朝鮮の人工衛星打ち上げ予告に寄せて

中西 治

1957年のソビエトによる人工衛星「スプートニク」の打ち上げは宇宙地球史上の画期的な出来事であった。 人間が初めて地球の引力圏を脱し宇宙空間に飛び出した。地球が一つになり、宇宙が一つになり始めた。

人間は通信・放送衛星、地球観測・気象衛星、天文観測衛星、月・惑星探査機、技術開発・試験・工学実験衛星など多数の人工衛星を打ち上げた。

CelesTrak WWW: SATCAT Boxscore によると、2009年3月27日現在、「観測機器=ぺイロード (Payloads)」と呼ばれる地球の周りの軌道を順調に飛び、機能している人工衛星は3335、すでに機能を喪失しているもの2782、計6117、さらに宇宙の「ごみ=デブリ (Debris)」になっているもの2万8548、合計3万4665がいまも宇宙空間を飛んでいる。

宇宙空間に国境はなく、各国の人工衛星が自由に飛び交っている。誰も他国の人工衛星が自国の上空を飛んでも「不愉快」とは言わない。これが21世紀である。

人工衛星を一番多く打ち上げているのは、ロシアを中心とする独立国家共同体(CIS)である。機能しているもの1410、機能を喪失しているもの1883、計3293、「ごみ」が1万5372、合計1万8665。ついで米国がそれぞれ、1059、754、計1813、7956、合計9769、日本が122、19、計141、246、合計387、中国が78、47、計125、3284、合計3409、である。

周辺の国々、ロシアも、中国も、日本も、たくさんの人工衛星を宇宙空間に打ち上げているのに、朝鮮半島の人々は人工衛星を宇宙空間に一つも持っていない。朝鮮民主主義人民共和国が人工衛星を打ち上げたいと願うのは当然である。

私は宇宙に行ってみたい。だから、どこの国であれ、人工衛星を打ち上げるのに賛成である。人工衛星を打ち上げる能力を持つ宇宙ロケットなしに、人間は宇宙に行けない。日本も、米国も、中国も、ロシアも、人工衛星を打ち上げているのに、朝鮮は駄目というのは筋が通らない。

人工衛星を打ち上げるロケットと核弾頭を運ぶ弾道ミサイルは技術的に基本的に同じである。ロケット (rocket) とは「酸素を液体酸素か化合物の形で積載し、外界の空気を採らない噴射式エンジン」である。ミサイル (Missile) とは「投げ槍・矢・弾丸・石のような飛び道具」のことであり、「ロケット爆弾や無線操縦爆弾のような自動推進装置を備えた爆弾」(研究社編『New English-Japanese Dictionary』) である。米語でロケットはエンジンであり、運搬手段である。これに武器を付けたものがミサイルである。

国際連合安全保障理事会決議第1718号 和訳(官報告示外務省第598号)によると、2006年10月9日に核兵器実験を実施したとの朝鮮の発表と関連して国際連合安全保障理事会が採択した決議第1718号は、朝鮮に「いかなる核実験又は弾道ミサイルの発射もこれ以上実施しないことを要求」し、朝鮮が「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止し、かつ、この文脈において、ミサイル発射モラトリアムに係る既存の約束を再度確認すること」を決定している。

問題はこの「弾道ミサイル」に今回朝鮮が発射する「通信衛星を運搬するロケット」が入るのか否かである。日本は入るとし、朝鮮は入らないとしている。私は入らないと思う。

上記安保理決議第1718号は、朝鮮への供給、販売又は移転を防止する品目として「国際連合軍備登録制度上定義されたあらゆる戦車、装甲戦闘車両、大口径火砲システム、戦闘用航空機、攻撃ヘリコプター、軍用艦艇、ミサイル若しくはミサイル・システム」と明記している。「ミサイル若しくはミサイル・システム」は武器に入っている。航空機も、ヘリコプターも、艦艇も、ロケットも、軍用にも、非軍用にも使われる。「ミサイル」は軍用に使われる「ロケット」である。

私は核兵器に反対であり、核兵器実験に反対であるから、ミサイル実験に反対である。私は人工衛星に賛成であるから、ロケット実験に賛成である。

私が「特定非営利活動法人 地球宇宙平和研究所」の前身である「国際地球宇宙平和研究所」を1986年に設立した当時、米国のレーガン大統領は「スター・ウォーズ (Star Wars)」を喧伝していた。私は地球の戦争を 宇宙に広げさせてはならないと思った。

日本政府は2009年3月27日に「弾道ミサイル破壊措置命令」を発した。他国の人工衛星打ち上げ予告に対してこのような措置を採った国は1957年の人工衛星打ち上げ以来おそらく初めてであろう。日本の人工衛星打ち上げ予告に他国がこのような措置を採ったとき日本人はどのような感情を抱くのであろうか。

現在の北東アジアの状況のもとで、朝鮮が今回のような措置を採った場合、日本が待ってましたとばかり、今回のような対応をすることを朝鮮は予見できなかったのであろうか。

朝鮮人も日本人も、現在の情勢に理性的に対処しなければならない。 誰が今回の事態から利益を得るのか。私たちは冷静に考えなければならない。