最近の国際関係学の動向と論争 ―おわりに

岩木 秀樹

21世紀に入って、平和と幸福を希求する国際関係学の業績が非常に増えている。特に権力、暴力、正義、主権などの既存の概念を批判する研究が注目されてきている。

米国が国際関係学を今まで牽引してきたが、政治と学問の癒着、非自省的現実主義、非主流的学問の疎外、覇権地位による権威主義的研究などが見受けられ、転換を迫られている。英国の国際関係学は、伝統的に哲学や歴史を重視し、一定の規範や制度により国際社会存立の可能性を志向している。日本における国際関係学は理論・歴史・地域の三位一体で行われ、良くも悪くも米国の影響をそれほど受けることなく発展してきた。米国流の現実主義ではなく、脱実証主義を受け入れる土壌が出来ており、日本における独自の国際関係学の構築が期待されよう。

本稿では構築主義、ポストモダン理論、批判理論、ジェンダー理論、オリエンタリズムなどを含んだ緩やかな包括的概念として脱実証主義という用語を使用した。脱実証主義は本質主義や素朴な客観主義と対峙するものとして、国際関係学の外部から入ってきたものであった。特に米国における行動科学主義、現実主義は権力や国家を所与のものと認識し、変化や動態を重視しなかった。さらに客観・中立・科学の名の下に自己省察をせず、権力と知の共犯関係を促したのであった。それに対して脱実証主義は、国際関係学が「米国の・男性の・白人の・豊かな人間の・先進国の・人間中心の」学問であったことを暴露したのである。脱実証主義は雑多なものの集合にすぎないが、既存の理論への批判、イデオロギーの可視化、権力と知の関係の解明に一定の貢献が出来よう。新しい国際関係学の一端を脱実証主義が担っているのである。