二酔人四方山問答(33)

岩木 秀樹

B:この前、六信について聞いたけれど、五行とは何なの。

A:五つの行われるべきムスリムの義務のことで、第一はシャハーダと呼ばれる信仰告白だ。

B:もしかして、信仰告白って例の「アラーのほかに神なし、ムハンマドは神の使徒なり」なの。

A:その通り。それをアラビア語で言うことだ。第二は礼拝で、1日のうちで、夜明け、正午、午後、日没、夜半の五回礼拝することだ。また金曜の正午の礼拝は集団でやると良いとされている。

B:だからか。僕の家の近所にイスラーム教徒が良く集まる場所があるんだけれど、金曜のお昼は人がたくさんいた。でも1日五回もやるのは大変だな。

A:いや、実際のところ、全員がきちんと五回をやっているわけではない。第一の信仰告白は義務だが、それ以外は義務であることを信じていればよいとされている。

B:いいかげんだな。

A:柔軟とも言える。第三はザカートと言われる喜捨だ。

B:喜捨って何。聞き慣れない言葉だな。

A:所有される財産に対して一定の支払が課せられることで、受給対象は貧者やイスラームへの改宗者、戦士、旅行者などだ。

B:それって、広い意味での寄付行為や社会保障の一種とも言えるのかな。

A:それに近いものがあり、また結果としてそのような機能を果たしている。モスクを出た所でも気軽にザカートを与えていたり、道ばたの物乞いにもお金を与える光景はよく目にする。

B:もらった人はありがたがっているのかな。

A:それがそうでもないんだ。おまえに宗教的義務であるザカートをさせてやっているくらいの勢いだった。それにトルコなどでは大財閥の金持 ちが大きな学生寮を作ることもよくやっている。もしかしたらそれもザカートの精神が生きているからかもしれない。第四はラマダンと呼ばれる断食だ。

B:それは僕でもよく知っているよ。日中は飲まず食わずなんでしょ。

A:青年男女で健康な者はイスラーム暦第九の月ラマダンには、喫煙を含む飲食行為と性行為は、日中は断たなくてはならないとされている。イスラーム暦は一年がほぼ354日なので、ラマダンも少しずつずれてくることになり、夏のラマダンは相当きついようだ。

B:肉体労働者や兵隊は大変じゃあないかな。水一滴、厳密には唾も飲んではいけないでしょ。

A:このあたりのことは以前にも言ったけれど[(12)を参照]、ラマダンの適用においては柔軟に対応している。第五は巡礼だ。

B:メッカに行くことだね。

A:イスラーム暦第12の月の8日から10日までに定められた方法でやるのが最もよいと言われている。ただし、コーランの3章97節にも書かれているとおり、「旅する余裕がある限り」でよいとされている。

B:なるほど、五行が少しはわかったよ。

(つづく)