6. 人間が神や仏をつくり、神や仏となった ―私の人生哲学

中西 治

2009年はダーウィンが1859年に『種の起原』を出版してから150周年記念の年であった。1859年といえば、日本では横浜が開港した安政6年であり、安政の大獄が荒れ狂ったころであった。

ダーウィンはこの書で人間の起原に直接触れなかったが、それでもダーウィンは人間がアダムやイヴの子孫ではなく、猿の子孫であると主張しているとして非難された。ダーウィンはさらに1871年に上梓した『人類の起原』で人間の起原が下等なものから由来していることを認めた。キリスト教の聖職者たちがダーウィンをいっそう激しく責め立てた。これに対してダーウィンは敵を苦しめて喜ぶ人間の子孫であるよりも、飼育係の命を救おうとして敵に立ち向かった猿の子孫であることを願っていると述べて、反論した。

当時は神が人間をつくったという考えが人々のあいだで支配的であった。150年経った今日では多くの人々がダーウィンの進化論を受け入れている。

宇宙ができたのは150億年ほど前、地球ができたのは46億年ほど前、地球上に単細胞生物が現れたのはそれから5億年ほど経ったとき、人類が誕生したのは700万年ほど前である。人類の誕生といっても、いまのような人間が突然現れたのではない。最初の人類は猿人であった。後にホモ・サピエンス(現世人類)へと進化したといわれている猿人が、ゴリラやチンパンジーから枝分かれしたときが人類の誕生とされている。この猿人が進化して現世人類になったのは4万年ほど前である。ホモ・サピエンス(Homo sapiens=Wise man)とはラテン語で「知恵の人」という意味である。猿人が「知恵の人=賢い人=現世人類」になった。

この「知恵の人」が農作と飼育を始めたのが1万年ほど前、それまでは身近にある物を漁って、食べて、生きていた。植物の耕作と動物の飼育によって人間の生活がやっと安定し始め、人間の生活の仕方=文化が発展し始めた。直接、生産や経済活動に従事しない人が存在するようになり、都市の文化=文明が生まれた。3000年ほど前から聖書やギリシャ神話が語り継がれるようになり、2500年くらい前から孔子、ソクラテス、ブッダ、プラトン、アリストテレス、孟子などの聖人・君子が現れた。イエスが生まれたのは2000年ほど前、ムハンマドが生まれたのは1400年ほど前である。

聖書も神話も人間がつくりだしたものである。儒教、仏教、キリスト教、イスラームの創始者たちは、いずれも人間であった。人間が神や仏をつくり、神や仏となった。

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