はじめに ―神が天地万物を創造したのか ―コスモナイゼーションとグローバリゼーション

中西 治

「グローバリゼーション (Globalization)」と言われ始めてからもう久しい。私はこれを「地球一体化」と訳している。私は「宇宙一体化」の意味で「コスモナイゼーション (Cosmonization)」という用語を使っている。これは私 (中西治) の造語である。

グローバリゼーションとは何であり、いつ始まったのか。コスモナイゼーションとは何であり、いつ始まったのか。このことを考えるのが今回の講義の主題である。

3000年ほど前から語り継がれてきたといわれている旧約聖書は冒頭の「創世記」で次のように述べている。

初めに神は天地を創造された。地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊がが水の面を動いていた。神は言われた。「光あれ。」こうして光があった。神は光を見て、良しとされた。神は光と闇を分け、光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。

このように旧約聖書は宇宙と地球の始まりについて、神が天地を創造し、光をつくり、昼と夜を分けたとし、それを神の第一日目の仕事、宇宙と地球の第一日としている。

第二日に神は大空をつくり、天と呼んだ。

第三日に神は天の下の水を一つのところに集め、そこを海と呼び、乾いたところを地と呼び、地に草と果樹を芽生えさせた。

第四日に神は天の大空に二つの光る物をつくり、大きな光る物=太陽に昼を治めさせ、小さな光る物=星に夜を治めさせた。

第五日に神は水のなかに生き物をつくり、地の上と天の大空に鳥をつくった。

第六日に神は地にそれぞれの生き物、家畜、這うもの、地の獣を生み出させた。

旧約聖書はさらに神が次のように言ったとしている。

「われわれにかたどり、われわれに似せて、人をつくろう。そして、海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」神はご自分にかたどって人を創造された。男と女に創造された、と。

唯一の神が人間をも含む天地の万物を創造したというのが、旧約聖書の説くところである。旧約聖書はユダヤ教徒の聖書であるが、2000年ほど前にできたキリスト教も、1400年ほど前にできたイスラームもこの聖書の考えを基礎としている。

他方、2700年ほど前にまとめられたギリシャ神話では最初にカオス=混沌が存在し、そこから大地、地獄、愛、闇、夜などの神々が生まれた。

1300年ほど前に編まれた日本の神話『古事記』でも最初に存在したのは混沌であり、そのいと高きところに宇宙を統一する神と宇宙の生成を司る神をはじめとする神々が登場した。

これらの聖書や神話の天地創造についての考え方は、700万年ほど前にゴリラやチンパンジーから枝分かれした猿人が長い年月をかけてホモ・サピエンス(知恵の人=賢い人=現世人類)に進化したことを示している。神による天地創造説は「知恵の人」の知的到達点である。神がすべてのものをつくったというのはきわめて単純明快な説明である。このような考えが19世紀まで地球上に住む多くの人々の考えであった。

このような考え方に挑戦したのが、19世紀の博物学者チャールズ・ダーウィンの進化論と20世紀の理論物理学者ジョージ・ガモフなどのビッグバン論であった。ダーウィンの論についてはすでに幾度か触れているので、ここではまずビッグバン論と、それに関連して、定常宇宙論を検討する。

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