ネパール情勢 II:制憲議会選挙結果について

植木 竜司

ネパールで4月10日に行われた制憲議会選挙の結果が出揃った。正式に当選者が確定するのは各政党が提出する名簿を選挙管理委員会が承認してからであり、承認後3週間以内に制憲議会が開かれることとなっているから、5月中には開会する見通しである。

結果は日本でも報道されているとおりネパール共産党マオイストが220議席(比例100 )を獲得し第一党となった。以下、ネパールコングレス党が110議席(比例73)、ネパール共産党統一マルクス・レーニン主義が103議席(比例70)、マデシ人権フォーラムが52議席(比例22)、タライ・マデシ民主党が20議席(比例11)、ネパール友愛党9議席(比例5)と続いている。小選挙区で議席を獲得できなかった王制派政党国民民主党も比例区で8議席を獲得した。

マオイストは比例区でも最も議席を獲得した政党となったが、小選挙区では240選挙区中120選挙区で勝利したのに対し、比例区では335議席中100議席、得票率29.28%であり伸び悩んだといえるであろう。

結果、マオイストは第一党を獲得したが、定数601、(非選挙枠/政府推薦議員26議席)に対し、過半数には遠く及ばなかった。もともと暫定憲法では制憲議会選挙における首相指名等には全議席の三分の二が必要であったため、これから連立工作が行われることとなる。その際、ネパール南部タライ地域を基盤とした政党である第4、第5党であるマデシ人権フォーラム、タライ・マデシ民主党がキャスティングボートを握ることとなるであろう(ちなみに第6政党ネパール友愛党もタライ地域を基盤とした政党)。今回、海外報道ではマオイストが第一党になったことばかりに注目が集まっているが、ネパール国内では特にマデシ人権フォーラム、タライ・マデシ民主党といった南部の地方/民族政党が議席を多く獲得したことにも大変注目が集まっている。

ネパールは地形区別(高度)では山岳部・丘陵部・平野部に、開発地域別(東西)では東部・中部・西部・中西部・極西部にわけることができるが、今回の小選挙区で特に開発地域別では中西部と極西部、地形区別では山岳部でマオイストが強さを見せた。

山岳部では22選挙区中16、中西部では33選挙区中27、極西部では21選挙区中15の選挙区で議席を獲得している。これは「識字率」や「出生時平均余命」の数値と比較するとたいへん興味深い。少し古いデータとなるが2000年のネパール国内の識字率は地形区別では山岳部44.5%、丘陵部55.5%、平野部46.8%であり、開発区別では東部56.6%、中部49.8%、西部51.67%、中西部では47.8%、極西部では43%となっている。また出生時平均余命は地形区別では山岳部49.8年、丘陵部65.1年、平野部62.4年であり、開発区別では東部62年、中部61.3年、西部62.8年、中西部53.2年、極西部52.1年となっている。つまり、識字率も出生時平均余命も山岳部、中西部、極西部で数値が悪くなっているのである。このことはインフラが整っていない経済的にも社会的にも排除されている地域でマオイストが支持を広げていることを意味しているといえるであろう。

マオイストはもともと中西部を基盤として人民戦争を展開し、根拠地を築きながら全国に勢力を広げてきた。特に、これまでのネパールの政治政党と異なり、都市からではなく「農村から都市へ」、まさに毛沢東主義理論を利用して勢力を拡大してきたのである。

貧しい農村を基盤とし、共産主義、毛沢東主義を掲げるマオイストが、今後国政でどのような政策を実施していくのか、特に経済政策をどうするのかは、ネパール国民のみならず、世界中から注目されている。ただ、複数政党議会制の中でどれだけマオイスト色のある政策を実施できるかは未知数である。