クリントン元米国大統領の朝鮮訪問を歓迎する

中西 治

米国の元大統領ビル・クリントンさんが朝鮮を訪問し、朝鮮労働党総書記兼朝鮮民主主義人共和国国防委員会委員長の金正日さんと会談し、朝鮮で拘束されていた二人の米国人女性記者を伴って帰国しました。私はこのところ途切れていた米朝間の接触が再開されたことを歓迎します。

米国の大統領オバマさんは今年 1 月に大統領に就任後、経済対策を中心とする国内政策は積極的に進めてきましたが、対外政策はきわめて慎重でした。核兵器廃絶を唱えたものの、当初、その任期中の実現は難しいと言っていました。また、イラクからの米軍の撤退は選挙公約通り実行するが、アフガニスタンでの米軍駐留は続けると言明し、対イラン政策でも、対朝鮮政策でも、見るべき施策はありませんでした。

最近、対外政策でも徐々に変化が見え始めていました。米国はキューバが米州機構 (OAS) に復帰することに同意し、東南アジア友好協力条約 (TAC) へ参加しました。キューバはオバマさんをまだ完全に信頼しておらず、米州機構に復帰していません。

オバマ政権はいまも公式にはきわめて慎重です。ビル・クリントンさんの訪朝は米国人記者二人を解放するための完全に私的な訪問であり、オバマ政権はコメントしないと言っています。しかし、クリントンさんのような、今なお大きな影響力をもつ元大統領で、しかも、妻のヒラリー・クリントンさんが現職の国務長官である人が、今の段階で、オバマさんと何の打ち合わせもしないで、まったく無関係に、私的に朝鮮を訪問をすることはあり得ません。使用した飛行機がどこに所属するものであるのかは分かりませんが、帰途、日本の米軍基地に給油のために立ち寄っています。米国政府の許可なしに、そのようなことができるわけはありません。

今回のクリントンさんの訪朝はオバマさんが朝鮮政策を積極的に推進しようとする意志をもっていることを示しています。オバマさんは内外世論の反応を見て、次のステップに進もうとしています。

私は米朝関係が動き始めたことを喜んでいます。1994 年のカーター元大統領の訪朝と金日成主席との会談が米朝関係を進展させたように、今回のクリントン元大統領の訪朝と金正日委員長との会談が朝鮮半島の非核武装化と米朝国交正常化を早いテンポでもたらすことを願っています。これまでのように後戻りをさせてはなりません。

米朝関係が動けば、南北朝鮮関係が動き、日朝関係が動きます。私は 2010 年までに日朝関係が正常化することを願っています。朝鮮戦争が休戦になって 56 年、日朝関係が途絶えて 64 年、十分に時間は経っているのです。