二酔人四方山問答(11)

岩木 秀樹

B:衆議院解散で、日本の夏は暑くなってきたね。

A:いや日本だけでなく、イラクでもかなりヒートアップしている。

B:え、選挙でもあるの。

A:そうじゃなくて、イラクの治安が一層悪化していて、サマワでも8月7、8日に大きな銃撃戦があり、死者2名負傷者67名がでたそうだ。

B:そんなのニュースにでていたっけ。衆議院解散のニュースばっかりで気がつかなかったよ。

A:サマワは「非戦闘地域」ということで自衛隊が派兵されたんだけれど、もし騒乱が続き、自衛隊に何らかの加害や被害があれば、「郵政選挙」から「イラク選挙」に争点が移るかもしれない。

B:サマワの騒乱の原因は何なの。

A:一向に回復しない電気や水の供給を求めて、1500人という過去最大規模の民衆がムサンナ州知事庁舎前でデモを行い、その一部が暴徒化したようだ。それにはシーア派のムクタダ・サドル師支持者も参加し、対戦車ロケット砲や手投げ弾が使用され、激しい銃撃戦もあった。

B:すごい状況だな。

A:まだある。迫撃砲弾2発が州庁舎付近に打ち込まれ、警察幹部が武装勢力に射殺され、警察車両3台が焼かれた。そのような中、州議会は知事の解任を決議し、知事は夜間外出禁止令を出した。

B:このような状況って、ほとんど戦争じゃないの。誰が考えても非戦闘地域ではないよ。ところで自衛隊は何をしているの。

A:危険なので、当然駐屯地にこもりきったまま。

B:何をしにいったんだ自衛隊は。電気や水の供給もままならず、民衆の不満は高まり、治安は悪化するばかり。危ないときは逃げて、オランダ軍やイギリス軍に守ってもらう。

A:自衛隊をなんとしても海外へ派兵したいと思っている右派勢力の思惑による派兵だ。アメリカの要請でもあるから、断れないとの言い訳もで きる。行かされる自衛隊員もかわいそうだと思う。自衛隊法第3条には「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に 対しわが国を防衛することを主たる任務とし」とある。遠いイラクのサマワの地で任務に就くことが、わが国を防衛することなのか、疑問に思っている隊員も多 いし、その問題が日本各地で裁判になっている。

B:命令だから嫌々来て、サマワの人々からはそれほど喜ばれず、危ないときには他国の軍隊に守ってもらうなんて、自衛隊員も忸怩たる思いだろうな。

A:いや戦闘行為に勇ましく参加し、戦果を挙げるよりましかもよ。ところでサマワだけでなく、8月に入ってイラク各地で戦闘行為が続いている。

B:へーそうなんだ。

A:3日にはバグダード北西200キロのところで、海兵隊員14人と通訳1人が死亡した。道路爆弾による米兵犠牲者としては最大だ。6、7 日にかけて、米軍兵士やイラク人警察官が30人以上亡くなった。このような状況の中、アメリカの最新の世論調査では、ブッシュ大統領のイラク政策に対する 支持が過去最低の38%になった。

B:アメリカの世論もそろそろ潮時だと判断する日も近いような気がするよ。日本も撤退戦略を考えた方がいいんじゃないかな。

A:そうだね。今まで述べたこれらの数字は米兵を中心としたもので、イラク人の被害はほとんどカウントされていない。アメリカでも日本でも報道されていない。つまり人間扱いされてないということだ。このことがイラク戦争の本質を象徴していると思う。

B:そうそう、ある人が言っていたけれど。イラク戦争の始めの頃、米国の第何軍がイラクのこの町を落とし、海兵隊があの町を包囲しなどと、どのマスコミもイラク全土を俯瞰図で説明していた。あの視点は米軍の司令官の視点だと言っていた。

A:その通りだと思う。私たちも爆弾が空から降ってきて、地獄絵図となるイラクの民衆の視点ではなく、アメリカの軍人の視点でイラク戦争を見てしまった。現在の報道もあまり変わっていない。そのことは重々自戒してイラク情勢を見なければと思う。