宙(そら)読む月日 (2) ビッグ・ヒストリー・プロジェクト始まる

のぶおパレットつじむら

ビッグ・ヒストリー・プロジェクト Big History Project (*4) のウェブサイトにはこうあります。

すべてのものには歴史があります。どの人にも、植物にも、動物にも、物体にも、わたしたちの惑星にも、そして、宇宙の全体にも。

それぞれの歴史は、貴重な見識をくれます。それらが合わさると、さらに多くを明らかにしてくれます。ビッグ・ヒストリーは、多くの科学的・歴史的学問分野から得られた証拠と見識を、単一の手にとりやすい起源の物語に編み上げます。これは、わたしたちは何者か、どのようにしてここまで来たのか、周囲のあらゆるものとどのように結びついているのか、どこへ向かおうとしているのか、を探求するものです。

ビッグ・ヒストリー・プロジェクトは、高校生のいやます向学心と学習能力を育むべく献身します。ビル・ゲイツとデイヴィッド・クリスチャンによって始められた当プロジェクトの目標は、ビッグ・ヒストリーが、世界中のできるだけ多くの生徒に教えられるようにすることです。

ここで「単一の」と言っているのは、教育の元となる物語が、それ自体整合性をもった一個の物語として成り立つようにする、という意味で、ビッグ・ヒストリーそのものが単一であるべき、という意味ではありません。

クリスチャンさんが初めてビッグ・ヒストリーの講義を行ったのは1989年、オーストラリアのマッコーリー大学 Macquarie University においてでした。それから15年の歳月を経てまとめられた『時間の地図:ビッグ・ヒストリー入門』では、このように書かれています。(*5

わたしは本書をもって、歴史の、また一般に知の、より統一的なヴィジョンを構築する、という一段と大きな企てへ寄与したいと考えています。そのような企てが困難であることは、十分承知しています。しかし、それは実行可能だし、重要なことだと信じています。だからこそ、いずれ他の人たちが一段とうまくやってくれることを期待しつつ、やってみる価値があるのです。また、現代の創世神話 〔ビッグ・ヒストリーのこと:引用者注〕 が、過去のどの社会の創世神話よりも、豊かで美しいとわかる日が来ることを信じてやみません。これは語るには不完全でも、語る価値のある物語なのです。

他の様々な人びとの物語が自分を乗り越えることを望みつつ、まずは自分がそのための足がかりを築くんだ、という決意表明です。
ここで、誤解のないよう申し添えておくと、ビッグ・ヒストリーの名を冠した本を初めて世に問うたのは、フレット・スピール Fred Spier さんで、クリスチャンさんではありません。(*6

ともかく、大きな絵を描く。人間ですから、現在の水準の科学をもとにしても、いや自分はそう描かないとか、様々な絵を描きたがることでしょう。また、科学の進歩は日進月歩ですから、新たな発見により、絵が描きかえられることも何度もあるでしょう。すると、現時点での、しかもワンノブゼム one of them 的なひとひらの絵に価値がないかというと、そうではありません。知的誠実さをもって渾身で仕上げた大きな絵は、たとい後で誤認だということになったとしても、次の時代の絵の下絵として生きていくからです。

いずれビッグ・ヒストリーは、宇宙飛行士が宇宙へ出る前の必修科目となるでしょう。また、いつの日か異星人と出会うとしたら、初めに自己紹介として彼/彼女ら(性がどのように分かれているかもわかりませんよね)に手渡されるのは、ビッグ・ヒストリーになることでしょう。


*4) ビッグ・ヒストリー・プロジェクト Big History Project
ウェブサイト http://www.bighistoryproject.com/
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http://twitter.com/BigHstryProject
フェイスブック http://www.facebook.com/pages/Big-History-Project/119783268094729
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*5) David Christian, Maps of Time: An Introduction to Big History (Berkeley and Los Angeles: University of California Press, 2004), p. 5.

*6) Fred Spier, The Structure of Big History: From the Big Bang until Today (Amsterdam: Amsterdam University Press, 1996).