日本の政治情勢について

中西 治

風は恐ろしい。当事者も予期しないような結果をもたらす。

2005 年 9 月 11 日の衆議院議員選挙では自由民主党に「郵政民営化」の風が吹いたが、2009 年 7 月 12 日の東京都議会議員選挙では民主党に「政権交代」の風が吹いた。

自民党は小泉さんのおかげで 2005 年の選挙において小選挙区で 219 人、比例区で 77 人、計 296 人 (61%: 括弧内の数値は全当選者中に占める割合。以下、同様) の衆議院議員を獲得し、それに胡座をかいて今日まで小泉・安倍・福田・麻生と 4 代の内閣が続いた。

逆風は 2007 年 7 月 29 日の参議院議員選挙から吹き始めていた。この選挙で民主党は選挙区で 40 人、比例区で 20 人、計 60 人 (50%) の議員を獲得し、自民党の選挙区 23 人、比例区 14 人、計 37 人 (30%) を大きく上回った。参議院で民主党が多数派になり、自民党が少数派に転落した。

自民党はこのときに反省し、政策を根本的に改めるべきであった。しかし、自民党はそれをせず、参議院で否決されたものを衆議院の多数を頼んで再可決し、従来の政策を推進してきた。信を国民に問うという方法もあったが、総選挙をしても、衆議院議員が増えることは望めず、減ることは確実なので、解散もできず、政権に食らいついてきた。その結果が今回の都議選である。

麻生さんもついに 2009 年 7 月 21 日に衆議院を解散し、8 月 18 日に総選挙を告示し、同月 30 日に投票を実施するという。いまの衆議院の任期はあと 2 か月弱、2009 年 9 月 10 日には機能を停止する。選挙を 10 日ほど早めたからといって、主導的に解散権を行使したことにはならない。「追い込まれ解散」「野垂れ死に解散」である。

今度の東京都議会議員選挙が次の衆議院議員選挙にどのような影響を与えるのであろうか。

まず、今回の選挙結果を見ておこう。都議の定数は 127 人、今回の選挙結果と前回、2005 年の選挙結果を比較すると、民主党は 35 から 54 (42%) と 19 議席増やし、自民党は 48 から 38 (29%) と 10 議席減らしている。公明党は 23 (18%) で前回と変わらず、共産党は 13 から 8 (6.2%) と 5 議席減り、ネットは 3 から 2 (1.5%) と 1 議席減り、諸派は 1 から 0 (0%) 、無所属は 4 から 2 (1.5%) と、合わせて 3 議席減らしている。

公明党は増減なく現状維持であり、民主党は自民・共産・ネット・諸派・無所属などの減った分、19 議席をそっくり増やしている。今回の選挙は民主党の一人勝ちである。

次に前々回の 2001 年 7 月の都議選とその直後の 2001 年 7 月 29 日の参議院議員選挙および前回の 2005 年 7 月の都議選とその後におこなわれた 2005 年 9 月の小泉郵政選挙を比較しよう。

2001 年の選挙についてみると、このときの都議選の当選者は自民党 53 人 (41%) 、公明党 23 人 (18%) 、民主党 22 人 (17%) 、共産党 15 人 (11%) 、ネット 6 人 (4.7%) 、諸派 1 人 (0.7%) 、無所属 7 人 (5.5%) であった。参議院選挙の当選者は選挙区と比例区を合わせて、自民党が 65 人 (54%) 、民主党が 26 人 (21%) 、公明党が 13 人 (10%) 、共産党が 5 人 (4.2%) 、自由党が 6 人 (5%) 、社民党が 3 人 (2.5%) 、保守党が 1 人 (0.8%) であった。

2001 年のこの二つの選挙結果を比較すると、都民と国民はほぼ同じ時期にほぼ同じ順序でそれぞれの政党を支持していることが分かる。つまり、都議選の結果から次の国政選挙の結果を予測することは可能である。ただし、自民党や民主党のような大政党は当選者の割合が都議選よりも参議院選挙の方が多くなっているが、公明党や共産党の場合は減っている。参議院選挙の制度は大政党に有利である。

2005 年の選挙についてみると、当選者は都議選では自民党が 48 人 (36%) 、民主党が 35 人 (27%) 、公明党が 23 人 (18%) 、共産党が 13 人 (10%) であるが、定数 480 人の衆議院選では小選挙区と比例区を合わせて自民党が 296 人 (61%) 、民主党が 113 人 (23%) 、公明党が 31 人 (6%) 、共産党が 9 人 (1.8%) 、社民党が 7 人 (1.4%) 、国民新党が 4 人 (0.8%) 、新党日本が 1 人 (0.2%) 、新党大地が 1 人 (0.2%) 、その他が 18 人 (3.7%) であった。小選挙区を中心とする衆議院選挙では大政党で、しかも、そのときに風が吹いている政党に大変有利になる。

以上のことから、次の総選挙では民主党の勝利が予想される。

自民党は小泉改革以来、衆議院での多数を背景に、日本の雇用制度・教育制度・医療制度・年金制度を変え、国民の生活を悪くした。何もかもが金で計られるぎすぎすした社会になった。一日に 100 人近くの人が自ら命を絶たざるを得ない社会は異常である。自衛隊の海外派遣の恒常化も人々に戦争の不安を感じさせている。

変化を求める声が高まっている。「変革の風」が吹いている。日本も変革の時代に入った。