bios/Christian_CV.pdf

言及した著作は、David Christian, Living Water: Vodka and Russian Society on the Eve of Emancipation (Oxford: Clarendon, 1990); Imperial and Soviet Russia: Power, Privilege, and the Challenge of Modernity (Basingstoke: Macmillan, 1997); A History of Russia, Central Asia, and Mongolia, Vol. 1, Inner Eurasia from Prehistory to the Mongol Empire (Oxford: Blackwell, 1998); Maps of Time, (2004) (see note 5); This Fleeting World: A Short History of Humanity (Great Barrington, Mass.: Berkshire, 2007).

(*9) ビッグ・ヒストリー・プロジェクトのサイトや、本人の所属組織のサイトを参照した。

(*10)Marnie Hughes-Warrington, Fifty Key Thinkers on History (London : Routledge, 2000, second edition 2008); History Goes to the Moveis: Studying History on Film (Abingdon: Routledge, 2007); “Big History” , Historically Speaking, IV (2) (2002), amended & updated in Social Evolution & History, 4 (1) (2005).

(*11) カーン・アカデミー Khan Academy http://www.khanacademy.org/
ウェブサイトの「About(当アカデミーについて)」を開くと、「サイトの教育資源は、だれでも利用できます。あなたが生徒でも、教員でも、ホームスクーラー(通学せずに自宅で親から教育を受けている子ども:筆者補足)でも、校長でも、20年ぶりに教室に戻ってきた大人でも、かまいません。あるいは、地球の生物学にまさに足を踏み入れようとしている友好的なエイリアンでもかまいません。カーン・アカデミーの教材および教育資源は、完全に無料で利用できます」とある。エイリアンとあるのがおもしろい。グローバルな対象を意識するとき、宇宙へと目が開く、ということだろうか。