二酔人四方山問答(12)

岩木 秀樹

B:この前、学生のみんなからイスラームに関する質問が色々寄せられるって言っていたけれど、他にどんなものが多いの。

A:イスラームはラマダン(断食)などがあり、戒律が厳しそうな宗教という印象があるようだ。

B:それは僕も感じるよ。1日5回もお祈りをしなくてはいけないし、メッカに巡礼もしなくてはいけない。

A:いけないというわけではないけれど。

B:でもラマダンはきついと思うよ。日中は飲まず食わずだよね。

A:確かに。厳密にいえば、つばを飲み込みことや喫煙、性交もいけないとされている。でも慣れればそうでもないらしいよ。

B:夏の時期にラマダンが来たら、日中の時間が長くなるし、暑いし、相当大変だと何かの本に書いてあった。

A:イスラーム暦は太陰暦で一年は354もしくは355日となり、少しずつずれてくるんだ。だからイスラーム暦第9の月のラマダン月も少しずつ早まってくることになる。

B:夏に飲まず食わずだと、倒れちゃう人も出てくるんじゃないの。

A:イスラームはその辺は寛容で、例えば肉体労働者、軍人、妊婦、旅人、老人や子供、病人はラマダンをやらなくてもよいとされている。もし何らかの事情でラマダンを出来なくても、ラマダン月が終わった後でやってもよいとされている。

B:へーそうなんだ。でもなぜラマダンをするんだろう。

A:ラマダン月に断食をした者は過去に犯した罪が許されると言われている。また断食をすることで貧しい人の気持ちを理解できたり、食べ物の ありがたさがわかるということもある。また全世界で多くのイスラーム教徒が断食をしていると思うと連帯感が強まることも考えられる。断食は体に良いという 人もいるよ。

B:なるほど。

A:日没後に、親類や友人を招いて、一緒に食事をすることは共同体の強化にもつながっている。驚くべきことに、ラマダン月の方が普通の月よりも、食料消費量が上がるということだ。これは日没後に、盛大に食事をとるということからきている。

B:断食月の方が多く食べているということか。驚きだ。

A:お腹を空かせ、みんなでわいわい食べる食事は格別だ。僕がエジプトに行っていたとき、たまたまラマダンで、異教徒の僕にも日中食事をと ることは何となくはばかられた。でも日没になると、その辺の親父さんに誘われて、道ばたで一緒に食事をした経験はとても楽しくて、イスラーム教徒のホスピ タリティには感動した。またイスラームは色々な意味で生きている宗教だとも思った。形骸化しつつある欧米のキリスト教とは違うと思った。

B:イスラーム圏ではみんなラマダンをやっているの。

A:それが地域によって違うところがおもしろいんだ。トルコではラマダンをしない人もかなりいるし、ラマダン中に居酒屋で日中に酒を飲んでいる人もいた。これを見てびっくりしたよ。

B:本で読んだ知識はあまり当てにならないということかな。

A:イスラームが一枚岩で、全世界のイスラーム教徒が同じように考え、行動すると考えない方がいいと思った。イスラームという教義を実体化 するのではなく、世界の各地にイスラームを信じる多様な人々が現実に試行錯誤しながら生きているということを理解することが大事だと思う。