陸上自衛隊のイラク撤退にあたって ―日本の自衛隊をふたたび外国に出してはならない―

中西 治

小泉純一郎首相は本日、2006年6月20日13時、イラク南部のムサンナ州サマワに派遣している日本の陸上自衛隊をイラクから撤収させると発表しました。私はアメリカ合衆国が2003年3月19日にイラクに対する戦争を開始した当初から、この戦争に反対し、これに加担する日本の自衛隊のイラク派遣に反対してきました。2003年12月9日に日本政府がイラクへの自衛隊の派遣を決めたあと、私は時に応じて何度も自衛隊のイラクからの撤退を求めてきました。いろいろと理屈をつけていますが、今回の戦争は米国のイラクに対する侵略戦争であり、米国の側に何の大義もありません。3年3か月の戦争のなかで攻撃をうけたイラクだけではなく、攻撃をした米国にも多数の犠牲者が出ています。日本人も外交官2人と民間人3人の計5人の文民が命を失いました。戦争はまだ続いています。殺し合いは終わってはいません。戦争は泥沼化しています。

米国、英国、オーストラリア、日本などは戦争からの出口を求めています。小泉首相はムサンナ州の治安維持の権限が英国とオーストラリアからイラク政府に委譲された機会をとらえて陸上自衛隊の撤退を決定しました。私は小泉首相のこの決定を、遅きに失したとはいえ、歓迎します。イラクでの戦争をただちに全面的に止めさせなければなりません。米国軍はイラクから出て行かなければなりません。自衛隊のイラク派遣は私たち日本人に多くのことを考えさせました。一部の日本人は人道支援という言葉に惑わされました。日本政府は今年(2006年)3月までにムサンナ州を中心に電力、保健、水・衛生などで15億ドル(約1720億円)の無償支援をしたといわれています。このような援助を行うために本当に自衛隊を派遣する必要があったのでしょうか。自衛隊よりも効果的にこのような支援を行う人材と組織は日本に存在しないのでしょうか。このさい自衛隊を災害時の人道支援のための救援組織に改組することを真剣に検討してみてはいかがでしょうか。人道支援・災害支援のために武器は必要ありません。イラクの問題はイラク人が、アラブの問題はアラブ人が、地域の問題はその地域の人々が解決すべきです。その地域の人々で解決が難しい問題を他の地域の人が簡単に解決できるわけはないのです。自衛隊が武器をもって紛争地域に行くのは今回を最初で最後としましょう。なかには恒久法を制定して、いつでも自衛隊を外国に派遣できるようにすべきだとの意見がありますが、これは論外です。外国に軍隊を送るのに慣れてはいけません。はじめは処女のごとく、おわりは脱兎のごとし、といいます。その道は戦争への道であり、日本をふたたび破滅させる道です。