「東アジア安全保障」研究部会 研究会

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「平和の歴史・思想・現在」研究部会との合同研究会

テーマ:中国安全保障戦略における東アジア地域協力の意味
報告者:林 亮
日時:2004年7月4日 15時〜17時
場所: 八王子市市民活動支援センター
1980年代の鄧小平の復活以来、中国は経済成長重視政策に転換、軍事力行使は外交政策の後背に退いた。中国は国際的権力構造を米国が唯一の超大国と なって「一超多強」と認識してきた。しかし中国を「潜在的競争相手」と見るブッシュ新政権の対中敵視政策転換によって、中国はNMD配備決定による対米核 抑止力喪失の可能性と、米国の先端技術兵器に対抗可能な「ハイテク条件下の局地戦争」に対応するために核・非核双方の軍事力増強圧力を受ける結果となっ た。

しかし中国国内の論争では世界大国化を目指しつつも米国との直接衝突を回避しようとする意図は明白である。中国の経済発展と安全保障上の利益のためには台湾解放も含め米国からの軍事介入を極力回避する「韜光養晦」路線が主張されている。

1996年には中国は上海協力機構をモデルにした「新安全保障観」を提唱し、協調的・総合的な安全保障への転換を宣言、 ASEAN地域フォーラム(ARF)への積極参加、対インド融和外交、対日新思考外交、朝鮮半島6カ国協議枠組みへの協力など多角的融和外交に乗り出している。

とくに中国・ASEAN自由貿易協定(FTA)やARF協力などのアジアでの地域総合協力は、米国の二国間同盟戦略やNAFTA、EUと拮抗可能な地域統 合体形成を視野に入れた中国と東アジア・ASEAN地域総合協力でアジア各国の中国に対する共感獲得をねらうものであろう。9.11後のブッシュ政権の強 引な武力行使の中で「中国と協力し、アジア共同体を形成してグローバリゼーションや米国の一国主義に抗して平和と安定を維持することは各国の利益となる」 との主張がアジア各国に次第に訴求力を持ち始めたように思われる。

しかも中国のやり方は巧妙である。米国排除でアジア各国に米中二者択一を求めるのは不利と計算し、中国は当該地域への米国のプレゼンスを排除しない。 中 国ASEAN・FTAは一定の共同体意識形成促進効果を発揮するだろう。中国を包含した経済圏形成をねらう東アジア共同体構想の進展は、グローバル化に対 抗可能な地域間協力枠組み抜きにはアジアの繁栄も中国の発展もあり得ない現実を反映している。

グローバル化時代の「世界三分の計」あるいは新たな「三つ世界論」ともいえる中国の長期戦略が東南アジア・東アジアに共感をもって受け入れられアジア共同体の形成が可能となるのだろうか。最大の課題は日中間の協力と米国の対応であろう。ここでも靖国問題は日本の未来の選択肢に暗い影を投げかけている。