エッセイ 61 心と体

木村 英亮

『サタディー・レビュー』誌の編集長を務めた後カリフォルニア大学医学部大 脳研究所教授となったノーマン・カズンズは、病院にくる患者の9割は治療などし なくても自分で全快できるのであって、医者の仕事はそれができない少数の患者を 見分けることである(『 笑いと治癒力』、岩波現代文庫、2001,38ページ)、医学は、微生物との戦いでは大体勝利したが、精神的安静をうる戦いには敗北をつづけていると書いている(50ページ)。

そして、精神的な安静と長寿は、創造力の活動によってもっともよくえられるととして、その例として、パブロ・カサルスとアルバート・アインシュタインの2人をあげ、その考え方を紹介する。カサルスは、「人が自分自身の善性に耳を傾け、それに従って行動するのには勇気が要ります。われわれは自分自身になり切る気があるかどうか。これが大切な問題です」(67ページ)と、シュヴァイツァーは、「自分がどんな病気にかかろうと、一番いい薬は、すべき仕事があるという自覚にユーモアの感覚を調合したものであると信じていた」(68ページ)と言っている。

国立小児病院名誉院長小林登は巻末の解説で、重症栄養失調児の世話を優しい女性にさせると体重が3,4倍早くつき、下痢や肺炎などの感染症合併は10分の1になったというチリの医者の講演を紹介している(202-203ページ)。

ことばは劇薬である。

宮崎学は、全国水平社の指導者松本治一郎の伝記を次のことばで結んでいる。

たった一言が
人の心を暖める
たった一言が
人の心を傷つける