オバマさんの大統領就任演説を聞いて

中西 治

オバマさんの大統領就任演説は、アメリカ合衆国大統領の重責を担った 47 歳の人間が、その重みに必死に耐えようとしている重苦しいものであった。それは選挙運動中の歯切れの良い、華やかな演説とは異なっていた。聴衆の反応も重苦しく、熱狂的な拍手はなかった。

なぜか。それは現在の米国がかかえている問題が余りにも多く、重く、米国民が「重大な危機にある」からである。

第一は「戦争状態」である。「敵は憎悪と暴力のネットワークを持っている」という。これに対して「イラクから撤退し始め、イラク人に国を任せる。そして、アフガンの平和を取り戻す。」という。アフガンの平和をどのようにして取り戻すのか。聴衆が聞きたかったのは、それである。

第二は「経済状態」である。「その原因は一部の人々のどん欲さと無責任さにあるものの、私たちは困難な選択を避け、次世代への準備にも失敗している。」という。これに対して「新しい職場の創造だけでなく、成長のための新しい基盤を作らなければならない。」という。どのようにしてか。ニューヨーク株式市場の反応はダウ工業株 30 種平均の 332 ドル安、8000 ドル割れの急落である。

オバマさんは「私たちが成功するか否かは、労働と誠実さ、勇気、フェアプレー、忍耐、好奇心、忠誠心、愛国心にかかっている。」という。その通りである。しかし、米国民がオバマさんを大統領の座につけたのは、現実に戦争を止め、平和を回復し、経済を繁栄させ、生活を良くするためである。地球上の多くの人々が望んでいることもそうである。オバマさんはこの民衆の要望に実際に応えなければならない。