月別アーカイブ: 2007年8月

第12回KOSMOSフォーラムに参加して

のぶおパレットつじむら

8月25日、財団法人・国際花と緑の博覧会記念協会主催の第12回KOSMOSフォーラム「21世紀の新しい宇宙観を探る〜地球の起源、進化と未来を問う〜」(於・ベルサール神田)に参加しました。

国際花と緑の博覧会記念協会は、「自然と人間の共生」をテーマに、1990年4月1日から9月30日まで大阪・鶴見緑地で行われた「国際花と緑の博覧会」(略称「花の万博 EXPO’90」)の基本理念を発展・継承するものです。基本理念にはこうあります。「人類の宇宙飛行は、地球が唯一の青い惑星であることを教えた。高度の生命科学は、逆に一層、生命の奥深い神秘に気づかせた。20世紀の産業文明の発展は、今あらためて、あの花と緑に象徴された、自然の生命の偉大さを再認識させている。緑こそは、無機物を有機物に変え、生命を根源から生む力である。花はこの隠れた力の優美な表現であり、生命そのものの讃歌である。これを愛し敬うことは、自然と生命を共有する人間の心の本能であり、人間相互の尊重、世界平和への願望のもっとも素朴な基礎だといえる。」(同協会ホームページより)

KOSMOSフォーラムは、「わが国の第一線の科学者の英知を集め、宇宙の新しい全体像を包括的に考察し、その中で人類の果すことができる役割を探ろう」というもので、その特色は「自然科学者、人文・社会の科学者がそれぞれの学問領域を越えて、俯瞰的、統合的に考え、論じ合い学術交流するところにあります」。(同フォーラム・ホームページより)

今回のフォーラムに登壇したのは以下の諸氏です。

コーディネーター
池内了(天体物理学、総合研究大学院大学教授)
パネリスト
内井惣七(論理学、科学の哲学、倫理学、京都大学名誉教授)
海部宣男(電波天文学、赤外線天文学、放送大学教授、国立天文台名誉教授、前国立天文台長)
佐藤勝彦(宇宙論、宇宙物理学、東京大学大学院理学系研究科教授)
竹宮惠子(漫画家、京都精華大学マンガ学部マンガ学科教授)

はじめにコーディネーターの池内氏からプレゼンテーションがあり、現在は宇宙が始まって130億年、地球が始まって46億年、ホモサピエンスが誕生して20万年、宇宙のことをアリストテレスが論じ始めて2500年、ビッグバン理論が出て60年の節目であることが指摘されました。

内井氏からは「地球を可能にした条件――ニュートンたちの思索」と題し、ニュートンがかつては地上とかけ離れていると考えられていた天文学と地上の力学とを、万有引力の法則で結びつけたこと。またそれをライプニッツ、アインシュタインなどが批判・発展させたことが紹介されました。

海部氏は「宇宙のなかの地球」と題し、われわれの住む太陽系と地球はどれほどの普遍性をもっているのかを問いました。地球の元になる岩石は宇宙の中にいくらでもあること。宇宙の中には氷がくさるほどあり、それに比して地球はむしろ水が少なく、ちょうどいいくらいに水を失った惑星であること。有機物の根幹である炭素も、宇宙にはくさるほどあること。したがって地球は珍しいものではなく、宇宙には地球の材料どころか生命の材料があふれていることが指摘されました。この宇宙でわれわれの住む太陽系・地球が形成される確率は0.01%です。われわれの属する天の川銀河には、推定で1000億個の惑星があることを考えると、生命が存在しうる惑星はわれわれの銀河だけでも1000万個あることになります。

佐藤氏は、誕生まもない小宇宙がインフレーション(急激な膨張)により一瞬で巨大な宇宙になるとする「インフレーション宇宙論」の提唱者の一人です。同氏は、現代物理学が誕生から100年で宇宙のおおよその進化像を描き出したこと。人間は宇宙の中ではかない存在であるけれども、「宇宙誌」の中で自らの位置を知った素晴らしい存在であること。人間は宇宙の中でちっぽけな存在というのは、絶対神をもつキリスト教的な考えであることを指摘しました。さらに、現代は環境問題というよりグローバリゼーションと過剰流動性による人間社会の不安定化が問題で、同氏の友人マーティン・リースは、いまや個人が地球社会を滅ぼしうる時代になったと言っていること(マーティン・リース著、堀千恵子訳『今世紀で人類は終わる?』草思社、2007年)。人間の心は出アフリカの頃から進化しておらず、21世紀は人類が自滅の道を歩むか、宇宙生命として飛躍するかの分岐点であること。宇宙人と出会わないのは、知的生命体は滅ぶからという話があるとの指摘も興味深いものでした。

最後のパネル・ディスカッションも知的刺激に満ちたものでした。以下、要点を採録します。

池内 むしろ宇宙物理学をやっている方のほうが、環境問題の重要性を指摘された。宇宙という確固たるものを研究していればこそ、地球のもろさが見えるのかもしれない。地球、人間は宇宙の普遍性とゆらぎのはざまにあるととらえてらっしゃるのかもしれない。人類には1/40の法則というのがある。40万年前にジャワ原人が火、つまりエネルギーを発見した。その1/40、1万年前には農業革命があり、文明が生まれた。その1/40、250年前には産業革命が起き、そのまた1/40の6年前から現在にかけて情報革命が進行している。

内井 アリストテレス、カント、ヘーゲルなどの文献を読んで倫理を考えるのではなく、もっと大きなスケールの中で、宇宙と地球の生態系の進化の中に、現代科学の知見の中に、倫理を位置づけて考える必要がある。私としては時間・空間の創成から論じたい。その際、進化論は絶対ぬかすことができない。

佐藤 アインシュタインが宇宙論を建設する際、こう言った。私が一番知りたいのは神がどのような原理によって宇宙をつくられたか。また神が宇宙をつくった時、選択の余地があったか知りたいと。もちろんアインシュタインは無神論者。しかし、宇宙物理学者はしばしば神という言葉を使う。その際の神とは宇宙を動かしている力という意味。物理学者にとっては、宇宙の物理法則が神だ。

海部 なんで宇宙物理学者が神とよく言うか。それは西洋の人だから。Christianity(キリスト教)の世界だから。そこでの神は象徴的な意味でしかない。進化というのは非常に大事。われわれは進化の結果、ここにいるのだから。われわれは進化を超えていると思う。進化は倍々ゲームで進む。これは生物の基本的特性。問題なのは、人類文明はそれに輪をかけて倍々ゲームであること。それを止められるのか。そう考えると悲観的になる。一方でわれわれはそれを知っている。ホモサピエンス、知る動物だから。地球は人間なんか必要としていない。人間が滅んでも地球は存在する。だから「地球にやさしい」なんて乙女チックな言葉を使うべきではない。しかし、人間は自分の特質、知るという特質を有効に使うべきだ。

竹宮 想像力が新しい理論を生む。

佐藤 イマジネーションというのは経験の中で積まれた「暗黙知」だ。

海部 人間が知るというのは、将来を知ることでもある。人間はどこから始まったかといえば、人間が死ぬと知った時とも言える。知るということとイマジネーションは表裏一体。今大事なのは、知識を最大限に広げて、イマジネーションを最大限に広げることだ。

人類史を宇宙史の中で位置づけること、またそれを行うための総合的な学問が希求されています。そこでは生態系の調和もふくめた平和が論じられる必要があるでしょう。人間社会のことを人間社会によってのみ論じる時代ではなくなりつつあります。今回のフォーラムで、ますますその感を強くしました。

所報論文執筆のお願い

事務局

すでにお知らせしているとおり、地球宇宙平和研究所では、所報第2号を2007年12月に発行いたします。

そこでぜひ皆さんに、論文、研究ノート、研究動向、書評、エッセイを執筆いただきたくメールいたしました。〆切は10月末日となっております。所報は研究所としても内外に大きくアピールす
る場であり、定期的に充実した内容のものを公刊できれば、日本では数少ないNPOの平和研究所として、認知度が多いに高まると思います。創刊号に引き続き、第2号も立派なものを作りたいと考えています。皆さんのご協力をぜひ宜しくお願い申し上げます。

なお執筆要項を下記に貼り付けました。詳しくはニューズレター13号を参考にしてください。
多くの皆さんの積極的な投稿をお待ちいたします。何かありましたら、事務局岩木まで遠慮無く問い合わせください。

地球宇宙平和研究所事務局
…………………………………………………

執筆要項

・研究所報編集委員会を中心に編集発行を行う。
・会員及び編集委員会が認めた者が投稿できる。
・原稿は編集委員会において査読し、採用の可否及び修正を決定する。
・原稿の締切は2007年10月末日、発行は12月。
・原稿料は支払わない。
・定価は一冊1,000円、会員には一冊配布する。
・執筆者は20冊以上買い取る。買い取り料金は一冊800円。
・関連の研究所、大学、団体に送付する。その際紀要の交換もお願いする。

執筆要領細目

・いかなる言語でも可、未発表でオリジナルなもの。ただし特殊言語の編集作業については執筆者本人に依頼する場合もある。
・枚数は400字詰め原稿用紙で注を含めて、論文は50枚、研究ノート・動向は30枚、書評及びエッセイは10枚とする。日本語以外の場合もほぼこれに換算する。
・メール添付かフロッピーの郵送にて提出。手書き原稿は受付けない。

スペイン語講座のお知らせ

事務局

さて昨年に引き続き、スペイン語講座を下記の通り開催いたします。
2008年2月25日から3月6日まで、第2回キューバ訪問もひかえており、参加を考えている方にとってはうってつけのものだと思います。
またキューバ訪問を考えていない方や初心者の方も、この際新しい語学に取り組まれてはいかがでしょうか。
初歩から丁寧に教えてくださり、歌あり踊りありの楽しい講座になろうかと思いま
す。多くの皆様のご参加をお待ちいたしております。

地球宇宙平和研究所 事務局 岩木秀樹
……………………………………………………
2007年度 スペイン語講座

●日時: 9月30日(日)、10月21日(日)、11月11日(日)の3回
いずれも13時から15時

●場所: 青葉区区民交流センター会議室4(田園都市線田奈駅下車1分、電話045−989−5265)

●講師: 浪木 明先生(アルク語学カウンセラー)

●参加費: 1回 1,000円

●教材: 旅の指さし会話帳13キューバ(情報センター出版局)コピーを使用します。あわせて、2006年メーデー、革命広場でのフィデル・カストロ国家評議会議長演説(英文)を取り上げる予定

阜新万人坑を訪ねて

植木 竜司

001.jpg

2007年8月16日、中国遼寧省阜新市にある「万人坑」を見学しました。

私は昨年10月より本年3月まで阜新市に滞在しましたが、「万人坑」の存在については知りませんでした。阜新市は炭鉱の町であり、第二次大戦中に日本軍がこの地を占領し、この地の多くの石炭資源を掠奪し、その過程で万単位の阜新の人々が亡くなったことは知っていましたが、それらの人々が同じところに大規模に埋葬された場所があることは知りませんでした。

12日に見学をした瀋陽市の「九・一八事変博物館」で購入した李秉剛著/張玉彬・胥敏訳『万人坑を知る―日本が中国を侵略した史跡』(東北大学出版社、2005年9月)という本に「阜新炭鉱の万人坑」についての記述があり、阜新に関係を持つ日本人としてここは見ておかねばと思い、阜新市の友人にお願いして見学させていただきました。

中国国内には第二次大戦中の日本軍の占領と関係がある「万人坑」が北の黒龍江から南の海南島までいくつもありますが、ここ阜新万人坑はその中でも七万人の労働者の遺骨が納められている最大規模の万人坑であるとのことです。

1936年10月1日、満州炭鉱株式会社阜新鉱業所が設立され阜新の石炭資源が大規模に掠奪され始めました。1939年4月までに鉱業所に属していた採炭所は一箇所から八箇所まで増やされ、満州炭鉱株式会社の最大の炭鉱でした。1936年から1945年8月まで、2527.5トンの石炭が掠奪され、同時に数万人の炭鉱労働者が亡くなり大規模な「満鉄墓地」が形成されました。

今回の見学は阜新万人坑の館長さんとともに記念碑や満鉄墓地、死難砿工遺跡館、阜新砿史陳列館等の施設を回らせていただき、それぞれの施設で解説も聞かせていただきました。一番印象に残ったのが死難砿工遺跡館です。日本の占領者たちは、労働者に対し長時間の作業をさせ、生活条件も悪く、数多くの人々が過労死、餓死、病死したそうです。死難砿工遺跡館にはそれらの人々の遺骨の一部が当時の埋められたときのままの形で残されていました。その中には他の遺骨とは異なった向きをむいた遺骨がいくつかありました。館長さんの話によるとそれらは外へ這い上がろうとしている姿であり、生き埋めにされたものであるとのことでした。病気や怪我等で、労働の役に立たない人間は生きていても埋められたのであり、人命よりも鉱山を重んじた戦時中の日本の蛮行の証拠といえるでしょう。

阜新万人坑は「全国重点文物保護単位」の一つですが、現在一般に公開されておらず、施設は老朽化が目立っていました。阜新市民でも訪れたことがない人が多くいるとのことであり、「風化」が進んでいるといえるでしょう。阜新の人々の対日感情は私の印象ではそこまで悪くなく、つい六十数年前に七万人もの人がここで日本の侵略の犠牲になったとは考えられないほどです。

しかし、阜新万人坑は日本が占領中にどれだけ残虐で非人道的な行為を行ったかを物語っています。もし阜新の人々の間でこの歴史の風化が進んだとしても、日本人は決して忘れてはならない歴史であると思います。

阜新市は日本ではあまり知名度のない中国の一都市ですが、確かに六十数年前にこの地にも日本人がやってきて数多くの悲劇を生み出しました。新たな友好の歴史をつくっていくのにあたって、やはり加害者の側であった日本人がこの歴史的事実をしっかり認識し反省した上で、はじめて本当に強固な友好関係が構築できるのではないかと思います。

002.jpg 004.jpg 005.jpg 012.jpg 018.jpg

シンポジウム「現代における戦争と平和」

事務局

シンポジウム「現代における戦争と平和」

日時:9月9日(日)午後6時から8時まで
場所:かながわ県民センター711号室
http://www.kvsc.pref.kanagawa.jp/ JR横浜駅西口徒歩5分

司会兼討論者: 岩木秀樹
報告者及び報告テーマ(仮題):
植木竜司 「ネパールにおける戦争と平和 -マオイスト人民戦争と平和地帯宣言 -」
高橋勝幸 「タイから見た平和と平和運動」
林 亮 「戦争責任の恩讐をこえる~東アジア共同体の安全保障枠組みをめぐっ て~」
木村英亮 「ベトナム戦争の性格と意義について」

資料代:500円

*なおシンポジウムに先立ち、理事会を午後4時から711号室で開催いたします。

藤原正彦『国家の品格』について

中西 治

国家の品格 (新潮新書)藤原正彦さんの『国家の品格』(IBCパブリッシング株式会社、2007年6月11日)を読みました。面白い本です。一読に値します。著者は新田次郎さんと藤原ていさんの作家夫妻の次男で、1943年生まれ、数学者で、お茶の水女子大学理学部教授です。

この本は第一章「近代的合理精神の限界」、第二章「「論理」だけでは世界が破綻します」、第三章「自由、平等、民主主義を疑う」、第四章「「情緒」と「形」の国、日本」、第五章「「武士道」の復活を」、第六章「なぜ「情緒と形」が大事なのか」、第七章「国家の品格」から成っています。藤原さんによると、先進国はすべて荒廃しています。核兵器の拡散、環境破壊、犯罪、家庭崩壊、教育崩壊などは西欧的な論理と近代的合理精神の産物 であり、論理と合理の破綻の結果です。なぜそうなのか。それは人間の論理や理性に限界があり、人間は論理と合理だけではやっていけないからです。藤原さんは欧米人の論理の出発点となった自由、平等、民主主義に疑問を投げかけます。藤原さんは「国民は永遠に成熟しない。放っておくと、民主主義すなわち主権在民が戦争を起こす。」と危惧しています。そこで必要なのが真のエリートです。大局観や総合判断力を持ち、「いざ」となれば国家、国民のために喜んで命を捨てる気概のある人です。いまの日本にはこのようなエリートはいないが、かつてはいた、旧制中学や旧制高校はこのようなエリートの養成機関であったと言います。

藤原さんは日本人が古来から持つ「情緒」、あるいは伝統に由来する「形」を重視します。論理とか合理を「剛」とすると、情緒とか形は「柔」であり、硬い構造と柔らかい構造を相携えて、はじめて人間の総合判断力は十全なものとなると考えています。この情緒を育む精神の形として「武士道精神」の復活を求めます。情緒と形が大事なのは、それが普遍的価値であり、文化と学問を創造し、真の国際人を育て、人間のスケールを大きくし、人間中心主義を抑制し、戦争をなくす手段になるからです。

藤原さんは最後に品格ある国家の指標として次の四つを挙げています。第一は独立不羈です。第二は高い道徳です。第三は美しい田園です。第四は天才の輩出です。そして「日本人一人一人が美しい情緒と形を身につけ、品格ある国家を保つことは、日本人として生まれた真の意味であり、人類への責務と思うのです。」と述べ、「時間はかかりますが、この世界を本格的に救えるのは、日本人しかいないと私は思うのです。」と結んでいます。

私はこの本を読む前、「武士道」とか「国家の品格」とかという昔きいたような言葉を使っている「胡散臭い本」だなと思っていました。読んでみると、共感するところが多々あります。

私もこの世の中は論理と合理だけでは割り切れないと思っています。一人の人間のなかに論理的・合理的に生きたいという思いと実際にはきわめて非論理的・不合理に行動するという二つの面が存在するからです。しかも、後者が人生の重要な問題を決めるときに大きな役割を果たすのです。結婚はその最たるものです。好きだから好きなのです。だから結婚するのです。理屈ではなく情です。

私は民主主義も一つの支配の体制だと思っています。天皇を中心とする一握りのエリートがおこなう天皇主権の専制政治よりも民衆の多数がおこなう国民主権の民主政治の方が良いと考えています。比較の問題です。国民が常に正しい判断をするとは思っていませんが、国民は永遠に成熟しないとも考えていません。人間は過ちを犯す動物ですが、過ちを繰り返さないように努力する動物でもあるのです。

私は1931(昭和6)年9月の満州事変の翌年、1932(昭和7)年12月に大阪で生まれ、1941(昭和16)年12月8日の日米戦争の開始を大阪の国民学校3年生で迎え、1945年8月15日の終戦の玉音放送を疎開先の奈良県で中学1年生として聞きました。日本が戦争へ、戦争へと向かうなか 戦争で大君の醜の御盾(おおぎみのしこのみたて=天皇陛下を守る強い盾)として死ぬために大和魂と武士道で教育されました。藤原さんよりも一世代上で、天皇の支配と戦争を垣間見たものとして藤原さんの武士道論にそう簡単に賛成するわけにはいかないのです。

当時の日本の支配者は世界的な経済恐慌からの出口を対外膨張に求めました。第一高等学校や東京帝国大学などを卒業したエリートの多くがこの対外侵 略戦争の遂行で指導的な役割を果たし、日本を滅ぼしました。日本の民衆の多くもそれを支持しました。戦争に反対したのはごく一部の人でした。日本の民衆の多くはいまこれを反省しています。

2003年3月19日に米国のブッシュ息子政権がイラクへの戦争を開始したとき、米国にはこれに賛成する人も多数いましたが、反対する人も多数いました。2003年12月9日に小泉内閣がイラクへの自衛隊の派遣を決定したとき、日本にもこれに賛成する人と反対する人がいました。米国でも日本でも反対する人々が増えています。

人間は実践のなかで学びます。

私は人間は平等に生まれるとは考えていません。きわめて多様にこの世に生まれ出ます。自由も相対的です。

地球上の人間はもともとすべてアフリカ大陸に端を発し、地球上の各地に散らばったものです。人類はみな同じであり、兄弟です。喜怒哀楽、考えることは同じです。違いは食べ物と言葉です。日本人は北から南から西から渡来した人々が混血して出来上がったものです。私は日本とか日本人を特別視していません。私がこの人たちの作り出した文化のなかでとくに注目しているのは言語です。言語学的にはさまざまな説がありますが、私は日本語はインド・ヨーロッパ語族と並ぶウラル・アルタイ語族の一つで、朝鮮語やモンゴル語ともっとも近い関係にあると考えています。

私は人間を生物学的な人種で分けないで、言語で分けています。私は日本語人です。多くの言語ができる人は多国語人です。日本語人は日本語をはじめ 多くの文化を作り出しました。日本語人の文化は数千年の歴史があります。藤原さんはこのうちの鎌倉幕府以降の武士道精神を重視していますが、それは日本語人文化の一部であり、せいぜい数百年の歴史しかありません。武士道精神にかえて、日本語人文化とすれば、藤原さんが誇る万葉集、古今集、枕草子、源氏物語なども入るでしょう。

日本語と英語についての藤原さんの考えに私は全面的に賛成です。日本語にしろ、英語にしろ、その他の言葉にしろ、問題はしゃべる内容です。

どうも真面目にこの本について語りすぎたようです。藤原さんからユーモアを解しない野暮な人間だとお叱りを受けそうです。

人生を楽しみましょう!

第二次大戦終結62周年にあたって

中西 治

残暑お見舞い申し上げます。

第二次大戦終結62周年を記念して二つのテレビドラマが放映されました。一つは8月10日と11日のフジテレビの二夜連続ドラマ「はだしのゲン」前後編です。もう一つは8月12日のNHKのスペシャルドラマ「鬼太郎が見た玉砕」です。

前者は中沢啓治さんのマンガ『はだしのゲン』をドラマ化したものです。後者は水木しげるさんのマンガ『総員玉砕せよ!』をドラマ化したものです。

中沢さんは現在68歳、1945年8月6日のヒロシマのピカドンのとき国民学校1年生でした。水木さんは現在85歳、ニューギニアのニューブリテン島ラバウルで二等兵として従軍し、二度の「玉砕」から生き残りました。

お二方の体験にもとづく二つのテレビドラマを見て、改めて戦争の悲惨さを痛感しました。戦争は人を狂わせます。地獄です。8月15日に寄せて恒例の一文を書きました。

第二次大戦終結62周年にあたって

1945年8月15日に日本がポツダム宣言の受諾を発表し、第二次大戦は終結しました。それから62年が経ちました。 この間に日本と世界は大きく変わりました。

日本は天皇主権の国から国民主権の国となりました。最近の参議院議員選挙の結果は日本で国民主権が定着・発展しつつあることを示しました。戦後の 平和と民主主義を「戦後レジーム」と称して、それからの脱却を主張し、憲法第9条の改悪をめざした安倍内閣は敗北しました。比例区での自民党と公明党の得 票率は合わせて41.3%、選挙区では37.4%、非改選を加えた現有議席の占有率は42.6%です。参議院では与党が少数派となり、民主党、共産党、社 民党、国民新党などの野党が多数派となりました。

自公は現在、衆議院で合わせて337議席、70.3%の議席を有しています。2005年9月の衆議院選挙のさいの比例区での自公の得票率は合わせ て51.5%、小選挙区では49.2%でした。現行の選挙制度では50%の得票で70%の議席が得られます。議席数に惑わされてはなりません。ただ、その 機会は与野党の双方にあります。問題はどちらの側が大同団結して多数派を形成するかです。

1930 年代初めから侵略戦争を開始した日本軍国主義・ドイツナチズム・イタリアファシズムなどの枢軸国は中国・米国・英国・ソヴェトなどの連合国に敗北しました。民主主義が時代の思想となりました。植民地がなくなり、帝国主義の時代は終わりました。

国際連合は第二次大戦の教訓に学び、紛争問題を戦争によってではなく、平和的に解決するという原則を憲章で決めました。この原則が世界の多くの地域で実現し始めています。

ヨーロッパでは共同体が形成され、かつて戦争を繰り返したフランスとドイツのあいだで、もはや戦争は考えられなくなりました。ソヴェトが解体した ユーラシア大陸では独立国家共同体や上海協力機構などの地域協力体が生まれています。東南アジア諸国連合の首脳が1976年に調印した東南アジア友好協力 条約には日本、中国、インドなど24か国が参加しています。北アメリカ大陸でも広大な自由貿易圏が形成されています。

武力紛争が続いている地域があります。中東です。1948年5月のイスラエル共和国建国以来のイスラエルとアラブの抗争です。アフガニスタンとイラクでは米国が力を使って新しい秩序を確立しようとしています。地域住民は激しくこれに抵抗しています。

紛争の火種を残しているのは朝鮮半島と台湾周辺です。1950年に勃発した朝鮮戦争は休戦状態であり、まだ終わっていません。中国・朝鮮・韓国・ 米国・ロシア・日本の六者協議や南北朝鮮の直接対話によって朝鮮戦争を完全に終結し、朝鮮半島を非核化し、南北朝鮮を平和的に統一する兆しが現れていま す。2008年の北京オリンピックを前にして台湾がどう出るのか。1980年のモスクワ・オリンピックを、西側諸国がアフガニスタンへのソヴェトの軍事介 入を口実にして、ボイコットしたことが思い起こされます。

当面の最大の課題は中東での戦争を止めさせ、朝鮮・台湾問題を平和的に解決することです。

日本国憲法は国連憲章よりも先駆的です。第9条は、第1項で戦争を国際紛争を解決する手段として永久に放棄することを宣言し、第2項で「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と規定しています。

ドイツの哲学者カントは18世紀末に永遠の平和のためには常備軍を廃止しなければならないと主張しました。日本国憲法第9条は人類が多年にわたって求めてきた非戦と非武装の到達点です。人類の宝です。

核兵器のない、人殺しの道具のない、軍隊のない、戦争のない、平和な日本と地球を作り出すことが21世紀の目標です。

私たちは2001年12月15日に「特定非営利活動法人 地球宇宙平和研究所」を設立しました。そのなかの有志が2004年8月15日に「日本国憲法第9条を支持する宣言」を発表し、日本だけではなく、韓国、中国、ネパール、タイなどの139人の賛同を得ました。

2005年8月15日に「日本国憲法第9条の精神を地球全体に広める会(略称、9条を広める会)」を設立しました。この会の世話人は今井康英、岩 木秀樹、上田順子、近藤泉、高橋勝幸、竹本恵美、中西治、藤田尚則、星野昭吉(敬称略、五十音順)の9人です。世話人には、いつでも、だれでもなれます。 9条をまもり、広めるために大同につきましょう。

第二次大戦後62年間の内外情勢の大きな変化は私たちに明るい希望を抱かせるものです。

21世紀における変化はもっと大きいでしょう。輝かしい未来のためにともに努力しましょう。

2007年8月15日

「9条を広める会」の世話人になって下さい

中西 治

皆さん

残暑お見舞い申し上げます

今日は8月8日、立秋です。暦の上では秋に入りましたが、連日、酷暑が続いています。

私たち有志は、3年前の2004年8月15日に「日本国憲法第9条を支持する宣言」を発表し、内外の多数の賛同を得ました。さらに、私たちは、2年前の2005年8月15日、第二次大戦終結60周年記念日に、「日本国憲法第9条の精神を地球全体に広める会(略称「9条を広める会」)」を設立し、今井康英、岩木秀樹、上田順子、近藤泉、高橋勝幸、竹本恵美、中西治(五十音順)の7人が会の世話人となりました。

署名者は日本から韓国、中国、ネパール、タイなど地球上の諸地域に広がり、2007年8月7日現在で139人です。

このところ内外の情勢は急速に進展し、私たちに新たな活動を求めています。

そこで世話人のあいだで意見を交換した結果、来る2007年8月15日を期して、会の活動をいっそう活発にするために、新たに多くの方々に世話人になっていただこうということになりました。

「9条を広める会」として事務局を確立し、ホームページを開設・管理し、日本語だけではなく、数か国語で広報をおこない、いつでも自由に「日本国 憲法第9条を支持する宣言」に署名ができ、闊達に意見が交換できるようにしようとの声が上がっています。また、このさい、代表世話人を決めてはとの意見もあります。

戦争のない、平和な日本と地球を創り出すため、輝かしい未来のために、ぜひ「9条を広める会」の世話人になって下さい。世話人になっていただける方は8月13日(月)までに中西治に一報願えれば幸いです。

楽しい良い日々を!