星野昭吉著『世界政治と地球公共財』紹介

中西 治

私たちの研究所の同僚、獨協大学法学部教授の星野昭吉 (ほしの あきよし) さんが新著『世界政治と地球公共財』(同文舘出版、2008年4月10日)を上梓されました。

星野さんの考えは次のようなものです。

現在の世界政治システムは人間、社会、国家など地球上のすべての主体を一つに結びつけ、地球的規模の関係網を形成している。その関係網は好ましい秩序的・協調的・統合的エネルギーが作用をするものと、悪しき無秩序的・対立的・分裂的エネルギーが作用するものの二つから成っている。

前者が地球公共財を作り出し、後者が地球公共悪を生み出している。地球公共財とは、平和・安全保障、世界人権保障、地球環境、知識体系、等々である。地球公共悪とは、テロや地域紛争、核兵器をはじめとする大量破壊兵器、貧困・飢餓、環境破壊、人権抑圧、社会的不正義、等々である。

現実には地球公共悪が支配的であるため、世界政治システムの崩壊の危機、つまり、人類的危機が強まっている。これを克服し、解決するためにはどのようにすれば良いのであろうか。

星野さんは、これまでの国家を中心とする現状維持志向の考え方とグローバル・ガバナンス(地球統治)の仕方を改め、世界(グローバル社会)を中心とする現状変革志向の考え方と地球統治の仕方への転換を求めています。

そのさい、知識体系が大変重要な役割を果たします。この新しい知識体系は、全体価値と個別価値、個の価値と共通価値、個の価値と平等価値、現世代中心価値と将来世代中心価値、上からの価値と下からの価値、など五つのレベルでの、それぞれの価値の相互構成関係の検討のうえに構築されるものです。

星野さんは米国をはじめとする内外の最新の大量の文献を読み、多数の論文や著書を日本語や英語で執筆・発表している優れた研究者です。本書は地球公共財と地球公共悪の概念を理論的に詳細に分析し、これを現実に適用しています。

私がとくに教えをうけたのは、知識体系を地球公共財の一つとして位置づけ、それが果たす役割を指摘していることです。

現実を正しく認識し、それへの対処法を考えるのが、すべての始まりです。

私たちの研究所が果たすべき役割を改めて考えさせられました。