無題

大江 平和

「来る者拒まず、去る者追わず」という言葉がある。 中国から本帰国してもうすぐ3年を迎え、やっと日本の地に足が着いてきた昨今であるが、つれづれに思うことは、今の日本人は、まさに「来る者拒み、去る者追わず」ではないか、ということである。グローバル化はすさまじい勢いで進んでいるにもかかわらず、日本人や日本社会はどんどん閉塞的になっているような 気がしてならない。私の周りを見渡しても、人生で最も多忙な世代だからかもしれないが、生活に追われ、心に余裕をもてず、殺伐としている人が多いように見 受けられる。英国在住のエッセイスト・歌人の渡辺幸一氏がある新聞のインタビューで次のようなことを語っていた。いわく、今の日本は「自己防衛型」となり、自分の世界を築いて他をかえりみない人が増えていると。確かにそうだ。かつての日本であれば、知らない人でも近隣で会った人には挨拶を交わし、電車の中で人にぶつかれば、「すみません」と一言発する周囲への心配りややさしさがあった。それが日本人の美徳であり、誇りでもあったが、それが消えつつあることに寂しさと危機感を覚えるのは私一人であろうか。