ソマリア沖への自衛艦の派遣に思う

中西 治

2009 年 3 月 14 日に海上自衛隊の護衛艦 2 隻が海上自衛隊呉基地から、国会の承認を得ないで、アフリカに向かった。アフリカ東部ソマリア沖に出没する「海賊」に対処する「海上警備行動」をおこなうためであるという。

これまでの自衛隊の海外派兵にくらべて日本国民の反対の声は弱い。米国・ロシア・中国などの軍艦もソマリア沖に出動しており、日本の自衛艦派遣も止むを得ないのではないかとの声が聞かれる。

果たしてそうであろうか。

私は第二次大戦前、戦地に赴く兵隊さんや軍艦を歓呼の声で見送った日本国民を知っている。生まれて初めての国費による海外旅行であると喜んで戦地に行った人が遺骨で帰ってきたことを覚えている。

戦争はいつも「在外邦人の生命財産を守るため」と称して、軍隊を外国に派遣することから始まる。人々は最初きわめて慎重であるが、そのうちに慣れさせられる。そして、大戦争に突入し、大敗北を喫する。

日本人はこれに懲り、二度と再び外国に軍隊を送り出さないと誓った。しかし、またも慣れ始めている。よその国が軍艦を送るからといって、日本が同じように軍艦を送る必要はない。いや、送ってはならない。

「海賊」を取り締まるのは第一にソマリア政府の仕事であり、ソマリア警察の仕事である。ソマリア政府が事実上崩壊し、それができないというのであるならば、まず近隣諸国がすべきである。それもできないというのであるならば、国際連合が中心となる「国際警察」がすべきである。

テレビを見ると、小さな船に数人の人が乗り込んで「海賊行為」をしている。なかにはソマリア海軍の元軍人もいるようである。いずれにしても、彼らは食うに困っている。彼らを殺しても、「海賊」はなくならない。

先日、日本で起こった「ひったくり」事件を思い出す。食べるものがなく、お腹が空いて、ひったくりをしようとした人が持っていた金は 2 円。

ひったくられそうになり、必死になって守った人が持っていた金が 110 円。

人間は食べられなくなったら何をするか分からない。

日本人を食べさせなければならない。ソマリア人も生きられるようにしなければならない。

憲法 9 条を持つ日本がなすべきは、自分が生きるために他人を殺すことではない。自分も他人も生かすことである。