中国での質疑応答

中西 治

今日は私の湖南大学での講義と復旦大学での報告に対する質疑応答を紹介します。

論議された第一の問題は小泉首相の評価についてです。

中国は小泉首相の靖国神社参拝を激しく非難していますが、「靖国神社」参拝反対という用語は適切ではなく、正しくは「A級戦犯がまつられているところ」に参拝するのに反対と言うべきであるとの意見が中国側から出されました。

つまり、靖国神社に参拝することが問題ではなく、A級戦犯がまつられているところに参拝することが問題なのです。A級戦犯がまつられていなければ靖国神社に行っても良いということです。

私は靖国神社への首相の参拝そのものが問題であると考えていますが、中国側のこの意見は問題を解決するための一つの論であるように思います。

「中国脅威論」について小泉首相が「中国は脅威ではない」と言っていることを中国側は好意的に受け止めています。

私は小泉さんには積極的な面と否定的な面があることを指摘しました。

積極的な面は朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化のための日朝平壌共同宣言であり、朝鮮への経済制裁の実施を求める声をおさえていることです。

私は郵政民営化に反対ですが、日本国民のなかに公務員が民間人よりも優遇され、公務員の数が多すぎるという不満があります。小泉さんはこの不満をうまく利用して実際には郵政公社は税金を使わず独立採算で運営されているにもかかわらず「民でできることは民へ」「官から民へ」のスローガンを叫び続けました。有権者は小泉さんのこの気力に負け、去年の選挙で自民党を勝たせました。

小泉さんは強かなプロの政治家です。民主党の岡田さんは駆け出しのアマチュア政治家です。

否定的な面は小泉さんの言葉に重みがないことです。不誠実です。靖国神社参拝問題でこれだけ国の内外から批判の声があがっているのに聞く耳を持たないのです。謙虚さがありません。

小泉さんが首相のあいだ日中の国家関係の改善は望めません。こういう時にこそ人民レベルの交流を深めなければなりません。そう思って私は中国を訪ねました。

指導者の過ちは人民が正さなければなりません。

第二はポスト小泉の問題です。私はいま話題になっている人々が次の自民党総裁となり、日本国の首相となる可能性はそれほど大きくないと考えています。自民党にはもっと老練な政治家がいますし、日本国にはもっと思慮深い政治家がいます。

この点について日本側参加者のなかから世代間の争いや世代交代の問題が指摘されました。私も人の世には必ず世代交代があることを認識しています。

問題は若い世代の政治家が必ずしも進歩的でなく、むしろ保守的であり、視野が狭いことです。「中国脅威論」や「対朝鮮経済制裁論」が行き着く先を彼らは理解しているのでしょうか。

前原さんは民主党代表の地位を投げ出しました。前原さんは小泉さんの敵ではありません。小泉さんにとって前原さんは赤子の手をねじるようなものです。

私は中国で岡田さんや前原さんは政治的に未熟であると指摘しました。次は民主党も老練な政治家を出してくるでしょう。そうなると、自民党もますます老練な政治家を出さざるを得なくなるでしょう。

私は誰が次の首相になっても対中・対韓政策は変わり、日本と両国との関係は改善されると思っています。袋小路に入った日本外交の抜け出る道はそれ以外にないからです。

日本政治はいよいよ本格的な政界再編成の時期に入りました。

再編の核になるのは憲法9条への態度です。

第三は第二次大戦後に日本はどうしてあのように急速に復興し、経済大国になったのかです。私は日本人が天皇制の圧政から解放されたこと、憲法9条のもとで平和に徹したことであると答えました。

政策の良否、革命の良否を判断する基準は社会の生産力の発展と人民の生活水準の向上です。生産力が増え、生活が良くなる政策や革命は良い政策であり、良い革命です。その逆は悪い政策であり、悪い革命です。

第四は台湾で事が起こったときに日本はどう出るのかです。私はいまの憲法のもとでは日本は自衛隊を台湾に派遣することはできないし、派遣しないであろうと答えました。

しかし、日本のなかには憲法9条を改定して自衛隊を自衛軍として海外に派遣しようと目論んでいる人がいるし、米国のなかにも日本の軍隊を朝鮮半島と中国で戦わせたいと願っている人がいます。

私はこのような考えは実現しないと考えています。それは中国と南北朝鮮の人民も政府も戦争を望んでいないからです。

軍人は最悪の事態に備えて対処するのが仕事ですが、一般の人々が戦争を前提として考え始めたときに戦争はすぐそばまで来ています。私たちは戦争を前提として考えてはならず、平和に徹しなければなりません。

第五は朝鮮半島の統一問題です。日本側の参加者のなかから南北朝鮮の経済格差が大きいので統一は難しいのではないかという意見が出されました。同じような疑問は東西ドイツの統一のときにも出ました。しかし、いまでは統一ドイツの首相は東ドイツの女性です。

中国国内の格差もきわめて大です。だからといって、中国の統一が難しいとか、分裂するということにはなりません。

経済格差は統一を促進する要素になります。統一は格差の是正を促します。格差があるから統一が必要なのです。これは地球全体の統一=グローバリゼーション(地球一体化)についても言えます。

私は南北朝鮮の統一はすでに始まっていると考えています。南北朝鮮間の鉄道はすでにつながり、陸路は運用を開始しています。南との境に近い北のケソン(開城)ではすでに南北朝鮮の共同開発事業が進んでいます。交流の拡大は双方の発展を促し、社会を急速に変えています。

私は2010年を統一の目処にしています。

論議は尽きませんでした。続きは日本でしましょうと約して別れました。

早速、私たちの研究所の顧問である王邦佐先生をはじめとする湖南大学代表団が今日、4月2日に来日されます。私たちの研究所は4月5日(水)午後に一行を横浜にお迎えします。

日程が決まり次第、連絡します。

毛沢東の生まれ故郷、韶山の故居を訪ねました。

次回は彼について書きます。