5. 地球史から宇宙地球史へ ―コスモナイゼーションとグローバリゼーション

中西 治

英国の歴史家クロスレイは2008年に『地球史とは何か(What is Global History?)』を出版した。彼女は英国の歴史家ハーバート・ジョージ・ウェルズが1901年に初版を出版した『歴史のあらまし(Outline of History)(邦訳:世界史大系)』を「大きな影響力のある地球史(Global History)」であったと指摘している。

当時のイングランド人の多くは歴史を学んでおらず、知っていてもせいぜいイングランドの簡単な歴史ぐらいであったという。そのような時代にウェルズは「ユニバーサル・ヒストリー(Universal History)」の考えを提起したのであった。

20世紀は各国史だけではなく、世界史が花盛りであった。21世紀はビッグバン以来の「大きな歴史(Big History)」や旧約聖書のような地球誕生以来の「偉大な物語(Great Story)」の時代である。その兆しはすでに1970年代から1990年代にかけて現れていた。

ウォーラーステインは1974年から1989年にかけて三部から成る『近代世界システム:農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立(The Modern World-System:Capitalist Agriculture and the Origins of the European World-Economy)』を世に問い、ヨーロッパ中心の世界システム論を展開した。

ダイアモンドは1997年に出版した『銃・病原菌・鉄(Guns, Germs, and Steel:The Fates of Human Societies)』でヨーロッパが世界の中心となったのは19世紀以降であって、それ以前はアフリカ、アジア・オセアニア、イスラーム地域、中国であったことを指摘した。

フランクは1998年に『リオリエント(ReOrient)』を出し、中国をはじめオリエント(東洋・目標・方向)を見直すように主張した。

クロスレイはウェルズからフランクにいたる数々の業績を整理・検討し、「幅の広い、包括的な、総合的な展望を示そうとする歴史はすべてグローバル・ヒストリーである」としている。

地球は宇宙のなかに存在している。地球の地表には三つの圏がある。

第一は地表に近い地下から地球を取り巻く大気圏を含む広大な「地圏」である。

第二は生命をもつ動植物の「生物圏」である。

第三は精神や社会関係の分野である「社会圏」である。

これらの3圏は一つのまとまった「地・生物・社会システム」を形成し、そこには密接な相互交流と相互依存の関係が存在する。
しかも、この3圏は宇宙全体と密接に関係しており、宇宙と地球の3圏は相互に影響を与え合っている。

宇宙からは地球に太陽エネルギーや宇宙放射線が注がれ、いん石や宇宙塵やその他の物質が落ちてきている。他方、地球から宇宙に向けてエネルギーが拡散し、人間によって発せられる無線電波や電磁気、その他の放射線、および、信号が送られている。

20世紀後半には人工衛星が宇宙空間に打ち上げられ、月面に人間が立った。これまでに3万個以上の情報通信衛星が打ち上げられ、現に1万個以上のこれらの物体が地球周辺の宇宙空間を飛んでいる。宇宙空間に宇宙ステーションが設置され、人間が長期にわたってそこに滞在し、調査・研究をしている。太陽系の大小の惑星に向けて探査機が飛行し、帰還し始めている。

このように地球上の諸問題は宇宙全体と繋がっており、それを地球史的観点からだけでなく、宇宙地球史的な観点からも検討することが必要となっている。地球史から宇宙地球史への発展が必要である。

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