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「靖国参拝問題」について(5)

今井 康英 (2005年11月2日 11時40分)

今回は「靖国参拝問題」について述べます。

小泉首相は10月31日、第3次小泉改造内閣の発足にあたり、自ら「改革続行内閣」と名付けました。私見ですが、この内閣は「参拝続行内閣」であり、「戦争続行内閣」であると思います。

時事通信(同日)や産経新聞(11月1日)によると、安倍晋三官房長官は31日午後、閣僚名簿を発表した記者会見で、 自らの靖国神社への参拝について「わたしも首相と同じように、国民の1人として、また政治家として今まで参拝してきた。今までの気持ちをこのまま持ち続け ていきたいと思っている」と述べ、今後も継続する意向を示唆した。今年も参拝している。麻生外相も同日の会見で参拝について、「(中国とは)相互に意見が 違うのは確かだが、今後話し合っていくしか方法はない。 『適切に判断したい』という小泉首相の考えとほぼ同じ考えを言わなければならない」と述べた。麻生外相も今年、参拝している。町村信孝前外相は同日夕、退 任に当たって外務省で記者会見し、「首相以下、官房長官、外相が打ちそろって靖国参拝という事態は、なかなか容易ならざる事態になってくる恐れがある」と 懸念を表明した。町村氏は外相在任中に靖国参拝を控えた理由について「(首相だけでなく)外相が行くとなると、実務的な日韓、日中の話し合いすらできなく なる恐れがあると懸念した」と説明した。中国側が靖国神社を参拝しないよう求めているのは首相、官房長官、外相の三人だからだ。もちろん、町村氏の懸念を 承知の上で、小泉首相はすべて「計算ずく」で、参拝シフトを組んだ訳で、「外交はそれくらいがうまくいくこともある」と語ったようだ。つまり、あわよくば 来年8月15日に公約通りの参拝断行を目論んでいるに違いない。 なんと「時代錯誤」の内閣であることか、呆れるばかりです。

韓国や中国の反応は、当然ながら、以下のように厳しいものであった。【ソウル1日時事】によると、韓国主要紙は1日付で、第3次小泉改造 内閣の発足について1面などで大きく報じた。「強硬右翼改造」(東亜日報)、「歴史問題など韓中両国との対立拡大へ」(中央日報)と 新内閣の性格に対する警戒感を押し出した論調が主体で、特に安倍晋三官房長官、麻生太郎外相の2人に焦点を合わせた記述が目立つ。安倍官房長官に関しては 「歴史転覆図る右翼の先鋒(せんぽう)」(ハンギョレ)と指摘。麻生外相については、植民地時代の創氏改名を「朝鮮の人たちが『名字をくれ』と言ったのが 始まり」と過去に発言したことを紹介し、「暴言相次ぐ」(朝鮮日報)としている。両氏は以前から韓国が憂慮してきた政治家であり、韓国メディアは彼らの起 用を「日本の右傾化」という従来の図式に当てはめて報道している。【北京1日共同】によると、中国外務省の孔泉報道局長は1日の記者会見で小泉首相の靖国 神社参拝問題について「対話で解決できる問題ではない」と述べ、対話での解決を求める日本側の要請に応じない考えを明らかにした。麻生太郎外相が先月31 日の就任後記者会見で、首相参拝問題について「日中双方で意見が違うのは確かだ。話し合っていく以外ない」と対話での解決を求めたことへの反論。また孔局 長は、同問題の解決方法について「日本側が真剣に歴史を反省し、平和の発展を求めるかどうかの問題だ」と述べ、日本側が譲歩しない限り解決はあり得ないと の考えを強調した。

さて、日本国民の反応はどうか?最新のデータを提供した共同通信(11月1日)によると、第3次小泉改造内閣が発足した10月31日夜か ら11月1日にかけて実施した全国緊急電話世論調査の結果では、小泉内閣の支持率は前回調査(10月17、18日)に比べ5・6ポイント上昇し60・1% だった。不支持率は7・6ポイント減の28・7%。支持率が60%を超えるのは、官房長官に就任した安倍晋三氏が自民党幹事長に抜てきされた2003年9 月の自民党役員人事直後の調査以来。改造の顔触れ評価は、「代わり映えがしない」が23・8%で最も多かった。「改革に向けた意気込みを感じる」が19・ 5%で続いた。「派閥にとらわれず、清新だ」「重厚で安定感がある」といった肯定的評価は43・0%、「改革のイメージがない」「全く期待外れだ」などの 否定的評価は48・3%と世論は二分されている。内閣支持の理由については「ほかに適当な人がいない」が25・5%で最多。次いで「首相に指導力がある」 で前回に比べ6・1ポイント増の21・7%だった。不支持理由では、「経済政策に期待が持てない」が20・2%で一位だった。これらのデータでは小泉外交 の評価は必ずしも明確ではないが、新内閣発足は概ね好意的に受け入れられているようだ。

しかし、国内問題でも消費税や社会保障などの具体的な国民負担の問題が論議されていくと、いよいよ「改革」の中身が問われてくるはずだ。 「100年安心」の年金改革や「任期中は消費税を上げない」と言っているだけでは済まされない。まして靖国参拝続行でアジア外交に好転の兆しが見えない中 で、イラク情勢如何によっては、何時もう一つの「戦争続行内閣」の素顔を曝すことになるかも知れない。いずれにしても、「日本の右傾化」を憂慮しているの は隣国だけではないことを、ここに表明しておきたい。

「戦後未処理問題」について

今井 康英 (2005年10月26日 23時21分)

今回は、「戦後未処理問題」について述べます。

小泉首相の靖国神社参拝が違憲か合憲かは、つまるところ、裁判官に良心があるかないかによって、判断が分かれました。10月5日のコラムに、そのようなことを書いておきましたが、昨日の東京地裁での二つの判決も、このことを示しています。

ANN(朝日テレビ系、10月25日)によると、日本の植民地時代に台湾と韓国につくられたハンセン病療養所の元患者らが日本政府に補償を 求めていた裁判で、東京地裁は、台湾の元患者らには補償を命じる判決を言い渡しましたが、韓国の元患者らには認めませんでした。訴えていたのは、植民地時 代に韓国のソロクト更生園と台湾の台湾楽生院に強制的に隔離された現地のハンセン病の元患者ら合わせて142人です。2001年に施行されたハンセン病補 償法では、国内の療養所に入所した経験があるすべての人が補償を受けられるとしています。しかし、日本政府は、韓国と台湾の元患者らには「国外の療養所は 補償の対象外だ」として、支払いの申請を却下したため、元患者らが提訴していました。台湾の元患者らへの判決で、菅野博之裁判長は「補償法には、国籍や居 住地による制限はなく、戦前の台湾に設置された療養所を除くのは合理的でない」として、違法とする判決を言い渡しました。一方、韓国の元患者らへの判決 で、鶴岡稔彦裁判長は「補償法を審議する際には、国外の療養所が対象になるという前提がなかった」として、原告敗訴の判決を言い渡しました。

南日本新聞(同日)によると、韓国訴訟の原告は控訴する。鹿児島から駆けつけた40人を超す元患者や支援者らは「不当判決」に怒りをあら わにした。鹿屋市の星塚敬愛園で暮らす義久勝さん(63)は思わぬ韓国側の敗訴に声を震わせ、 「当時は民族蔑視(べっし)も重なり、人権被害は国内の療養所以上。植民地政策を謙虚に反省せぬ無責任な判決」と指摘。「本当に悔しいと思う」と原告を思 いやり、「人間回復へ一緒に闘い続けたい」と話した。名瀬市の奄美和光園で父親を亡くし、ハンセン病遺族・家族の全国組織代表を務める赤塚興一さん (67)=同市=は「両国の入所者は私たちの同胞で家族同然。この問題は2001年、勝訴した国賠訴訟の延長線上にあるはず。話にならない判決」と切り捨 てた。支援団体「ハンセン病問題市民会議かごしま」の寺本是精事務局長は、「同様の被害を受けながら、裁判長の解釈で人生が左右された。高齢の原告を思う と許せない」と声を荒らげた。

なぜ、同じ裁判所にもかかわらず、このように判断が分かれたのか。毎日新聞(同日、江刺正嘉)によると、隔離政策に基づく被害を救済する という補償法の「趣旨」をどうとらえるかで、真っ向から判断が分かれた。隔離政策に植民地政策も加わり、両施設で本土を上回る人権侵害の被害があったのは 明らかで、台湾訴訟の判決はその被害実態を直視したと言える。一方、韓国訴訟では、法の審議過程で国外施設を認識していなかったことを理由に、補償対象と なる施設の範囲を限定した。台湾訴訟の判決が、法の平等原則を重視し「厚労省告示を限定解釈するのは合理的ではない」と判断したのに対し、韓国訴訟は、厚 労省告示にない以上は補償対象とはならない、という立場を取った。そもそも二つの施設を厚労省告示に明記しなかったのは、政府が韓国や台湾だけでなく、旧 満州や東南アジアなど、戦前統治下にあった地域の施設の入所者から際限なく補償請求が出されることを恐れたためだ。第三者機関「ハンセン病問題に関する検 証会議」が今年3月にまとめた報告書によると、 戦前の韓国や台湾の施設では、職員による暴力など、本土にない人権侵害が繰り返されている。国は「法解釈が争点」として、この被害実態について最後まで認 否を避けた。韓国、台湾は60年代に強制隔離政策が廃止されたものの、戦前の日本の政策が原因で地域社会に病気への偏見が根強く残っている。国は台湾訴訟 の控訴を断念したうえで、海外の元患者の人権回復にも全力を尽くすべきだ。

私も、それが当然だと思います。それにしても、この国が持つ平和憲法は、なんと有難いことか。そして、少ないながらも良心のある裁判官が いることが、これで分かります。先の大阪高裁判決といい、この度の台湾訴訟判決といい、まさに裁判官の良心の輝きを見る思いがしました。戦後未処理問題の 早期解決に向けて、これらの判決が活かされることを期待します。

「靖国参拝問題」について(4)

今井 康英 (2005年10月19日 23時25分)

今回は、「靖国参拝問題」について述べます。

東京新聞(10月17日)によると、参拝劇場は、わずか5分であった。秋の例大祭が始まった東京・九段の靖国神社を同日午前、小泉純一郎首相が公約通りに参拝した。だが、そのやり方は、中韓両国の反発や大阪高裁の違憲判決を意識してか、異例ずくめ。平服のスーツ姿で、記帳はなし。傘も差さずに参道を自ら歩き、拝殿の前で手を合わせると、わずか5分ほどで神社を後にした。首相の靖国参拝に反対する人々からは批判の声が上がる一方、首相の参拝を求める人たちも、異例の参拝方法に複雑な反応を示した。午前10時10分、黒塗りの公用車で靖国神社の青銅大鳥居前に到着した小泉首相は、濃いグレーのスーツに、水色のネクタイ。過去四回の参拝は、礼服か羽織はかま姿だったが、この日の参拝は初めて、ふだん執務する際と同様の平服で臨んだ。小雨の降る中、傘も差さず、口を真一文字に結び、ロープが張られた参道を警備の警察官らを伴って拝殿へ歩く。詰めかけた参拝客から声をかけられたが、視線をやや下げ、厳しい表情を変えずに拝殿へと進んだ。首相は拝殿前で一礼すると、階段を上がり、ズボンの右ポケットから取り出したさい銭を投げ入れた。その後、目を閉じたまま30秒余の間、じっと両手を合わせると再び一礼。参拝の仕方も一変させ、本殿には上らない「拝殿前参拝」という形を取って、神社を後にした。参道にぶ報道陣から「総理、総理」とコメントを求める声が上がったが、そちらの方は見向きもせず、5分程度で車に乗り込んだ。(私も、この5分間の一部始終をビデオニュースとラジオで確認しました。)靖国神社は今回の参拝について、社頭参拝の一種である「拝殿前参拝」と説明している。

共同通信(同日)によると、首相は参拝後、官邸で自民党の中川秀直国対委員長に「秋の例大祭だから、マスコミの皆さんがずっと待っているから、こんなことでずっと待たせていては申し訳ない。おれは絶対に参拝するんだから」と述べた。細田博之官房長官は記者会見で「首相の職務として参拝しているのではない」と強調した。読売新聞(同日)によると、首相は就任以来、年1回の参拝を事実上の公約としており、今回が5回目。首相が秋に参拝したのは初めて。靖国神社側は「歴代首相は例大祭中に参拝している」として、17~20日の秋季例大祭中に参拝するよう求めていた。首相は同日昼の政府・与党連絡会議で、「内閣総理大臣・小泉純一郎としてではなく、一国民として心を込めて参拝した。二度と戦争を起こしてはならないという不戦の決意で祈った。今日の日本があるのは、心ならずも戦場で散られた皆さんのお陰だという気持ちだ」と語った。中韓両国との関係に関しては「アジア諸国との関係は未来志向で進めたい」と述べた。 毎日新聞(同日)によると、首相は同日夕、首相官邸で記者団に同日午前に靖国神社を参拝した理由などを説明した。首相としての過去4回の参拝と異なる形式を取ったことに関し、首相は「今までは首相として特別に(本殿への)昇殿を許されていたが、『普通の国民と同じように』がいいと思った」と説明した。中国、韓国が反発していることに対しては「日中・日韓友好、アジア重視、変わりません」と述べ、両国政府に引き続き理解を求めていく考えを示した。17日を参拝日に選んだことについては「今日は例大祭。それと、やはり1年1回参拝するのはいいことだなと(思った)」と説明。一方で、郵政民営化関連法が14日に成立したことに対して「一つの節目かもしれない」と語り、小泉政権の最重要課題と位置づけた郵政民営化に道筋がついたことも参拝に踏み切る動機になったことを認めた。「(来年9月までの)任期中の参拝はこれで最後か」との質問に対しては「適切に判断していきたい」と述べ、来年も参拝を断行することに含みを残した。(私も、これらの会見をビデオニュースなどで確認しました。)

産経新聞(10月18日)によると、「一人の国民として心を込めて参拝した。二度と戦争を起こしてはならないという不戦の決意で祈った。日本はこれからもアジア諸国との関係を重視していきたい」首相は十七日昼の政府・与党連絡会議でこう参拝の「真意」を口にした。平成十三(2001)年の就任時、「いかなる批判があろうと必ず八月十五日に参拝する」と明言した首相。この年は「どうしても十五日は避けてほしい」との中国のメッセージを受け、二日早めて参拝した。翌(2002)年は春の例大祭に合わせて四月二十一日に参拝。十五(2003)年は一月十四日、十六(2004)年は元日に参拝したが、参拝日をずらしても中国側はかたくなだった。「いつでも、いつがいいか考えていた」昨年元日の参拝時、首相は記者団に悩ましい心境を吐露している。「心ならずも戦地で倒れた方々や、やむをえず戦場に行かれた方に哀悼の意を表明している」と説明してきたが、中国側は聞く耳を持たない。一方で、首相サイドは昨年十一月のラオスとチリ、今年四月のインドネシアと過去三回開かれた日中首脳会談の前に「首相は時期は別として、靖国神社を参拝する。それでもいいなら会談を受ける」と非公式に打診していた。それでも中国側が会談に応じたのは、表では国内向けに靖国参拝を批判はするが、裏では首相の靖国参拝をあきらめ、他の課題について協議する損得勘定をしていたためともいえる。このため、中国が、歴史問題で日本に踏み絵を迫り、「日本より優位に立つための口実に過ぎない」(周辺)と首相が見切っていたフシがある。首相は周囲に「靖国で譲れば日中関係が円滑にいくなんて考えるのは間違いだ。靖国の後は教科書、尖閣諸島、石油ガス田…と次々に押し込んでくる」と漏らしており、中国に強い警戒感を抱いている。衆院議員初当選から三十年以上にわたり、ほぼ毎年、靖国参拝を続けている首相。愛読書の一つは、特攻で散った学徒兵の遺稿集『ああ同期の桜』であり、国会で「特攻隊の青年たちの気持ちに比べれば、こんな(首相としての)苦労は何でもない」(十三年五月の参院予算委員会)と述べたこともある。「本来、心の問題に他人が干渉すべきじゃない。ましてや外国政府が、日本人が日本人の戦没者に、あるいは世界の戦没者に哀悼の誠をささげるのを、いけないとか言う問題じゃない」首相は十七日夕、記者団にこう言い切った。日本の内政問題である靖国参拝に干渉してくる中国や韓国を強く牽制(けんせい)したのだ。中国は今年、王毅駐日大使らが、「日本の政界、財界、マスコミを回って参拝中止への協力を呼びかけた」(自民党幹部)とされる。この日の参拝は、大阪高裁が傍論で違憲判断を示したこともあり、神道色を薄めるため昇殿参拝は行わず、私費による献花料の支払いもしなかったが、参拝すること自体は譲らなかった。「(来年の参拝も)適切にこれからも判断していきたい」首相は来年、「公約」だった八月十五日の参拝を果たすのか。九月の自民党総裁任期切れを待ってから参拝するのか。首相は最近、「中国は、日本人の心の問題にまで踏み込んだことを後悔するだろう」と周囲に語っている。

私も、この参拝劇場を見せられたが、「ああ、無謀」と言わざるを得ない。小泉首相の「真意」も分からないではないが、郵政民営化法案にせよ、靖国参拝にせよ、どちらも国民の総意ではない。自民圧勝と言われた先の「郵政」総選挙で、議席に反映されなかった国民の声(死票)も、無視してはならない。実際は、郵政民営化も参拝も、それを認めるのは国民の半数にも満たなかったのだから。小泉首相は慎むべきであると申し上げたい。日本人の心の問題も、もちろん、大事である。しかし、同様に、中国や朝鮮などアジアの人びとの心も大事にすべきだ。このままでは、再び中国や朝鮮と戦火を交えることに、なりかねない。それが首相の真意かも知れないが、国民の大多数はそれを望んでいないはずだ。靖国神社は、過去の遺産として残してもいいが、国が護持していくべきものではない。策や奇襲で先勝しても、後の大敗は免れない。最後には玉砕しかなかったことを、忘れてはならない。特に戦後生まれの国民は、このことを肝に銘じておくべきである。小泉首相の上辺の言葉を、迂闊に信用してはならない。今まさにイラクに派遣されている自衛隊を、「特攻隊」にしないためにも。恒久の平和を念願する日本国民として、今こそ抗議の声を上げるべきだと思います。

「世論調査」について(3)

今井 康英 (2005年10月12日 23時32分)

今回は「世論調査」について述べます。

読売新聞(10月11日)によると、衆院は同日の本会議で、政府が今国会に再提出した郵政民営化関連法案を自民、公明両党などの賛成多数で可決し、参院に送付した。民主、共産、社民などの野党各党は反対した。通常国会では、自民党に多くの造反が出て5票差での衆院通過だったが、衆院選を経た今回は「反対票組」のほとんどが賛成に転じ、賛成338、反対138の200票の大差となった。政府・与党は14日の参院本会議での成立を目指す方針だ。賛成が議席数の3分の2(320)を超えたため、憲法の規定により、参院で否決された場合でも、衆院の再議決で成立する。つまり、郵政民営化法案の成立は、時間の問題であり、これが平成翼賛会の威力である。これは、「郵政」国民投票と言われた総選挙の結果であり、国民が選択した結論でもある。(但し、今回は得票率と議席獲得率に大きな乖離があるので、異論もある。)問題は、郵政民営化以外の諸懸案に国会がどう応えるかである。民意を尊重することになっている小泉首相にも、是非、承知してほしい世論調査がある。

毎日新聞(10月10日)によると、8、9日の両日、全国世論調査(電話)を実施した。12月14日に期限切れとなるイラクへの自衛隊派遣について聞いたところ、「延長すべきでない」との回答が77%に上り、「延長すべきだ」の18%を大きく上回った。イラクへの自衛隊派遣については、来年5月に英豪軍が撤退した場合には派遣継続は困難とする意見が与党内からも出ている。昨年12月に1年間の派遣延長を決定した際は「賛成」31%、「反対」62%、昨年11月に延長の是非を聞いたときは「延長すべきだ」27%、「延長すべきでない」51%で、慎重論の強まりが読み取れる。自民支持層でも66%が派遣延長に反対、賛成は29%にとどまった。自民以外の支持政党別では、公明支持層の8割近くが反対。民主、共産、社民支持層で反対が8割を超え、性別では女性の79%が派遣延長に反対した。つまり、国民世論は自衛隊のイラク派遣延長に反対している。小泉首相、並びに国会は、この民意を謙虚に受け止めるべきである。

JNN(10月10日)によると、調査は全国の20歳以上の男女を対象に10月8日と9日に行いました。まず、衆議院に憲法調査特別委員会が設置されたことを知っている人は50%で全体の半分でした。日本国憲法の改正については、「改正すべき」が59%、「改正すべきでない」が32%でした。一方、改正論議の焦点である憲法9条については、「改正すべき」と「改正すべきでない」がそれぞれ42%で意見が2つに割れました。9条の1項で「戦争と武力行使の放棄」を定めていることについては、「変えるべき」が27%だったのに対し、「変えてはならない」が66%。また、2項で「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」と定めていることについては「変えるべき」が38%「変えてはならない」が51%という結果でした。

また、毎日新聞(10月5日)によると、憲法問題について、全国世論調査(面接)を実施した。憲法改正に「賛成」と回答した人は58%で、「反対」の34%を上回った。戦争放棄や戦力の不保持を定めた9条については「変えるべきでない」が62%で、「変えるべきだ」の30%の2倍に達した。衆参両院の憲法調査会や自民、民主、公明各党による論議で国民に改憲への支持が広がる一方で、自民党が重視する9条改正についてはなお慎重な国民意識を示した。調査は9月2日から4日まで全国の4550人を対象に実施し、2418人から回答を得た。調査方法が異なるため単純に比較はできないが、昨年4月と今年4月の電話調査では、憲法を「改正すべきだ」が6割程度、「改正すべきでない」が3割で、ほぼ同じ傾向となっている。同時に、9条改正について聞いたところ「変えるべきでない」との答えが男性で57%、女性は67%に達した。「変えるべきだ」は、男性が38%、女性は23%にとどまった。9条改正賛成派にどの部分を変えるべきかを聞いたところ、戦力不保持と交戦権否認を規定した2項だけを「変えるべきだ」と答えた人が50%と最多。戦争放棄を定めた1項と2項の「両方とも」が35%と続き、1項だけを「変えるべきだ」は13%にとどまった。つまり、JNNの調査でも毎日の調査でも、国民世論は、憲法改正には賛成するが9条の改正には反対だと言っている。少なくとも、自衛隊を海外でも武力行使できる軍隊にはしたくないというのが、今のところの民意だと思われる。いずれ近い内に提起されるはずの自衛権や自衛軍を明記した改憲案に対して、国民がどういう選択をするのか、これから護憲派にとっては益々油断ならない時代である。

「靖国参拝問題」について(3)

今井 康英 (2005年10月5日 16時21分)

今回は、「靖国参拝問題」について述べます。

小泉首相の靖国参拝について、高裁レベルで次々と判決が出ました。朝日新聞(9月29日)によると、同日の東京高裁(浜野惺裁判長)の判決では、2001 年8月13日に実行された参拝について、「自己の信条に基づいて行った私的な宗教上の行為か、または個人的な立場で行った儀礼上の行為」と位置づけ、「内 閣総理大臣の職務行為として行われたとは認めがたい」とした。つまり、「私的参拝」であり、憲法判断はしていない。

毎日新聞(9月30日)によると、同日の大阪高裁(大谷正治裁判長)の判決では、2001年8月13日、2002年4月21日及び 2003年1月14日に実行された参拝について、少なくとも行為の外形において、内閣総理大臣としての「職務を行うについて」なされたものと認定。各参拝 は「憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たる」と判断した。つまり、「公的参拝」であり、憲法違反である。

読売新聞(10月5日)によると、本日の高松高裁では、水野武裁判長(紙浦健二裁判長代読)は、原告側の訴えを退けた1審・松山地裁判決 を支持、原告側の控訴を棄却した。憲法判断には触れなかった。小泉首相の靖国参拝を巡っては、同様の集団訴訟が全国6地裁に7件起こされており、これまで 計10件の判決が言い渡されている。2004年4月の福岡地裁の判決と、今年9月の大阪高裁判決以外の6件の1審判決や7月の大阪高裁(別の原告団)、9 月東京高裁の控訴審判決は、今回の判決同様に憲法判断に踏み込まなかった。つまり、地裁であれ、高裁であれ、「良心」のある裁判官のいる裁判所が憲法判断 をすれば、 「違憲」判決以外はないと言うことだ。

さて、時事通信(9月30日)によると、小泉首相は同日午後の衆院予算委員会で、大阪高裁判決について「総理大臣の職務として参拝してい るわけではない。憲法違反であるとは思っていない」年内に参拝するかどうかについては「適切に判断する」と述べた。「戦没者に対する哀悼の誠をささげるこ とと、二度とあのような戦争を起こしてはならないという気持ちで参拝している」「一国民として参拝するのがどうして憲法違反なのか理解に苦しんでいる」と 述べ、判決に不快感を示した。

また、日経新聞(同日)によると、小泉首相は同日夕、大阪高裁が違憲と判断を下したことについて、「分かりませんね。何で違憲なのか」と 憮然とした。今回の判決が、今後の靖国参拝の判断に影響を与えるかに関しては「いや、ないですね。勝訴でしょう」と強調。憲法の政教分離規定との整合性に ついても「それも厳格に対応しているつもりですけどね」とし、「伊勢神宮参拝は、これはどうなんですかね」と記者に反問した。

現に内閣総理大臣の職にある者が靖国神社に参拝して「内閣総理大臣」と記帳していながら「一国民」として参拝したなどと言い張る人物が、 実際に内閣総理大臣の職に居続けられることの方が理解に苦しむと言うべきだ。 もちろん、総理の職にある内は、伊勢神宮参拝も自粛が当然だ。戦後60年にして、総理の職にある者が「靖国参拝は当然で、違憲だと思わない」と公言してい るようでは、 またそれを国民が放置しておくようでは、いつまでもこの国で戦後未処理問題が片付くはずがないと言わざるを得ない。むしろ、いずれ靖国神社に祀るべき英霊 (戦死者)をつくり出すことにもなりかねない。

今まさにイラクに派遣された自衛隊員は「戦地」にいることを忘れてはならない。この際、主権者として国民は今一度、憲法前文に銘記した 如く、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、この憲法を確定したことを想起すべきではないかと思います。

「世界情勢」について

今井 康英 (2005年9月28日 16時40分)

今回は、「世界情勢」について述べます。

このカテゴリでは、今や、アメリカでのイラク反戦運動の象徴となっているシンディ・シーハンさんの活動を紹介しています。ロイター(8月6日)によると、同日ブッシュ米大統領が米テキサス州クロフォードに保有する牧場兼私邸の近くに、およそ70人が集まり、米軍のイラク撤退を訴えた。ホワイトハウスの報道官によると、ハドリー大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らは、シンディー・シーハンさんらとおよそ45分間面会し、訴えに耳を傾けた。シーハンさんは、面会の前に記者団に対して、「なぜ息子を殺したのか、息子は何のために死んだのか、大統領に尋ねたい」と話していた。

西日本新聞(ワシントン8月11日青木忠興)によると、シンディ・シーハンさん(48)がブッシュ米大統領に駐留米軍の撤退を訴えるため、テキサス州クロフォードの大統領私邸近くでキャンプを続けている。大統領は十一日、私邸の牧場で会見し「彼女の立場を厳しく受け止めている」と同情を示したが、「敵に誤った合図を送ることになる」と撤退論は退けた。シーハンさんの息子、ケーシーさんは二〇〇〇年に陸軍入隊。昨年四月、イラクに派遣され、五日後に戦死した。まだ二十四歳だった。カリフォルニア州在住のシーハンさんは牧場近くの道路脇にテントを張り、反戦の垂れ幕を掲げて「息子のように若者を無駄死にさせるべきではない」と訴えている。共感する反戦活動家らが抗議行動に加わり、支援を始めた。シーハンさんは「息子の死まで、一人では何も変えられないと思っていたが、多くの人に支えられた一人は主張を届けることができる」と語った。

ANN(テレビ朝日系、8月22日)によると、イラク戦争で息子を亡くした母親が、ブッシュ大統領の滞在するテキサス州で、抗議活動を展開しています。彼女を支援する人も駆けつけ、「反イラク戦争」の象徴的な存在になりつつあります。シーハンさんが、炎天下での座り込みを始めたのは、今月6日。ブッシュ大統領が夏休みを過ごす牧場のすぐ近くです。「何のために息子は死んだのか」と大統領に問いただしたいと訴えるシーハンさんのもとに支持者らが集まり、テント村ができました。集まった人の多くは、イラクで息子らを亡くした母親たちです。座り込みから2週間目、シーハンさんは母親の容体が悪化したため、急きょ、テント村から離れることになりました。その後も、母親たちは彼女の帰りを待ち続けています。たった1人の母親が始めた戦いが、静かな声となって全米に広がろうとしています。

JNN(TBS系、9月2日)によると、実はブッシュ大統領は去年、カリフォルニアの基地で戦死者の遺族と会った際、シーハンさんとも面会していました。しかし、今回はブッシュ大統領は側近を送り、シーハンさんの話を聞きましたが、自ら会おうとはしませんでした。「『今すぐ米軍がイラクから撤退すべき』との彼女の考えは聞いている。しかし、それはこの国の安全保障にとっては間違いだ」(ブッシュ大統領)ガソリン価格の高騰や出口が見えないイラク情勢に対する不信感からブッシュ大統領の支持率が低迷する中、一人の母親の行動はブッシュ大統領の再選で勢いを失っていた「反イラク戦争」の動きに再び、火をつけました。しかし、ブッシュ政権は10月に予定されているイラクの憲法草案をめぐる国民投票などのために、むしろ部隊の数を増やそうとしています。8月31日、ブッシュ大統領はハリケーン「カトリーナ」被害の対応のため、夏休みを切り上げワシントンに。一方、同じ31日、シーハンさんはワシントンでの反戦集会に向かうバスツアーに参加しました。「誰一人として、このウソとごまかしに基づいた戦争で死ぬべきではありません。私たちはイラクを侵略し占領すべきではなかった。私は日本人にも自衛隊を撤退させるよう働きかけてほしい」(シーハンさん)

毎日新聞(9月24日、ワシントン笠原敏彦)によると、同日イラク戦争に反対し、駐留米軍の即時撤退を求める反戦デモが、ワシントンのホワイトハウス周辺で行われた。終日繰り広げられたデモや集会には10万人を超す人々が参加し、イラク開戦(03年3月)以来、首都では最大の反戦抗議運動になった。主催団体は当初10万人の参加を予想し、AP通信によると、警察当局はその数に達したと見ている。一方、主催者側は実際の参加者数を30万人としており、デモの規模は予想を超えて大きく膨らんだ模様だ。米兵の息子(当時24歳)をイラク戦争で失ったシーハンさんが集会で「あと何人の子どもたちを犠牲にしたいのか」と訴えると、参加者らは「もう一人も許されない」とシュプレヒコールを繰り返し、駐留米軍の即時撤退を求めた。反戦デモは、ハリケーン「リタ」の米南部上陸と重なり、ブッシュ大統領は被害対策の陣頭指揮のためホワイトハウスにはいなかった。この日はロサンゼルスやサンフランシスコなど米国各都市のほか、東京やロンドンなどでも反戦デモが行われ、世界各地で反戦ムードが高まりをみせた。

同日、栃木県では「九条の会・栃木」設立記念集会が県教育会館大ホールで開催されました。県内各地から約600人(主催者発表)が参加しました。私も、その一人です。イラク戦争に反対している世界の人々の運動と、平和憲法を守り、9条の精神を広めようとする私たちの運動が同時進行していると感じずにはいられませんでした。また、「反戦の母」シンディ・シーハンさんの活躍が物語るように、母親が先頭に立ってこそ、反戦平和運動は本物の運動になると思います。

「憲法改正問題」について(3)

今井 康英 (2005年9月21日 19時00分)

今回も、「憲法改正問題」について述べておきます。

本日、第163特別国会が召集され、第3次小泉内閣が発足しました。 郵政民営化法案の成立を最優先するため、全閣僚を再任したところですが、 特別国会終了後に、内閣改造、党役員人事を行うようです。 小泉首相自身の任期については、来年9月の自民党総裁任期までと、明言しました。 私見ながら、小泉さんは今まで 「私の任期中には、憲法を変えません。消費税を上げません」 と言ってきましたので、もし、 いよいよ憲法を変える気になったり、そろそろ消費税を上げてもよいと判断したのなら、 彼は辞めることを躊躇しないでしょう。 但し、党内外から任期延長論が次々と出されていますので、 本人の希望通り、来年9月に退任できるのか、どうなるのか本当のところは分かりません。 なにせ彼は稀代の「策士」ですから、政権延命のためにどんな奇策を用意しているのか、 やすやすと見抜けるはずもありません。

一方、議席の上では惨敗して岡田代表が辞任した野党第1党の民主党は、 43歳の前原・新代表を選出し、世代交代が進みました。 (彼が9条2項否定の改憲論者であることは、やや気になるところではありますが) 菅・元代表と比べれば、国民に歓迎される選択だったと思われます。 これで、自民党の次期総裁も、ある程度「若さ」を求められることになりそうです。 政権交代は叶いませんでしたが、政界の世代交代を前へ進めたことに関しては、 国民にとって良いことだったと思われます。

さて、問題は憲法改正論議の行方ですが、 古い見方で恐縮ですが、改憲派は自民、公明、民主などで国会の大勢を占めており、 護憲派は僅かに共産、社民の両党だけと言って良い情勢ですから、 今後4年間に、いっそう改憲論議が進むことは間違いありません。 現に14日の各派協議会では、「憲法常任委員会」の設置で自民、公明、民主が基本合意し、 共産、社民が反対したと報道(時事通信など)されました。 その後、「憲法調査特別委員会」の新設で話がついたようですが、 いずれにしても、改憲手続きを定める「国民投票」法案を審議していくことになりました。 国会では改憲に向けて着々と大政翼賛会(あるいは、改憲大連立)が形成されつつあります。 しかし、国民世論の中には「9条を守れ!」と言う声も徐々に拡大していくと思われます。 今回の総選挙で共産、社民の両党に上積みされた100万票の有権者の願いは、 これに尽きるのではないかと思います。私も、その一人です。

朝日新聞山梨版(9月15日)によると、 「9条の会inやまなし」の世話人代表をする長坂町の主婦田嶋節枝さん(61)は 衆院解散後、小泉首相の「郵政民営化を問う総選挙は、将来の国民投票のリハーサルだ」 という趣旨の発言に嫌な感じを抱いた。 改憲を問う国民投票は早ければ09年にも実施される見通しだからだ。 総選挙では、耳に心地よい「改革」を短いことばで訴えた自民が大勝し、 政策を説明しようとした民主が無残に敗れた。 「改憲も『イエス』か『ノー』かで単純に問われたら、なすすべない。 自民躍進の結果を見てぞっとした」 来年5月、憲法をテーマにしたミュージカルを甲府市内で開催する。 ワンフレーズに惑わされない有権者を国民投票までに1人でも増やしたいと考えているそうです。 私も、「九条の会・栃木」の一員として、また「9条を広める会」の一員として、 大いに声を上げていきたいと思います。

「世論調査」について(2)

今井 康英 (2005年9月14日 19時41分)

9月11日に行われた総選挙で新たに衆議院の議席が確定したばかりなので、 今回は、再び「世論調査」について述べておきたいと思います。 私のブログでは、8月8日の「郵政解散」以降、 選挙関連の世論調査の記事は20件を超えています。 あくまでも結果論ですが、第44回総選挙の結果は、 これら報道各社による事前の世論調査で示されていた通りとなりました。 これで、少なくとも選挙関連の世論調査の信頼性には、 ある程度、肯定的な評価をしておかねばなりません。 但し、小選挙区制の特色が、これほど劇的に現れることは 想定外だったのではないかと思います。

私は、ここ2年ほどはテレビを見ないことにしています。 今回の「郵政解散」以来の「小泉劇場」を映像としては見ていません。 ニュースは、新聞(主にネット版)やラジオから情報を得ています。 新聞も捏造記事がないではありませんが、 テレビの「やらせ」よりは、まだマシだと思います。 それに新聞記事は自分の頭で考えながら読むことができます。 テレビで見せられた「小泉劇場」は、さぞかし面白かったのでしょう。 「小泉マジック」に国民の多くが幻惑されてしまったのではないかという気がします。

実は、今回の「郵政解散」は、遅くとも1年前から準備されていたという情報もあります。 (下野新聞9月13日30面「首相 1年前に解散決意 読み誤った反対派、民主」による) 小泉首相は、なかなかの「策士」であったと言わざるを得ません。 時事通信(8月31日)によると、 同日付の仏紙ルモンドは衆院選公示を受けて、 国際面トップで東京特派員による日本政治の特集記事を掲載、 小泉首相について「戦略家というより策士」と辛らつに批評した。 同紙は、郵政改革関連法案に反対した議員の選挙区に「刺客」を送り込むやり方は 日本の政治風土になかったことで、「少なくとも政局の流動化を導くだろう」と分析。その上で、「郵政法案の(参院での)否決は、 景気回復を除いて大きな成果がない小泉首相に対する国民の嫌気の表れなのに、 首相はこれを自民党内の造反議員のせいだとして、 国民に新たな白紙委任状を求めている」と指摘した。 また、景気の回復についても、 民間企業によるリストラ効果や中国経済台頭の恩恵にすぎないとの見方を示した。 さらに、小泉首相は「建設するよりも壊した方が多く、 戦略家というより策士、新秩序の創造者というよりも過渡期の政治家のように思われる」と結んでいる。

ここで思い起こすのは、学生時代に学んだ歴史の教訓です。 20世紀にはドイツにワイマール憲法下で、民主的にヒトラー政権が生まれました。 昭和の時代に大日本帝国には、大政翼賛会がありました。 今、21世紀の日本に「平和憲法」の下で、第2のヒトラー政権が生まれるのを目撃するとは、 思いも寄りませんでしたが、私にはそう見えます。 毎日新聞(9月12日)によると、 自民党の閣僚経験のあるベテラン議員も 「勝ったのにどうかと思うけど、怖い。ものが言えなくなってしまう。ファッショだよ」 と真顔で語ったそうです。

国民に郵政民営化の是非を問うだけの総選挙の結果、 自民党(296議席)と公明党(31議席)による「巨大与党」 (衆議院で3分の2以上の議席を占める)が誕生しました。 多分、首相本人もそこまでは予期していなかったと思われますが、 野党無用、参議院無用の平成大政翼賛会が出来てしまったかも知れません。 そうなると、小泉首相に全権委任したも同然です。 果たして、国民によって信任された郵政民営化法案の可決成立だけで、 彼の野望は止まるのでしょうか? 私には彼の本性はよく分かりませんが、 本格的な小泉「総統」政権へ変質するのではないかと危惧しています。

最新の世論調査(共同通信、9月13日)によると、 小泉内閣の支持率は59・1%で、不支持率は33・2%です。 自民党大勝、民主党惨敗という衆院選の結果には 「よかった」39・4%、「よくなかった」24・9%です。 9月21日召集予定の特別国会で成立を目指す郵政民営化法案の取り扱いについては 「慎重に議論すべきだ」53・4%、「同国会で成立させるべきだ」37・1%です。 「いつまで小泉首相に首相を続投してほしいか」との設問に 「来年9月の自民党総裁任期まで」47・2%、 「再来年夏の参院選まで」17・1%、「もっと長く」16・5%でした。 また、読売新聞(9月14日)によると、 小泉内閣の支持率は61・0%で、自民党圧勝の印象を聞いたところ、 「よかった」49%、「よくなかった」38%です。 自民党の獲得議席数については、「少ない方がよかった」56%、「ちょうどよい」33%です。 首相が数を背景に、強引な手法をとる不安を「感じる」63%、「感じない」30%でした。 これらのデータを見る限り、 国民世論はまだ小泉首相の独裁はありえないと判断しているようですが、 果たして彼の暴走を止められるのでしょうか? 日本国民が主権者としての力量を試されるのは、これからだと思われます。

「靖国参拝問題」について(2)

今井 康英 (2005年9月7日 16時03分)

今回は、再び「靖国参拝問題」について述べます。 このカテゴリには、4月27日以降、100件の記事を投稿しました。 今、総選挙で「郵政民営化」の是非だけを争点にしている小泉首相ですが、 国民に必ず実行すると公約したことはそれだけではありませんでした。 その一つが、8月15日に靖国神社を参拝することです。 しかし、この公約は、今年はまだ実行されていません。 首相にとっては、靖国参拝は「心の問題」だそうです。

共同通信(6月8日)によると、 自民党の野田毅元自治相(日中協会会長)は同日午後、 首相と官邸で会い、首相の靖国神社参拝について 「中国から言われて参拝をやめるのではなく、 国益を考えて大局的な判断をすれば、事態は改善する」と中止を求めた。 野田氏によると、首相は参拝問題には言及せず 「わたしは日中友好に熱心だ」と述べるにとどめた。 首相はこの後、靖国参拝について、官邸で記者団に 「きちんと説明している。国会の答弁でも、皆さんにも。 公約以前の問題、個人の心の問題ですから」と指摘。 中国などからの批判に対しては 「話せば分かる問題もあるし、分からない問題もある。 国内でも国外でも意見の対立があるが、 お互い友好な関係を築いていこうという精神が大事だと思う」と強調した。 (首相が自身の靖国参拝について、どれほど説明したのだろうか? 私には、相手に分かってもらおうと話をしたようには思えないが。)

産経新聞(8月16日)によると、 靖国参拝について首相はかねて、「一年に一回」とし、 今年5月の衆院予算委員会では「いつ行くか適切に判断する」と述べている。 いずれにしろ、今年中に参拝するのはまず間違いない。 首相は今春、周囲に 「靖国で譲れば日中関係が円滑にいくなんて考えるのは間違いだ。 靖国の後は教科書、尖閣諸島、石油ガス田…と次々に押し込んでくる」 と漏らしていたが、最近はこんな言い方をしている。 「(日本人の)心の問題に踏み込んだことを中国は後悔するだろう」

共同通信(9月4日)によると、 首相は同日午前、NHKと民放2社のテレビ討論番組に出演、 自らの靖国神社参拝について 「戦没者に対し追悼の念を表現する心の問題にまで介入されて良いのか」と述べ、 靖国参拝を批判する中韓両国に不快感を表明、独自の判断で参拝を続ける考えを示した。

私も、戦没者追悼が「心の問題」であることには同意しますが、 中国や韓国の人々の心に対する配慮に欠けているのではないかと思います。 日本人の「心の問題」だけを大事にして、 なぜアジア諸国の人々の「心の問題」を大事にしないのか? こんな態度では、いくら謝罪と反省の言葉を述べても、 アジア諸国から信頼されることはないと言わざるを得ません。 もはや「日米同盟」だけをやっていれば済む時代ではありません。 そんな時代錯誤な首相を退陣させるには、 今回の選挙は良いチャンスだと思うのですが、 果たして日本国民は、9月11日にどのような審判を下すのでしょうか。

「憲法改正問題」について(2)

今井 康英 (2005年8月31日 16時16分)

戦後60年の8月30日、第44回総選挙が公示されたので、今回は選挙について私見を述べておきたいと思います。 私のブログでは、主に「憲法改正問題」として扱っています。

小泉首相は今回の選挙を「郵政選挙」にしたいようだが、元衆議院議長(国民新党・綿貫民輔代表)が言うように 「郵政民営化法案に反対か、賛成か。こんな選挙はない。郵政だけが、国のすべてではない」と私も思う。 (もっとも、小泉首相も公示日の遊説第一声の最後のほうで、「もちろん郵政民営化だけが争点ではありません。 首相としての実績を皆さんに判断していただくのは当然です」と述べたようだ。) 総選挙なのだから、過去4年間の小泉内閣の内政外交の全般を評価し、少なくとも衆議院議員の任期に相当する今後4年間を任せうる次期政権の選択が問われなくてはならない。

本来、国民に郵政民営化法案の是非を問うだけなら、「国民投票」をやるべきだ。 IT時代なのだから、技術的には、何事でも簡単に国民投票で是非を決することも 出来るようになっているので、これからは益々そうすべきなのかもしれない。 今や携帯電話やパソコンでネット投票できる時代なのだから、 選挙や国民投票も、やろうと思えば随分簡単に出来るはずである。 これなら、わざわざ投票所に行く必要もないので、若者の投票も期待できる。 むしろ若い世代の方が、ダントツに投票率が高くなってしまうかもしれない。 また、海外旅行中でも投票出来るようにもなる。是非、実現してほしいものだ。

さて、 憲法改正問題については、自民党は「自主憲法」制定論、 公明党は「加憲」論、民主党は「創憲」論であるが、 いずれも第9条に関しては「改悪」論である。 (なお自民党を離党した国会議員などが急遽立ち上げた国民新党、新党日本は、 もともと自民党内の反小泉派であり、「改悪」論に組する立場に立つと思われる。) 一方、社民党、共産党は「護憲」論であり、第9条を守る立場に立っている。 私としては、第9条を守る側の社民党や共産党を応援したいところである。

ところで、マスコミなどでは、自民党と民主党の2大政党による「政権選択」が 最大の争点として喧伝されているが、これは正確ではない。 確かに、解散前の国会議員勢力からすれば、自前の政権として国民に 選択肢を提供しているのは両党であるかもしれないが、今回の選挙でも 第3の選択肢を提供している政党がある。それは共産党だ。 この党は、今回全国300の小選挙区に全員候補者を立ててはいないが、 国民の投票行動によっては、一気に過半数を制するだけの候補者は立てている。 共産党自身が「たしかな野党」と言うのだから仕方ないが、 本来は(可能性として)自前で「与党」にもなりうる第3の党であり、 万年野党であり続ける必要はない。 もっとも、そのためには、先ずこの党が国民多数に信用され、人気のある政党に 脱皮する必要があると思われる。私はそれを期待したい。

私は栃木1区在住であるが、小選挙区には自民、民主、共産の3人が立候補した。 事前に3人に質問メールを送り、2人から回答を得た。 また公開討論会(2人は参加、1人は不参加)にも行って、討論を聞いた。 その結果、私の主張を代弁してくれるに違いないと思える候補者がいたので、 今回はその人に投票しようと決めました。 ハッキリ言えば、死票となることを承知で、 今回の歴史的な総選挙の意味を考え、人類の宝とすべき平和憲法を守りたいという 一人の有権者の選択を明確に示しておきたいからである。

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