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GA(グローバル・アカデミー)のお知らせ

岩木 秀樹 (2010年2月13日 0時56分)

2009 年度の GA (グローバル・アカデミー) では、多数の皆さんにご参加いただき、充実した論議ができました。またお忙しい中、講義を引き受けていただきた講師の皆様には感謝いたします。2009 年度の GA (グローバル・アカデミー) は以下の通り行いました。 (敬称略)

第 1 回 2009 年 6 月 14 日 (日)
統一テーマ「ヨーロッパとアジアのアイデンティティと現在」
吉野良子 (創価大学助教) 「ヨーロッパ統合の過去・現在・未来」
岩木秀樹 (地球宇宙平和研究所理事) 「中東の 20 世紀ー文明の十字路トルコー」

第 2 回 2009 年 7 月 19 日 (日)
片山博文 (桜美林大学准教授) 「フレデリック・ソディのエコロジー経済学」
林亮 (創価大学教授) 「国際関係論は西欧近代を如何に超克するか」

第 3 回 2009 年 9 月 20 日 (日)
遠藤美純 (地球宇宙平和研究所理事) 「近代世界システムにおけるヨーロッパの台頭」
王元 (地球宇宙平和研究所理事) 「中国の周期的社会動乱の再考:古典周期の終焉について」

第 4 回 2009 年 10 月 18 日 (日)
汪鴻祥 (創価大学教授) 「現代中国外交の再考 -その変化、特徴、課題などについて-」
徳永雅博 (江東区議会議員) 「民主党政権の誕生の背景と今後について」

第 5 回 2009 年 11 月 15 日 (日)
岡田邦生 (ロシア NIS 経済研究所) 「日ロ経済関係の現状と展望」
木村英亮 (横浜国立大学名誉教授) 「ソ連経済における市場経済  中国の体制をどう見るか」

2010 年度も充実した GA (グローバル・アカデミー) を開催いたしたいと思っています。現時点では、2010 年 7 月、10 月、12 月の第二日曜日の午後の時間帯で、青葉区区民活動支援センターで行う予定です。講師を希望される方、お聞きしたい講師がいらっしゃる方、ぜひ岩木までお連絡ください。

第5回グローバル・アカデミー報告

岩木 秀樹 (2009年11月16日 11時12分)

2009 年 11 月 15 日 (日) 13:30 から 17:00 まで、横浜市青葉区区民活動支援センター会議室 2 ・ 3 で、第 5 回「グローバル・アカデミー  GA (地球大学院)」を行いました。 11 名が参加され、有意義な議論をすることが出来ました。

1 コマ目 (13:30-15:05) には岡田邦生さん (ロシア NIS 経済研究所) が「日ロ経済関係の現状と展望」を、 2 コマ目 (15:15-17:00) には木村英亮さん (横浜国立大学名誉教授) が「ソ連経済における市場経済  中国の体制をどう見るか」を発表しました。地球宇宙平和研究所では来年度にロシア訪問を予定しており、タイムリーかつ 2 人の違った視点の発表によりロシアを見ることができ、興味深いものとなりました。

岡田さんの発表では、細かな数字や図表を用い、ロシアの現状と今後がわかりやすくパワーポイントを使用して報告されました。ロシア経済における総輸出額の 65% をエネルギーが占めており、近年まで原油高を背景に高い成長率を誇っていました。リーマン・ショック以後は、他の資本主義諸国と同様に経済的停滞を経験したが、依然として産出量も埋蔵量も豊富な資源大国であることに変わりはない。日本からロシアへの輸出は自動車が急激に増えており、日本への輸入は石油が増大している。今後、サハリンや北東アジア地域のパイプライン設置により、さらなる日ロ関係の緊密化が望まれる。

木村さんの発表では、これまでのソ連史研究に触れながら、市場経済という観点からソ連の社会主義を再考し、弱肉強食の新自由主義へのオルタナティブを提供するものでした。ソ連史においても市場経済はすでに試みられており、最初はネップによるもの、第二は利潤導入などのコスイギン改革、第三はゴルバチョフ改革であった。ソ連邦の崩壊は一国社会主義の破綻であり、本来社会主義とは国際的なものであり、またそれが経済状況にも適していることは様々に議論されてきた。ソ連の社会主義を当時の国際的・国内的状況を踏まえて理解することが大事であり、社会主義経済 70 年の経験を今後も貴重な財産とすべきであろう。

お二人の発表は、かたやロシアのあるべき資本主義の大きな可能性を示すもの、かたや社会主義経済の有効性とその遺産の正当な継承を訴えるものであり、一見水と油と考えられがちである。しかしいずれも、現在の金が金を生む行き過ぎた新自由主義経済を乗り越える第三の道を志向しているように思われた。質問や意見もそのそうなものが中心だった。人々の自由な意志や労働を保証しながら、生産力を高めつつ、環境にも配慮し、公正で公平な社会のための福祉・教育・医療等のセイフティーネットを強くしていく社会が望まれるだろう。またそれらは時代的・社会的条件の中で行われることも心に留めなければならない。

今年度から始まったグローバル・アカデミーも無事 5 回終了することができました。お忙しい中報告を引き受けていただいた講師の皆さん、また議論に加わっていただいた参加者の皆さん、大変有り難うございました。来年度へ向けて、ぜひ様々なご意見をお寄せください。個人的には、もっと議論の時間をとる、テーマを決めて行う、身近な地域で複数のグローバル・アカデミーを行うなどを考えております。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

第4回グローバル・アカデミー報告

岩木 秀樹 (2009年10月20日 13時48分)

2009 年 10 月 18 日 (日) 13:30 から 16:40 まで、横浜市青葉区区民活動支援センター会議室 2・3 で、第 4 回「グローバル・アカデミー GA (地球大学院) 」を行いました。会員でない方が 4 名も参加され、合計 14 名の方々によって、有意義な議論をすることが出来ました。

1 コマ目 (13:30-15:00) には汪鴻祥 (創価大学教授) さんが「現代中国外交の再考 ―その変化、特徴、課題などについて―」を、 2 コマ目 (15:10-16: 40) には徳永雅博 (江東区議会議員) さんが「民主党政権の誕生の背景と今後について」を発表しました。いずれのテーマも、中華人民共和国建国 60 周年と日本における政権交代という非常にタイムリーかつ興味深いテーマでした。

汪さんの発表では、まず建国以来 60 年間の外交の変化が論じられ、半植民地国家から独立自主国家へ、革命の外交から平和の外交等への変遷が概観された。さらに最近の中国がグローバル化の受益者、国際秩序の建設者になったことも指摘された。その後、中国外交の特徴として、目標・周期・理念・風格・形態・構図に分けて分析され、最後に今後の課題として、「調和世界」の構築や周辺・国境問題の処理、さらに国際貢献の向上などの重要性を指摘された。非常にわかりやすい報告で中国外交 60 年を総括的に概観でき、今後の中国の行く末をより見通すことができたと思います。

徳永さんの発表では、まず 2009 年 8 月 30 日の衆議院選挙結果の特徴として、政権交代の実現、自由な言論環境の誕生、官僚中心からの脱却、閣僚への労働者の代表の就任を挙げ、また政権交代の背景として、新自由主義への怒りと二大政党制への期待があると指摘された。さらに政権交代の社会的経済的背景として、所得の低下、労働環境の悪化、自殺者の増大、利益誘導型政治の限界等を考察された。民主党が目指すものは、政治主導の地域主権国家であり、従来の 55 年体制によるイデオロギー論争から生活者の視点へのパラダイムシフトであると述べられた。細かい数字に裏付けられた説得的な発表であり、今後の日本の将来を指し示すものであったと思います。

第3回グローバル・アカデミー報告

岩木 秀樹 (2009年9月21日 1時59分)

2009 年 9 月 20 日 (日) 13:30 から 16:40 まで、横浜市青葉区区民活動支援センター会議室 1 で、第 3 回「グローバル・アカデミー GA (地球大学院) 」を行いました。 10 名の方が参加され、様々な議論をすることが出来ました。

1 コマ目 (13:40−15:00) には遠藤美純 (地球宇宙平和研究所理事) さんが「近代世界システムにおけるヨーロッパの台頭」を、2 コマ目 (15:10−16: 40) には王元 (地球宇宙平和研究所理事) さんが「中国の周期的社会動乱の再考:古典周期の終焉について」を発表した。

遠藤さんの発表では、ヨーロッパの発展において、ヨーロッパは特殊であるとの近代化論とヨーロッパを相対化する従属論に分けて、様々の研究者の論点をわかりやすくまとめ、1800 年が大きな画期であり、その時点で世界が一つになり、近代世界システムが構築されたことを考察した。その際、交通・通信などの科学技術とグローバリゼーションとの関係が非常に重要となることを指摘した。討論では、1492 年のコロンブスのアメリカ大陸到達や 1800 年頃の技術革新は大きな変革をもたらしたこと、世界システム論では戦争の問題が捨象されていること、米国をどう位置づけるか、ヨーロッパの台頭要因などが議論された。

王さんの発表では、1911 年からの現代中国における社会動乱の周期を 8 年から 1 2 年として、現代中国の事件を説明し、動乱の担い手として知識人や大学生に着目し、社会的圧力の高まりが一定の周期性にしたがって爆発することを考察した。その論拠として、様々の研究者や現代史の重大事件、また経済学や社会学の分析方法も用い、さらに自然災害や 5 年おきに開催される党大会まで視野を広げて説明された。現在、中国社会の成熟や経済発展、大学生の大衆化やノンポリ化などにより、この周期も最近は変容しつつあることが論じられた。討論では、大学生の進学率が相当高くなったことによる大学生の変化、動乱には外国からの武力侵攻も含めるのかといった動乱の定義の問題、時期区分の問題と「古典周期」という用語の妥当性、8 年から 12 年サイクルの論拠としての大学生活 4 年間についてなどが論議された。

いつも思うのであるが、発表をし議論をすることの重要性を感じる。ややもすれば自分の頭のなかで完結していると思えることが、他者の意見によりそれが崩され、大いに参考になることがある。まさにグローバル・アカデミーもそのような機会のひとつであろう。最近あるところで読んだものに、「本当の教養ある人とは、問答無用を否定する人である」というのがあった。対話や議論なきところに、文化や思想はないであろう。これからも大いに、権力関係や利害関係がない空間で言いたいことを言い合いたいと思う。今後とも、そんなグローバル・アカデミーにしていきたいと思っている。

第2回グローバル・アカデミー報告

岩木 秀樹 (2009年7月20日 18時54分)

2009 年 7 月 19 日 (日) 13:40 から 16:40 まで、横浜市青葉区区民活動支援センター会議室 4 で、第 2 回「グローバル・アカデミー  GA (地球大学院) 」を行いました。 8 名の方が参加され、白熱した議論をすることが出来ました。

1 コマ目 (13:40-15:00) には片山博文 (桜美林大学准教授) さんが「フレデリック・ソディのエコロジー経済学」を、 2 コマ目 (15:10-16:40) には林亮 (創価大学教授) さんが「国際関係論は西欧近代を如何に超克するか」を発表しました。

片山さんの発表では、環境・エネルギー・金融危機の原因が現在の貨幣制度にあるとしたソディーに着目し、経済におけるエネルギー問題とエントロピー問題の重要性を指摘しました。市場や貨幣中心の経済ではなく、貨幣の肥大化を防ぎ、貨幣と商品を等価なものと考え、共同体が所有していない仮想的な富を制限する新しい経済学の可能性を考察しました。

経済学に疎い私は片山さんの発表に学ぶことが多く、現在の弱肉強食の経済体制を根源から見直す機会になりました。特に次のような議論が非常に示唆に富んでいました。永続的成長が続くことを前提とした市場経済はエントロピー法則を無視している。すべての生命活動の基盤は太陽であり、その恩恵を直接受けている植物こそが真の資本家である。物々交換から金属貨幣、紙幣へ、さらにバーチャルな信用経済へと進む現在であるが、実体的裏付けがないから暴走する可能性が増える。エントロピーは極大化する方向であるが、生命のみが低エントロピーを維持しているということは、生命に何かが隠されているからである。これらの議論は非常に新鮮で、今後の新しい経済のあり方を根本から問題提起するものでした。

林さんの発表では、西欧近代が生んだ現在の諸矛盾を解決すべく、西欧近代の思考様式を紹介し、西欧の脱中心化を図るとともに、パラダイム転換の必要性を考察しました。サイード、ウォーラステイン、リヴァシーズ、フランクなど広範な論者を批判的に摂取しながら、支配的でも強制的でもない知のあり方を模索し、西欧中心の国際関係論から地球国際関係論へパラダイムシフトすべきであるとしました。

林さんの発表後の議論は非常に白熱し、西欧近代における侵略や植民地化などの「負」の歴史と、西欧近代がもたらした「普遍的な」人権や民主概念との対立関係で論議は盛り上がりました。「負」と「正」、「特殊」と「普遍」のどちらかであるといった二項対立ではないし、一方的にどちらかを否定は出来ないですが、どちらを重視するかで議論となりました。人権、民主、平和概念は現在ほぼ「普遍」概念として日常的には使用されているが、そのイデオロギー性を暴露することも重要であろう。しかし、ある一定の普遍性があることにも留意が必要であろう。たらいの水と一緒に赤子まで流してしまっては、今までの先人たちの努力が水の泡となってしまう恐れもある。いずれにしても今後の精緻な研究が待たれよう。

自由に議論し、その後ビールを片手にさらに深めていく、このような知的サロンこそが今、求められているのではないだろうか。家庭、会社、大学、様々な組織でも、このように忌憚なく自由にしゃべれる場はそれほど多いとは思えない。今後も自由に白熱した議論をするグローバル・アカデミー GA (地球大学院) にしていきたい。

第1回グローバル・アカデミーの報告

岩木 秀樹 (2009年6月16日 19時08分)

2009 年 6 月 14 日 (日) 13:30 から 17:10 まで、横浜市青葉区区民活動支援センター会議室 1 で、第 1 回「グローバル・アカデミー  GA (地球大学院)」を開校いたしました。お忙しい中、9 名の方が参加され、かなり時間も超過するほど、活発な議論をすることが出来ました。また何名かは近くで懇親会をし、そこでも様々な論議を交わすことが出来ました。 GA 担当者として、深く感謝いたします。

今回は統一テーマ「ヨーロッパとアジアのアイデンティティと現在」を掲げ、1 コマ目 (13:30-15:10) には吉野良子 (創価大学助教) さんが「ヨーロッパ統合の過去・現在・未来」を、2 コマ目 (15:20-17:10) には岩木秀樹 (地球宇宙平和研究所理事) が「中東の 20 世紀 ー文明の十字路トルコー」を発表いたしました。

吉野さんの発表は、パワーポイントを使用し、地図や表を多用し、ヴィジュアル的にもとてもわかりやすいものでした。まずヨーロッパの過去について、ヨーロッパ概念やヨーロッパ統合の歴史や思想を説明されました。その後でヨーロッパ統合の現在として、不戦共同体構築からグローバルパワーへと位置づけ EU の現状を指摘し、ネイションへの愛着度が次第に低減していることを示しました。最後に統合の未来についての展望と課題を述べ、トルコの加盟問題にも触れながら、今後「他者」をどう取り込むのか、ヨーロピアン・エンパイアとなっていくのかどうかが問われているとしました。

岩木の発表では、帝国から国民国家へ再編するオスマン帝国の共存と対立の歴史を見ていき、20 世紀初頭のオスマン概念の創出と変容を転換期としてのバルカン戦争を中心に考察しました。 20 世紀の中東を概観した後、トルコの EU 加盟の歴史と現状を説明し、今後どのような新しい共同体を作るのか、トルコ・アイデンティティをどう再編するのかが課題になるとしました。

いずれの発表についても、様々な質問や意見が出て、活発な議論が展開されました。特にヨーロッパ概念を巡る問題やトルコの EU 加盟問題、さらに他の地域との比較などが論議されました。

吉野さんがトルコの EU 加盟にまで踏み込んで発表していただいたおかげで、かなり議論がかみ合いました。また参加者から 2 コマ構成でかなり長い時間かけられたことはよかったとの声が聞けました。さらに議論の時間を合わせて 80 分ほど取ったことは双方向のコミュニケーションができ、参加者が単なる聴衆ではなく、主体的な討論者になれたのではないかと思います。

今回、私は GA の担当者兼発表者でありましたが、非常に楽しく、かつ勉強になりました。参加者の方々もそのような思いを持っていただければ望外の喜びであり、今後も充実した GA にしていきたいと考えています。発表希望者を募集しておりますので、ぜひ私までご連絡ください。

理事会報告

岩木 秀樹 (2009年4月19日 23時02分)

2009 年 4 月 19 日 (日) 午後 1 時から 3 時まで、横浜市青葉区区民活動支援センター会議室 1 で、第 4 期理事会第 10 回会議が開催されました。出席理事は書面評決者も含めて 12 名で、オブザーバーは 1 名でした。

まず 2008 年度事業報告案と収支報告案について説明があり、監査が無事終了したことが報告されました。会費未納率を減らすことや、研究所の財政の建て直しなどの意見が出ました。

次に、 2009 年度事業計画案と収支予算案について説明があり、赤字体質から脱却するため、事務局人件費を無くし、研究所の仕事を分担し、謝礼等も削減することになりました。できるだけ会費収入で事業を運営していき、短期借入金を返済していくことになりました。寄付金への依存や寄付金への対価の問題、所報への広告掲載なども話し合われました。また新たに講座「グローバル・アカデミー」を行うなど、より活発に研究・教育活動を行うことになりました。

第 5 期 (2009 年 7 月 1 日-2011 年 6 月 30 日) 役員選考委員会の選出について話し合われ、次の方が役員選考委員になりました。 (50 音順、敬称略)

委員長  中西治
委員  岩木秀樹、遠藤美純、王元、汪鴻祥、竹田邦彦、渡辺宏

今後、選考委員会より会員に対して役員への立候補を募り、役員を決めていくことになりました。

5 月 17 日の総会において「 20 世紀の再検討と 21 世紀の現在」とのテーマで総会記念シンポジウムを行うことになり、現在、会員を中心に報告者を募っております。

沖縄訪問報告 「沖縄と日本と私と」

岩木 秀樹 (2009年3月7日 1時13分)

平和祈念公園より

よく、「沖縄問題」と言われる。しかし沖縄が問題なのではなく、現実は「日本問題」であり、「アメリカ問題」である。この「沖縄問題」という言い方はおかしいと思う。

私は中東イスラームを研究対象としている。最近は少し様相は異なってきたが、歴史的に中東に対して、日本は良いことも悪いこともしておらず、いわば無関係の関係であった。だから研究は「楽で」あった。しかし沖縄はそうではない。日本の歴史と沖縄の歴史は密接で交錯しており、加害と被害の関係は現在まで複雑につながっており、自分の歴史観が大きく問われることになる。

今回の沖縄訪問を通して、沖縄をみることで、日本をかえりみることになり、さらにアメリカの世界戦略まで考える必要があり、ひいては自分を見つめ直す機会になった。

以下に日程と会計報告を書いたが、それに沿って簡単に沖縄訪問の印象を書きたい。

2月28日(土)に沖縄に降り立った。東京では雪が降っていたが、沖縄は初夏であり、半袖でも汗ばむ陽気であった。日本は面積では小さな国だが、南北の距離を考えると変化に富む多様な国かもしれない。

佐喜眞美術館では、丸木位里・俊さんの沖縄戦の怒りの絵を見た。その巨大さと反戦の迫力に圧倒され、学生の時に見たゲルニカを彷彿とさせた。沖縄国際大学の黒こげになった木を見て、また校舎から間近にある普天間基地を見て、これほどすぐそばに基地があることを改めて知った。事故は起こるべくして起こった。今こうしている時にも、いつヘリコプターが落ちてきてもおかしくないであろう。

その後、仲間理さんと城間康之さんと懇談・懇親会を行った。沖縄の人々の平和への強い意志を感じた。私が意見を率直に吐露したことに対して、共感していただき、勇気づけられた。今後の沖縄の大学との交流が進む一歩になったように思う。また沖縄料理もとてもおいしく、安く、沖縄に行ったときにはまた訪れてみたい。

その後、ホテルに戻った。ホテルは、新都心のおもろまちにあり、便利できれいで快適であった。新都心はきれいに区画整理され、大きな建物が多かった。北谷に次いで、新しい沖縄の中心地になりそうだ。

3月1日(日)にはまず旧海軍司令部壕に行った。ところで、沖縄は車社会であり、私たちもほとんどタクシーで移動した。移動中にタクシーの運転手さんから色々な話を聞くのが楽しく、勉強になった。ある運転手さんは、沖縄の窮状を訴えて自決をした海軍の大田少将にはある程度の共感を寄せていたのに対して、第32軍の司令官である牛島陸軍中将に対しては、そのようなものは感じていないようであった。しかし壕の中の大田少将の司令官室だけは入ることができず、そこには仏像のような物が置かれていた。大田少将のみ特別扱いで、やや神聖化されていた。

沖縄県平和祈念資料館は新しくできた資料館で、ここでは平和の尊さや戦争の悲惨さが視覚にも訴える形で、非常に工夫されていた。ただ私の見落としかもしれないが、朝鮮半島等から軍夫や従軍「慰安婦」として沖縄に強制連行された人々は約1万人もいたが、それについての記述はあまり見られなかったことは残念であった。

その後、平和祈念公園の平和の礎も見た。ここには敵味方、国籍、軍人、民間人を問わず、沖縄戦における戦没者24万人の名前が刻まれている。戦争を賛美し、勝者の軍人を顕彰する靖国神社とは明らかに異なる。しかし、平和の礎に初めて来て、問題はそれほど単純ではないことを知った。やった方もやられた方もいっしょになっているということは、ドイツでいえば、ヒトラーもアンネフランクもいっしょに刻印されているということだろう。多くの朝鮮半島、台湾出身の人々はここに名前が刻まれることを良しとせず、空白の刻銘板が多く残っている。大和、沖縄、朝鮮・台湾という帝国主義時代の三層構造を改めて考えさせられた。

魂魄の塔は1946年に建立されたものであり、沖縄戦で亡くなった沖縄県民のための塔である。近くにも他の県の塔があるが、中には「よく戦った」という顕彰施設も存在する。

その後、ひめゆりの塔やひめゆり平和祈念資料館を訪問した。平和の尊さを語り継ぐひめゆりの人々のたゆまぬ努力には脱帽する。ただ周りは観光地化され、酒に酔った赤ら顔のおじさんたちの団体が来ていたが、資料館の名前の通り平和祈念が念頭にあるか疑問に思った。また映画の影響もあろうが、ひめゆり以外でも多くの若い人々が亡くなったが、他の塔は見向きもされず、ここに大挙として人が押し寄せることに、ジェンダー化された観光地としての記念碑を若干感じた。

県立博物館は新しくできたもので、沖縄の自然・歴史・文化がとてもよく分かり、見やすい博物館だった。その後、観光客のメッカである国際通りを散策した。「鉄の暴風」から立ち直り、これほどまでに栄えるとはまさに奇跡のワンマイルであろう。

3月2日(月)は、道の駅かでなにある嘉手納町学習展示室を見た。またそこから嘉手納飛行場が一望でき、その広大さに驚いた。返還されても汚染物質等で農地にはならず、住宅地にもならないなら、いっそアメリカにも儲けさせるためにも、沖縄ディズニーランドをここに造ったらとタクシーの運転手さんに言ったら、苦笑された。

チビチリガマは「強制集団死」が行われた場所であり、碑文には老人と女性と子どもの名前が刻まれていた。親が子供を殺すとはこれほどの地獄がこの世にあるのか。皇民化教育を受けていた若い母親ほど「貞節」を守るためにと「自決」しなければならないとの強迫観念にとらわれていたという。

2000年のサミット開場であった万国津梁館に行き、その後、ちゅら海水族館でジンベイザメやマンタに会い、しばしほっとするひとときを持った。

帰りには、北谷のアメリカン・ビレッジを見学し、夕食も兼ねながら研究会をした。発表者とテーマは以下の通りである。

  • 江尻友昭「沖縄の基地の価値と意義」
  • 岩木秀樹「『沖縄問題』と『日本問題』-沖縄の歴史・基地・現在-」
  • 玉井秀樹「海兵隊グアム移転をどう評価するか-在日米軍再編ロードマップの意味を考える」

3月3日(火)、ホテルをチェックアウトした後、沖縄県知事公室基地対策課の方から基地問題の現状と課題についてレクチャーを受けた。様々な資料を通して現状を教えていただいた。私も率直に色々な質問や意見を述べた。基地が無くならない理由、米兵の犯罪原因、これからの県としての取り組み、アメリカの世界戦略と沖縄などの問題が議論された。これまでの沖縄訪問の締めくくりとしてふさわしいものになったと思う。

その後、首里城を見学し、琉球の歴史に触れ、後ろ髪を引かれる思いをしながらも、初夏の沖縄から雪降る東京に向かった。

沖縄訪問を前にして書籍を読み、また現地を訪れて、改めて沖縄の批判精神や非暴力平和思考、国家を乗り越えるメンタリティやネットワークを強く感じた。

また分断される沖縄もかいま見ることができた。基地反対の声を封じ込めるために振興策という名の札束をばらまく中央政府、「強制集団死」させられた人々を援護法という名のこれまた札束でほおをたたき、「軍に協力するために死んだ」と歴史も塗り替える手法がある。歴史認識においても基地問題に関しても、沖縄が分断されているように感じた。だが分断されながらも基地の存在を無条件に肯定する人はほとんどいないことも強調しなければならないであろう。

また天皇制存続と憲法9条の存在と沖縄の基地は密接な関係があるということも今回知ることができた。天皇制維持のためには、諸外国の批判をかわすために非武装国家となる必要があり、それでは侵略の不安があるので、日本の安全保障のために沖縄に基地をおくということであった。もちろん9条は人類の平和希求の到達点ではあるが、このように沖縄が犠牲となったことも忘れてはならないであろう。

最後に、沖縄の自己批判にも感銘を深くした。沖縄は単なる被害者ではなく、ベトナムや最近では中東地域に向けて発進する基地であり、加害者でもあることも自覚している。さらに日本のことを本土という言い方をせず、どの土地でも住んでいる人にとっては、そこが本土である。だから沖縄島も沖縄本土とは呼ばないとの主張にも心を打たれた。このような沖縄に息づく自己批判、批判精神、平和思考、ポスト国家思考を私も体現しながら、「命こそ宝」の思想を広めていきたい。

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研究会の発表者募集

岩木 秀樹 (2009年1月26日 15時41分)

下記のように、「平和の歴史・思想・現在」研究会と沖縄訪問結団式を開催いたします。また研究会後、懇親会も予定しております。

つきましては研究会での発表者を募集しております。発表時間は30分程度で、テーマは沖縄問題以外でも結構です。

希望者は1月31日までに、岩木までご連絡ください。

平和の歴史・思想・現在」研究会・沖縄訪問結団式

日時:2月15日(日)午後3時から5時まで
場所:八王子市市民活動支援センター 会議室

京王八王子駅とJR八王子駅の間にあり、八王子保健所の向かいのビルの5階八王子市市民活動支援センター
〒192-0083 八王子市旭町12番1号 ファルマ802ビル 5階
電話:042-646-1577
http://www.shiminkatudo-hachioji.jp/shien-center/

参加費:会員無料 非会員300円

合同研究会のお知らせ

岩木 秀樹 (2008年12月12日 19時00分)

年末押し迫ってではありますが、下記のように、合同研究会を開催いたします。その後、忘年会を兼ねた懇親会も行います。八王子の奥で大変交通の便が悪いですが、是非皆様のお越しをお待ちいたしております。学生も何人かくると思いますので、気楽にお越しください。なお懇親会の準備がありますので、できれば出席予定者はご一報いただけるとうれしいです。

「平和の歴史・思想・現在」「中東イスラーム」合同研究会・懇親会

日時:2008年12月23日(火・祝日)
午後2時から3時半まで(研究会)
午後3時半から5時まで(懇親会)

場所:岩木秀樹宅
報告者:遠藤美純「2000年契機のグローバリゼーションとマイノリティの可能性(仮)」
岩木秀樹「中東イスラームの過去・現在・未来 −20世紀の再検討序論−(仮)」

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