月別アーカイブ: 2005年11月

「自衛隊違憲訴訟」について(2)

今井 康英

今回は、「自衛隊違憲訴訟」について述べます。

毎日新聞(11月30日)によると、政府は29日、自衛隊のイラク派遣を1年間延長する方針を固め、12月14日を派遣期限としている基本計画の変更を同月9日に閣議決定する方向で与党との調整に入った。撤退時期は明示しないが、イラク南部サマワで公共施設の復旧や医療など人道復興支援を行っている陸上自衛隊については、今年末にも発足する新政府のイラク統治が順調に進むことを前提に、来年中に撤退させる方針。また、共同通信(同日)によると、政府は本日、12月14日に期限を迎える自衛隊のイラク復興支援活動を1年間延長する最終方針を固め、自民党幹部に説明した。イラク復興支援特別措置法に基づく基本計画の変更を12月8日に閣議決定する意向を示し、自民党側も了承した。南部サマワに駐留する陸上自衛隊については、来年5月ごろをめどに撤退させる方向だが、依然不透明なイラク情勢を考慮し、1年間の幅を持たせた。

これらの報道によると、閣議決定の日付はともあれ、自衛隊のイラク派遣を1年間再延長する方針であることは間違いないようです。実は、サマワから撤退するのには3ヶ月ほどの期間を要すると言われていますので、第8次隊を派遣した時点で実際は延長せざる得ない事態になっていました。時事通信(11月15日)によると、イラクに派遣された陸上自衛隊の第7次、8次復興支援群の激励を終えて帰国した林直人西部方面総監は同日、熊本市の同総監部で記者会見し、サマワ滞在中、宿営地周辺に砲弾が落ちたことを明らかにした。治安状況については「バグダッドとは状況が違う」と前置きした上で「すべてが安全ということではなく、予断は許さない。時々(砲弾が)落ちてくるわけだし」と話した。西日本新聞(11月27日)によると、第8次イラク復興支援群の立花尊顯群長(48)=都城駐屯地司令=が25日夜、イラク・サマワの宿営地からテレビ電話を通じ、都城駐屯地(都城市)で記者会見した。 現地の治安については「サマワは比較的安定しているが、バグダッドを中心に起こっているさまざまな事案が、サマワでも起こらないとはいえず、油断せず活動を続行する」と語った。私見では、このような総監や現地部隊長の報告があるにもかかわらず、それでもサマワが「非戦闘地域」(イラク特措法第2条3項)であるという理由が分からない。「自衛隊が活動している地域が非戦闘地域だ」と平気で言える人が首相でなければ、そもそも派遣などできる地域でないことは明白だろう。

朝日新聞(11月29日)によると、26、27日に実施した世論調査で、来月に期限が切れるイラクへの自衛隊派遣の延長について賛否を聞いたところ、「反対」が69%で過去最多となった。内閣や自民支持層でも、反対は6割近くに達した。「賛成」は22%だった。賛否の理由についても聞いたところ、反対の理由では「派遣先が危険だから」が35%を占めて最も多く、「アメリカとの関係を重視しすぎているから」が23%で続いた。賛成の理由では、半数以上の57%が「国際貢献になるから」を挙げた。また、「賛成」と答えた人に、派遣期限を延長する場合に撤退時期についても方針を示すべきかどうかを聞いたところ、その68%が「示すべきだ」と答えた。これらのデータを、日米同盟偏重の小泉首相はよくよく考えるべきだ。

共同通信(10月23日)によると、英国防省がイラク国民を対象に実施した秘密の世論調査で、回答者全体の45%が駐留英米軍に対する攻撃は正当化されると考えていることが分かった。23日付の英紙サンデー・テレグラフが伝えた。英米など多国籍軍がイラクの治安改善に役立っているとの答えは1%足らずで、南部サマワに自衛隊を派遣している日本政府にとっても無視できない結果だ。調査によると、英米軍に対する攻撃を支持するとの回答は、英軍が管轄する南部マイサン州では65%に達した。サマワを含むムサンナ州の数字は不明。多国籍軍の駐留に「強く反対する」としたのは82%で、3人に2人は駐留によって治安が悪化したと答えた。この分では、サマワに駐留する自衛隊が人道復興支援に「役立っている」と本気で思っているイラク国民も1%足らずに違いない。これらのデータを「国際貢献になるから」と思っている日本国民も、よく承知しておくべきだ。イラク国民は、日本国民ほど外国軍の駐留に寛容ではないことを知るべきである。

第3期理事会第3回会議のご報告

事務局

いかがお過ごしでしょうか。

11月27日(日)かながわ県民センター711号室で行われました第3期理事会第3回会議の報告をいたします。

理事会には理事11名、監事1名が出席され、以下の内容が審議されました。

(1) 朝鮮民主主義人民共和国・中華人民共和国訪問報告

参加者、日程について報告され、決算として収入98,600円、支出97,936円、収支残高664円となり、収支残高を研究所の事業収入としました。また訪朝に関する出版は木村副理事長を中心に行っていくことになった。

(2) 事業財政委員会報告

予算の執行状況と寄付について報告があり、現在の研究所の経済状況は逼迫しており、会費未納の会員に納入のお願いをし、また寄付金を幅広く募ることになっ た。また寄付をした場合の寄付金控除が受けられる認定NPOについて話し合われ、今後検討していくことになった。なお認定NPOになる要件の一つとして、 直前二年度における総収入金額のうち寄付金総額の割合が三分の一以上であることとなっています。

(3) 学術研究委員会報告

中国湖南大学代表団(団長は本研究所顧問の王邦佐さん)の来年1月の訪日について、中国遼寧省阜新蒙古族自治県代表団(団長は本研究所客員研究員李峰さ ん)の来年1月 の訪日について、2006年3月の訪中(上海、南京、長沙)について、2006年8−9月の平壌ほかへの訪問について報告がありました。なお2006年3 月の訪中は汪鴻祥理事が中心となって計画することになった。研究所所報の発刊については木村副理事長と事務局が連携し行うことになった。地球宇宙平和学叢 書の発刊と新版ブックレットの発刊についても今後学術研究委員会でさらに論議することになった。

(4) 企画広報委員会報告

ニューズレター編集部、デジタル編集部、広報宣伝部、企画部から現状について報告があった。

(5) 会員の活動

「9条を広める会」について話し合われ、今後、代表世話人について検討することになった。

(6) その他

各種研究会の映像等の売れるコンテンツ作りを目指すことが話し合われた。

理事会に参加された方々に、感謝いたします。

地球宇宙平和研究所 事務局 岩木秀樹

中国の主導する普遍的国際秩序形成の可能性

ねこくま

「戦後60年と東アジアの平和」シンポジュウムに参加してきました。専門的、包括的で東アジア安全保障の枠組みが今後いかなる方向性をもって再編成されるかについて示唆に富んだ報告の数々でした。5名のパネラーの報告は、いま私が研究しているアジア太平洋地域あるいは東アジアの安全保障秩序がどうなるかという問題を考える上で、非常に参考になりました。とくに清水学先生の「上海協力機構」に関する報告が、私にとっては一番参考になりました。

「上海協力機構」とは、中国がロシアと、旧CIS共和国の何カ国かが、安全保障上のコンセンサスをとりまとめるために締結した組織です。ところが一時アメリカのイラク侵攻に際して、ロシアやこれらイスラム系共和国が基地を提供するなど積極的に協力したために有名無実化したものと見なされていました。これが中国が主導したか、ロシアが主導したのか見えないのですが、米軍基地を地域から撤退させるという決議を実行し、中国が地歩を取り返した訳です。

まあ、今回はこれら中近東地域をめぐる中国の逆襲といった趣ですが、米軍基地の撤退、同機構へのインド、パキスタンの加盟認可、さらにオブザーバーながらアメリカから敵視されるイランを加えたことで「上海協力機構」の意味合いが大きく変化したと思われます。

ここから先は、今年末に発刊予定の某学会誌「グローバリゼーション特集号」に書いた論文の内容に関わるわけです。この論文で私は、中国がアジア太平洋地域で東アジア共同体を指向し、安全保障面ではARF(ASEAN地域フォーラム)や TAC(東南アジア友好協力条約)に積極参加している状況を、私は「アメリカ主導のグローバル秩序と東アジアの地域的安全保障枠組みの角逐」と捉えました。しかし、清水先生の提起した「上海協力機構」をめぐる中国安全保障枠組みの拡大の試みは、アジア太平洋地域での中国の試みと結びつくと、アメリカのグローバル安全保障秩序と平衡する新たな地球規模の安全保障枠組み形成試みの一貫と解釈できるようになります。

タイトで画一的な価値に支えられたアメリカ主導のグローバル秩序と、多元的で緩やかな結びつきによる秩序の主導権をめぐる競争が始まっていると理解できるわけです。国際社会の歴史は非常に早いテンポで変化しつつあり、アメリカ中心のグローバル秩序が何時までその有効性を保てるのかも不透明です。

地球大の安全保障秩序を普遍的に保持しようという努力に費やされるエネルギーはいかほどのものなのでしょうか。緩やかで協調的な国際秩序の方が、現実的で実効的なグローバル秩序の資格を有しているのではないでしょうか。今回のシンポジュウムに出席してASEAN的な緩やかな求心力による秩序こそ、冷戦とグローバリゼーションで傷ついた世界が求めている秩序ではないかと感じました。

朝鮮民主主義人民共和国訪問記念シンポジウム「戦後60年と東アジアの平和」

事務局

2005年11月27日 午後3時半から6時まで かながわ県民センター711号室

統一テーマ:「東アジアの平和と繁栄」

報告者:中西 治(地球宇宙平和研究所理事長)
報告者:木村英亮(二松学舎大学教授)
報告者:清水 学(一橋大学教授)
報告者:汪 鴻祥(中国復旦大学日本研究センター兼任研究員)
報告者:王 元 (中国鄭州大学アジア太平洋研究センター専任研究員)

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エッセイ18 目的と手段

木村 英亮

大多数の人にとって仕事は生きていくための収入をうることが第一で、当然少しでも賃金の高い仕事を求めていた。しかし、現在の日本では、賃金だけで 仕事を選ぶのでなく、仕事自体を目的として選び、それにともなって収入が得られるという生き方もできるようになったように思われる。バランスの問題かもしれないが、仕事優先の生き方がより望ましいのではなかろうか。また、仕事の内容の専門化という社会的条件の下では、好きで自分に適した仕事でないと、競争に敗れ脱落する。分業と専門化が細かく進み、その分野で相応の実力がないと、やっていけなくなったためである。

すなわち、最初に職業を選ぶときには、賃金だけでなく、仕事の内容についてよく調べることが必要である。

将棋の羽生名人が、「どの世界においても、大切なのは実力を持続することである。そのためにモチベーションを持ち続けられる。地位や肩書きは、その結果としてあとについてくるものだ。逆に考えてしまうと、どこかで行き詰ったり、いつか迷路にはまり込んでしまうのではないだろうか」(羽生善治『決断力』角川書店、195ページ)と書いているが、仕事を実力、賃金を地位と考えれば、同じような意味であろう。

ついでながら実力について、スケートの清水宏保は、次のように語っている。「将来、スケートのコーチとして、という考えは今のところな いですね。今、僕にはコーチはいないんです。・・・最後の最後にすべてを自分の間合いに引き込む力。自分の世界に引き込む磁力をもってるやつが勝つんです」(『朝日新聞』2000.8.2)。

公教育において宗教をいかに教えるか

宮川 真一

本年3月、第19回国際宗教学宗教史会議世界大会が東京都内で盛大に開催された。同会議は1950年に創設され、現在世界40カ国以上の研究団体・ 学会が所属する世界最大の宗教研究者の団体である。ユネスコの支援を受けるこの団体は、5年ごとに世界大会を行っている。「宗教―相克と平和」を総合テー マとした今大会には、海外からおよそ700人、国内から約800人以上の研究者が参加し、学際的な研究交流の場となった。私にとっても多数のロシア人研究 者らと議論や交流をするという、貴重かつ胸躍る機会であった。「相克と平和」は、国際社会にとって現在最も重要なテーマの1つである。この問題に果たす宗 教の役割が誰人も無視できないものであることは、昨今の戦争や紛争の事例を見ても明らかである。大会の開幕を飾ったのは、「宗教と文明間の対話」と題した公開シンポジウムである。パネリストの1人としてハーバード大学のドゥ・ウェ イミン教授が、「対話的文明に向けて―公的知識人としての宗教指導者」と題する基調講演を行った。(現在『第三文明』誌上で、ウェイミン教授と池田SGI 会長との対談が連載中である。)また、大会2日目には国連大学共催パネル「宗教と教育」が行われ、「公教育において宗教をいかに教えるか」について熱のこ もる議論が展開されている。

近代国民国家とその教育制度は、元来理念的には、人間の基本的権利や個人的な意思決定などを尊重する西欧人権思想や政治的民主主義、あ るいは近代科学の成果などといった西欧的価値を前提にして成立、発展してきた。公教育とは「国民国家や地方自治体などの公権力が管理運営し、(1)義務 制、(2)無償性、(3)世俗性(宗教的中立性)を備えた学校で行われる教育」を意味している。この公教育の担い手である近代学校は西欧における産業革命 以降、産業化の進展とともに世界中に普及し発展してきた。それゆえ近代学校は近代性を象徴する典型的な社会制度であり、国民意識の形成、経済発展、社会病 理の改善、差別や偏見の除去などが期待されてきた。しかし実際には、学校教育はそうした期待に十分に応えてこなかったのみならず、様々な課題や問題が噴出 した。

鈴木俊之氏によれば「21世紀を迎えた現在、先進諸国では公教育をとりまく環境が大きく変化している。90年代初頭の冷戦構造の崩壊や 経済のグローバル化の進展とともに、近代的な価値観にもとづく国民教育だけでは、公教育として不十分であることがしだいに明らかになってきた。新たに公教 育に求められていることの1つに、価値観が多様化した多文化・多元化社会のなかで生きていくために必要なスキル、つまり他者と共生する能力をもった人間を 育てることがあげられるだろう。そのためには他者の価値観や宗教などを知らなければならない。」一方、アジアをはじめ多くの発展途上諸国では外来の文化や 情報が無制限に流入するようになり、ようやく育ちつつあった国民意識や宗教的規範が危機にさらされるようになった。そのため伝統的な価値観を擁護すべく道 徳教育や宗教教育といった価値教育の見直しが行われ、その強化や新たな導入が政策として計画・実施されてきた。

従来、宗教教育は通常次の3つに分類されてきた。「宗教知識教育」は宗教に関する客観的な知識を理解させる教育であり、ほとんどの国で は、歴史、社会、道徳、美術、音楽などの教科で行われている。「宗教的情操教育」は人間形成にとって不可欠だと考えられる究極的・絶対的な価値に対する心 のかまえを育成する教育であり、「宗派教育」は特定の宗教の立場から、その宗教の教義や儀礼を通じて信仰へ導くための、また信仰を強化するための教育」で ある。

井上順孝氏は「宗教文化教育」という新しい用語を提起し、公教育での導入を提唱する。宗教文化教育とは、「文化としての宗教についての 理解を深める教育というふうに言い換えることができる。文化としての宗教とは、日本及び近隣諸国、そして世界の主な宗教の習俗、伝統的宗教についての基礎 知識、日本人の宗教に対処する態度の特徴、世界の諸宗教の現状についての理解を深めることを目指すものである。宗教情操というような曖昧とした概念ではな く、個別の宗教について、その文化的側面についての理解を深めるということである。知識と言ってもいいが、宗教知識教育という場合にはすでに固定した解釈 がある。また、文化の理解には知識だけではなく、共感とか理解しようとする態度とか、判断力といったものが求められる。」

第二次世界大戦後におけるイギリスの宗教教育は、キリスト教的な宗教教育から多文化的な宗教教育へと変化していったという。「宗教的信 仰の差異と有無、さらには政治的信条の差異を超えて人々を相互に結びつけるような、そして科学・技術の進歩もそのために奉仕することが求められているよう な全人類的価値」を探求することが価値教育の課題であるならば、学校教育のカリキュラムについてすくなくともさまざまな宗教とそれに関わる文化や慣わしに 対して寛容であるための対応が求められるようになっている。現代世界の公教育において、ナショナル・アイデンティティの維持・伝統文化の擁護・国民統合を 志向した各国伝統宗教の宗派教育に過度に偏ることは望ましい方向ではない。異文化理解・多文化共生・世界市民の育成を志向する宗教文化教育を併せて発展さ せることが、21世紀を迎えた国際社会の安定につながるであろう。

(拙稿「現代ロシアのナショナル・アイデンティティと公教育における宗教教育」『ソシオロジカ』第30巻第2号、2006年(近刊)。)

エッセイ17 だまされる方の責任

木村 英亮

敗戦後、多くの人が政府にだまされたと言っていた。しかし、たやすくだまされてしまった方にも責任がある。戦争中、日本の新聞報道は、1941年3月の国家総動員法、国防保安法、治安維持法改正、12月の言論出版集会結社等臨時取締法などに よって統制されていた。43年2月2日の『朝日新聞』によれば、東条英機首相は2月1日の貴族院本会議で、「戦況等に関して帝国の大本営発表がいかに正確 無比であるかはこれは世界に周知のことである」と答弁している。当時戦局の悪化とともに検閲はいっそう厳しくなっていた。

それでも、たとえば朝鮮人の大部分は、もっと厳しい条件の下にあったが、すこしもだまされていなかった。

また、新聞報道にもまったく真実がなかったわけではない。1943年1月2月の『朝日新聞』『毎日新聞』を読んで、終盤のスターリング ラード戦がどのように報道されているか調べてみたことがある。日本はドイツとは同盟関係にあったとはいえ、ソ連と中立条約を結んでいたので、一貫した検閲 方針がとりえなかった。解説記事には、欧米の論調をふまえた、高い水準のものもある。これらの記事を読んでいれば、戦局の帰趨を予測することは、それほど 困難でなかったはずである。

スターリングラード戦でのドイツの敗北は、第二次世界大戦全体の根本的転換点の始まりを画した。この後2年、日本とドイツは、急坂をころげ落ちるように敗戦にいたる。1945年8月15日まで、どうして正気を回復しなかったのか、不思議なことである。

徒然草』第194段に次のような文章がある。

「達人の人を見る眼は、少しも誤る所あるべからず。・・・愚者の中の戯だに、知りたる人の前にては、このさまざまの得たる所、詞にても顔にても、かくれなく知られぬべし。まして、あきらかならん人の、まどえる我等を見んこと、掌の上の物を見んが如し。」

このような眼をもちたいものである。

二酔人四方山問答(21)

岩木 秀樹

B:フランスの暴動はだいぶ沈静化してきたようだね。

A:フランス政府も必死で抑えた。1955年に制定された非常事態法がフランス本土で初めて発令されて、夜間外出などが禁止された。ほとんど準戦時体制の戒厳令と言ってもいい。

B:沈静化されたからといって、問題が根本的に解決されたわけではないよね。

A:そうだね。今後アフリカ系やイスラーム教徒の移民の格差是正や移民政策、さらにはEUがキリスト教共同体にとどまるのかどうかまで問われることになると思う。

B:今回何がきっかけで暴動化したの。

A:2005年10月27日に、パリ郊外でアラブ系の17歳とアフリカ系の15歳の少年2人が変電施設に入り込み感電死した。これが警官に追われた末との情報に怒った仲間たちが警官隊と衝突したことから始まった。ただこれは引き金に過ぎなく、差別や憎悪が根底にあるんだ。

B:そうそう。サルコジ内相のとんでもない発言がさらに火に油を注いだとも聞いたよ。

A:暴動の最初の段階での、「社会のクズを片づける」との発言は、若者のマグマを爆発させた。実はサルコジ内相はハンガリー移民二世なんだ。このように欧州移民二世は政治の中枢まで行けるが、アフリカ・イスラーム移民二世は社会の周辺に置かれているのが現状だ。

B:そうか、根が深い問題なんだ。単に不良少年たちが暴れているという問題ではないんだ。

A:移民の失業率は20%を越えていて、20代以下の若者に限れば4割近い。またいざ就職をしようとしても、イスラーム系の名前で住所がパリ郊外だと面接にさえ呼ばれないといった差別が横行している。

B:エー、そんなことがあるの。ひどいなー。

A:親の世代は肉体労働で生計を立てて、イスラームの伝統を維持していた。しかし二世たちは学校で西欧的価値観を教えられ、フランス語もしゃべり、西欧化しているのに差別を受ける。このことに大きな不満を持っているようだ。

B:この問題は単にフランスのみではないよね。

A:そう。ヨーロッパのイスラーム人口は約2000万人を数える。同化政策や多文化主義など多少違うが、同じような問題を抱えている。だから今回も暴動がドイツやベルギーにまで飛び火した。

B:でもイスラーム教徒全員が暴動を良しとしているわけではないよね。

A:もちろんそうだ。在仏イスラーム団体は11月7日に「無差別な攻撃はイスラームの教えに反する」とのファトワ(宗教見解)を出した。「暴力にノン、対話を」と書かれた垂れ幕を掲げて行進していたイスラーム教徒も多かった。

B:でもアフリカ系の少女がこのように言っていたらしい。「暴力は良くないけれど、こうでもしないと誰も私たちに耳を傾けないもの。」率直な発言だと思う。

A:そうかもしれないね。現代イスラーム地域研究が専門の内藤正典さんはこんなことを述べている。今回の暴動と宗教は関係ないが、イスラーム組織は不満を持つ若者を吸収する好機と捉えている。国家に憎悪を抱く若者がイスラーム過激派に参加していくことの危険性をフランス政府は熟慮すべきである、と。

B:このままでいくと、テロの危険性もあるということか。

A:そのことは多くのフランス人も理解している。11月9日付のリベラシオンには、「学校は選別の場、行政は失業問題に無策、警察による差別は日常茶飯事。この現実に失望した移民が自己主張をすれば、共和国の一体性を脅かす存在のように言われ、揚げ句はテロリスト視される。これが実態なのだ」と書かれていた。

B:フランスをはじめ、ヨーロッパは苦慮しているんだね。

A:おそらく、日本人には色々言われたくない、と思っているんじゃないかな。日本は移民問題を議論する以前の問題だ。移民はおろか、難民もなかなか受け入れない社会だし、長年日本に住む外国人から税金は取るが、選挙権などの権利行使はさせない国だ。

B:うーん。他人の悪い点はよく見えるけれど、自分のことはわからないということか。

A:そう。日本はアジア近隣ともうまくいっておらず、国内でも少数者を排除しているんだ。今回の暴動は実は自分たち日本の問題でもあるとも言えるかもしれない。

「世界情勢」について(3)

今井 康英

前回に続き、「世界情勢」について述べます。

20日、プーチン大統領が2000年9月以来5年ぶりに来日しました。 21日に首相官邸で日露首脳会談が行われ、共同記者会見がありました。 毎日新聞(11月21日)によると、 首脳会談で、北方領土問題をめぐっては、北方四島の帰属確認後に 平和条約を結ぶとした「東京宣言」(93年)の再確認を小泉首相が求めたのに対し、 大統領は宣言に言及せず、具体的な進展はなかった。 両首脳は領土問題の解決を目指し協議を継続することでは一致したが、 共同声明(政治文書)の発表は見送られた。 両政府は首脳会談後、経済分野を中心に12の合意文書に署名。 東シベリアのパイプライン建設に関し「来年のできるだけ早い時期」までの合意を 目指すとしたが、日本が求める太平洋ルートの優先着工は明記されなかった。 ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟を承認する2国間合意や、 ロシアの退役原子力潜水艦5隻の解体に日本が協力することも盛り込まれた。 北方領土問題については、

首相  北方領土の帰属問題を解決し、平和条約を締結するという認識は共通しているが、 立場には相当開きがある。さまざまなレベルで協議を続け、溝を埋める努力をしていく。 良好な経済協力を強化し、協力できる分野を広げ、 将来の平和条約締結に向けた環境を醸成していきたい。

大統領  双方に善意さえあれば、双方にとって受け入れ可能な解決策を見いだし、 四島の住民、そしてロシアと日本の国益に合致する解決策を見いだすことができることを 確信している。平和条約がないことが露日間の経済協力を妨げているのは間違いない。 しかし、経済協力発展の方向で問題を解決できるよう努力していく。

外務省HP掲載の会談結果概要(11月22日)によると、 北方領土問題については、

(1)小泉総理より、1956年の日ソ共同宣言、1993年の東京宣言、2003年の日露行動計画等 の諸合意はいずれも極めて重要かつ有効であり、 これらに基づいて平和条約締結交渉を継続していく必要がある、 日露両国には、四島の帰属に関する問題を解決して 平和条約を可能な限り早期に締結するとの共通の認識がある、 その意味で真剣な話合いを行うことは重要である、 日露双方が受け入れられる解決を見いだす努力を続けていきたい旨述べた。

(2)これに対してプーチン大統領より、 この問題を解決することは我々の責務である、 ロシアは本当にこの問題を解決したいと思っている、 平和条約が存在しないことが日露関係の経済発展を阻害している、 その一方で、この問題は第二次世界大戦の結果であり、 他の問題への連鎖という難しい問題がある旨述べた。

(3)両首脳は、平和条約締結問題につき、これまでの様々な合意及び文書に基づき、 日露両国が共に受け入れられる解決を見出す努力を行うことで一致した。

(4)小泉総理より、国後島沖で拿捕された「第78栄幸丸」の速やかな解放を要請したのに対し、 プーチン大統領より、解決できない問題はない旨述べた。

つい先日表明された小泉首相の信念では、 日米同盟さえ強化すれば、すべての国際関係がうまくいくはずである。 今回の領土交渉で、ロシア大統領にも説明しただろうか? 隣国の大統領は、その信念に基づき日米同盟が強化されることを歓迎してくれただろうか? 中国との軍事演習、武器売買などには両首脳が言及したようだが、 あえて日米軍事同盟の強化には触れなかったのかも知れない。 多分、先日の日米首脳会談でも、ブッシュ大統領が北方領土返還のために、 「一肌脱ぐ」気があるとまでは言ってくれなかったに違いない。 私見ながら、プーチン大統領も述べたようにロシアの「善意」が発揮されなければ、 北方領土問題の解決は困難です。 自国の戦死者だけを追悼し、頼りは日米同盟だけと決め込む首相がいるような国に対して、 しかも現に米軍のための基地を持ち続ける国に対して、 日本がなにもせずに相手に善意が生まれるはずがない。 ロシアの国民が大戦の戦利品だと見ているその4島を返してもらうには、 平和で友好的な隣国だから日本に返しても良いと思えるような両国関係を築く必要があります。 そのためにも、日本はロシア国民からどんな善意を求められているのかを考えるべきだ。

ところで、両国間で未解決なのは領土問題だけではありません。 私も関係者の一人として、「シベリア抑留」についても述べないわけにはいきません。 JNN(11月20日)によれば、 日本を敵国として活動していた元KGBのアレクセイ・キリチェンコ氏も、 「抑留問題が解決されないと日露間に汚点として永遠に残ってしまいます」 と述べたほどです。 外務省HPによると、 シベリア抑留問題については、

(1)小泉総理より、高齢化が進むシベリア抑留者の方々の心情に配慮し、記録開示、 遺留品の返還等についてロシア側が今後一層協力を強化することを期待する旨強く要請した。

(2)これに対しプーチン大統領より、 仮に支障があるとすれば官僚主義によって対応が遅いということであり、 支障の克服は可能である、協力したい旨述べた。

共同通信(11月22日)によると、 補償問題や遺骨収集に取り組む元シベリア抑留者ら約20人が同日、 衆院第2議員会館で集会を開いた。 日露首脳会談で補償問題などに動きはなく、出席者から 「元抑留者は高齢化している。なぜ進展しないのか」といら立ちの声が上がった。 集会では、全国抑留者補償協議会の有光健参与が、 首脳会談で1991年の政府間協定に基づき、 遺留品返還や情報開示を進めることが確認されたと報告した。 遺骨収集に取り組む出席者からは「11年間で1万6000柱しか収集できていない。 まだ3万柱残っており、収集のペースを上げてほしい」と国の対応の遅さを批判した。 ロシアだけではなく、日本でも官僚主義的対応が解決を遅らせています。 領土問題決着には、年月はかかるでしょうが、いずれ両国の善意によって解決出来ます。 しかし、シベリア抑留の当事者には、残された時間はもうありません。 早期に解決しなければならない所以です。

歴史問題

ねこくま

いやー、ブッシュ君、隠し球を持ってましたね。 キリスト教・・・・布教の自由・・・を中国に認めよって、これは「歴史問題」 ですよ。アヘン戦争以来の西欧の暴虐の中心に「キリスト教」があったのは否定できません。それをアメリカの大統領がやってきてキリスト教布教の自由を認めよと圧力をかける・・・これは中国は飲めませんよ。

小泉君の「靖国強行」はこのブッシュの「キリスト教布教の自由要求」の伏線だったのですね。正に恐るべきアメリカ。悪の帝国とは言いませんが(そう言ってしまってはブッシュさんと同じになってしまうから)、ブッシュ君・・悪魔 のような貴方。