アジアの平和と脱軍備
2004年11月21日(日)14:30-16:30
かながわ県民センター711号
第2回講演会 梅林宏道(NPO法人ピースデポ代表)
事務局
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アジアの平和と脱軍備
2004年11月21日(日)14:30-16:30
かながわ県民センター711号
事務局
日 時: 11月12日(金) 午後7:00〜9:00
場 所: 東京ボランティア・市民活動センター会議室C (JR飯田橋駅すぐ、セントラルプラザ10階)
地図 → http://www.tvac.or.jp/tvac/welcome/index.html
報告者:明田義男(社会福祉法人滝野川学園児童部勤務)
テーマ:「マイノリティーからみた平和への足がかり」
中西 治
ブッシュ大統領が再選されました。大統領の交代によって米国の対イラク政策の転換を願っていた私は大変残念です。しかし、全投票者のおよそ半数の5500万人以上の人がブッシュさんの戦争政策に反対したことは救いです。ブッシュさんもこの国民の意志を無視することはできないでしょう。
ブッシュさん以外なら誰でもよいといわれた大統領選挙がどうしてこのような結果になったのでしょうか。
第一は候補者の問題です。選挙はどんな選挙でも最後は候補者です。私はブッシュさんがアメリカ合衆国大統領にふさわしいとは思いませんが、「テロとの戦争」では一貫していました。私はケリ−さんは最初からもっと毅然として「イラク戦争反対」を掲げるべきであったと考えています。米国民は意志の強い指導力のある大統領を求めています。ケリ−さんはブッシュさんにくらべてひ弱に見えたのです。ケリ−さんには最後まで大衆的な人気が沸きませんでした。
第二は投票日直前の2004年10月29日にオサマ・ビン・ラディンが米国民への呼び掛けを発表し、第二の「マンハッタン」事件が起こる可能性を示唆したことです。米国民は改めて2001年9月11日の第一の「マンハッタン」事件を思い出し、ブッシュさんへの投票を増やしたと思います。米国民にとって9/11の後遺症は重いのです。選挙の流れが最後の段階で急に変わりました。オサマ・ビン・ラディンはブッシュさんへの大変な助っ人でした。
選挙結果は米国の世論が戦争と平和の問題をめぐって真二つに分れていることを示しています。
ケリーさんを支持したのは主として大西洋に臨む米国北東部の11州と中西部の4州、西部大平洋岸の3州それにハワイを合わせて19州と首都ワシントンです。獲得した大統領選挙人は252人、得票率は48%です。ブッシュさんを支持したのは主として米国の内陸中央部を占める29州とアラスカの合わせて30州です。獲得した大統領選挙人は279人、得票率は51%です。前回は民主党のゴアさんがとった中西部のアイオワ(大統領選挙人7人)は集計機械の故障でまだ結果は出ていません。
ケリ−さんを支持した地域は一般的に都市部であり、同性同士の結婚を認めるなどの人間の生き方の多様性を容認する自由主義的な傾向が強いところです。それに対してブッシュさんを支持した地域は一般的に農村部であり、同性同士の結婚などを認めない保守的な傾向が強いところです。前者と後者では自然の条件、生活の基盤、生活の仕方、ものの考え方、価値観が違います。銃に対する考え方も違います。前者は新しい米国であり、後者は古い米国です。古い米国がなお根強く存在するのです。
今回の選挙で民主党のケリ−さんを支持した州と共和党のブッシュさんを支持した州は前回の2000年の大統領選挙で民主党のゴアさんを支持した州と今回と同じ共和党のブッシュさんを支持した州とほとんど変わっていません。前回と違ったのは2州だけでした。前回はブッシュさんがとったニューハンプシャー(大統領選挙人4人)が今回はケリ−さんのものとなり、前回はゴアさんがとったニューメキシコ(大統領選挙人5人)が今回は、米国紙『USA TODAY』によると、ブッシュさんのものとなりました。共和党有利のもとで両党の地盤の固定化が進んでいます。
この固い地盤を掘りくずすためには民主党はもっと大胆な方策を講ずべきでした。たとえば、ヒラリー・クリントン上院議員を大統領候補者に起用するという思いきった策があっても良かったと思います。私は米国で最初の女性大統領が生まれるとしたら差し当たり彼女ではないかと思っています。まだ上院議員としての任期が残っており、上院議員にニューヨークから立候補するさいに選挙民に上院議員の任期途中で大統領選挙に出馬することはないと約束していましたので、彼女自身が大統領選挙への立候補を言い出すことはできませんでした。だから周りのものが今回は特別重要な意味をもつ選挙であるからといってニューヨークの選挙民を納得させて彼女を強引に引っ張り出さなけらばならなかったのです。しかし、個性豊かな人には敵も多いです。そのような動きは起こりませんでした。民主党はチャンスを逸しました。
イラク戦争の是非を大統領選挙の重大な争点とし、選挙で決着を付けたことは良かったと思います。
米国では1860年の大統領選挙で奴隷制の廃止をかかげた共和党のリンカーンが当選したときに、奴隷制の廃止に反対する南の11州がアメリカ合衆国から離脱し、それを切っ掛けとして、これらの「南」の州と「北」の23州とのあいだで戦争が起こりました。南北戦争です。このときは奴隷制維持の南の民主党が負け、奴隷制廃止の北の共和党が勝ちました。ことの是非は戦争によって決められました。
今回はイラク戦争をめぐって米国内に意見の対立が起こり、イラク戦争に反対する「東西」の民主党が負け、イラク戦争を支持する「南北」の共和党が勝ちました。今回は選挙によって米国内では決着がつけられました。
選挙は戦争よりは良い制度です。これは140年余にわたる米国の歴史の進歩と米国社会の成熟を物語っています。
米国内では一応決着がついたとしても、イラクでは問題は残っています。イラクでは米国に対する抵抗が強まるでしょう。米国は早々にイラクから撤兵すべきです。そうでなければ米国はイラクからイラク人民によって追い出されることになるでしょう。
米国は国内の問題だけでなく、国外の問題も平和的に解決する方途を考えるべきです。
アメリカ合衆国は50のステート(州=国)から成るユニオン(同盟)です。それをまとめるのは大変です。そこにはさまざまな人種の人間が住んでいます。そこには強大なエネルギーが渦巻いています。大統領選挙もこの強大なエネルギーが生み出したものであり、強大なエネルギーを消費します。それは4年ごとに行なわれる祭りです。そこで政治に対する日頃の鬱憤も晴されるのです。しかし、いまのようなやり方ではたして本当に立派な人が政治家を志すようになり、大統領になるのでしょうか。
でも、まあ、戦争をするよりは良いとしましょう。
事務局
役員
理事長: 中西 治
副理事長: 佐藤 智子
理事: 岩木 秀樹、王 元、汪 鴻祥、川崎 高志、澤入 恵子、竹田 邦彦、玉井 秀樹、徳永 雅博、中西 節子、林 亮、牧野 常夫
監事: 木村 英亮、渡邉 宏
事務局
事務局長: 岩木 秀樹