二酔人四方山問答(3)

岩木 秀樹

B:今までの君の話を聞いていると、ムハンマド君の嘆きも理解できるなー。彼は冷戦崩壊後特に9・11事件以後のアメリカの対中東イスラーム政策はひどすぎるって怒っていたよ。でもなぜそれほどまでにアメリカへの憎悪があるのかな。

A:常にアメリカは誤った政策をしているわけではないけれど、ここ最近の政策は大きな問題があると思う。アメリカへの敵意の理由はいくつかあるけれど、まずは「イスラエル・パレスチナ問題」でイスラエル支持の姿勢をとり続けてきたことだ。

B:へーそうなんだ。経済的にも軍事的にも支持しているってわけ?

A:そうだよ。イスラエルの最大の援助国はアメリカだ。またイスラエルが国連から様々な非難決議を受ける際にも、次々と拒否権を連発して決 議させないようにもした。それでも非難決議は数え方にもよるけど、30数回ある。ちなみにサダム・フセイン政権下のイラクはその半分くらいの数だよ。

B:え!そうしたら、何でイラクだけが攻撃を受け、イスラエルは攻撃を受けないの?

A:さー、それはアメリカの為政者に僕も聞いてみたいよ。そこのところがダブルスタンダードだっていわれる所以だ。ちなみに世界中には国際 社会から非難決議を受けている国はあるけれど、アメリカの論理からすれば、それらの国全てに軍事介入しなければならなくなる。日本もペルーのフジモリ元大 統領を匿ったということで、国際機関から非難されたし、アメリカ自身だって中南米への介入で、非難決議を受けている。アメリカが、決議を受けた国には介入 するという理念に忠実であるならば、日本にもそしてアメリカ自国にも軍事介入しなければならない。

B:そんなことは有り得ないだろうけど。それに今はアメリカはそれほど国際機関の決議も重要視してないようだ。

A:そうだね。現在は国連を迂回して、単独主義を強めている。それに一貫した理念ではなく、自国の利害で動く場合が多い。自国に都合のよい 国、利害の深い国には支援をして、そうでない国には「悪の枢軸」とか「不安定な弧」とかレッテルを貼り、攻撃をしている。つまり自国の利害が絡む紛争のみ に「正義」を掲げて圧倒的な軍事力で介入している。このことがアメリカへの敵意をより増幅させる原因になっている。

B:ムハンマド君が言っていたけれど、中東地域には民主的でも自由主義でもない国があるけれど、それらの国にアメリカは相当な援助を与えているらしい。

A:特に産油国が挙げられる。石油利権を王族やその取り巻きが独占して、それとアメリカやメジャーと言われる大手石油会社がかなり密接に結びついている。このような国はほとんど選挙もなく、国民の間でかなり経済格差もあるんだ。

B:民主を掲げながらも民主的でない国を援助しているのか。明らかにダブルスタンダードだ。

A:多かれ少なかれ、このような二重基準はどこの国にもあるし、政治の世界はそんなものかもしれない。ただアメリカの政策は中東に非常に大 きな影響を与えていることも確かだ。また聖地メッカとメディナを有するサウジアラビアに軍隊を駐留させていることもイスラム教徒にいい印象を与えていな い。当該地域の民衆は、自国の腐敗した指導者やそれを支援し軍隊を駐留させているアメリカに対して大きな不満を持っている。アメリカと中東の一部の指導者 は共犯関係にあり、その地の民衆を苦しめている構図があるんだ。