8. 科学技術の発展にふさわしい知恵と知識をあわせもつ人間を ―私の人生哲学

中西 治

1966年4月に日本の大学で教え始めてから2008年3月に大学を辞するまで私は42年間にわたって大学教育に従事してきた。現在は特定非営利活動法人地球宇宙平和研究所で研究と教育にあたっている。

地球宇宙平和研究所の研究と教育がめざすのは次のようなことである。

第一は地球上に住むすべての人間の幸せである。

第二は地球全体の平和であり、地球の戦争を宇宙空間に拡大させないことである。

第三は人類の文化をこれまでよりも一段と高みに上げることである。

第四は新しい高い文化を次の世代に伝え、さらに発展させることである。

第五は以上の目標を実現させるためにも、21世紀の科学技術の発展にふさわしい知恵と知識と技術を併せ持った人材を養成し、その水準をさらに高めることである。

いつの時代でも科学技術の発展と人間の生き方についての考え方=倫理・哲学とのあいだにはギャップが存在する。科学技術の発展は世代間で急速に継承され、さらに前進するが、人間の生き方についての考え方はその継承に時間がかかり、その発展はきわめて緩慢である。私たちの世代は両親や祖父母の世代よりもはるかに多くのことを知り、多くの技術を身につけているが、私たちは彼らよりもはるかに立派な生き方をしていると言えるであろうか。

現代の科学技術の急速な発展のもとで、このギャップは著しく拡大している。とくに、戦争技術の発展と人間の倫理の発展においてそれはきわめて大きい。かつて一人の人間が一人の人間と争って相手を傷つけ、殺めるようなことがあったとき、人は、いろいろと理由があったにしろ、人を傷つけ、殺めたことに心の痛みを感じたであろう。第二次大戦時に広島と長崎の上空で飛行機から原子爆弾を投下し、一挙に十数万の人を傷つけ、殺めた爆撃士に、かつて一人の人間を傷つけ、殺めたときに人間が負った心の痛みの十数万倍もの心の痛みがあったとしたら、原爆は投下できなかったであろう。いまではさらに遠く離れたところから核弾頭を付けたミサイルを発射し、相手をまったく見ないで、一挙に何十万人もの人を殺せるのである。

時代は大量破壊殺戮兵器を生み出す高い技術水準にふさわしい高い倫理を備えた知恵の人を求めている。知恵の人はこのような兵器をつくらないし、使うようなことはしない。私がめざしているのはこのような人間の養成である。

目次に戻る