東シナ海の浪高し

ねこくま

「春暁」ガス田にミサイル駆逐艦など5隻の中国軍艦が出現しました。昨年11月原子力潜水艦が日本の領海に迷い込んで海自の対潜哨戒機の追跡を受けたばかりです。やってきたのは写真で見る限りソブレメンヌイという中国がロシアから購入したばかりの新鋭ミサイル駆逐艦です。

従来中国海軍の艦艇は電子装備とかミサイルが旧式で、航空攻撃への防空能力をほとんど持たないのが特徴でした。しかしロシア製ソブレメンヌイ駆逐艦は中 国海軍で初めて飛来する航空機を迎撃できる防空能力を備えた中国期待の新鋭艦です。まあようするに虎の子の軍艦を出してきたことになります。

さらに中ロ両国の軍隊約1万人が参加する合同軍事演習「平和の使命2005」が、ロシア極東、中国山東半島および周辺海域で実施されたそうです。両国初 の本格的合同軍事演習で、台湾解放を視野に入れたとも対米戦を想定したとも言われています。緩慢ですが着実な中国の軍事力近代化が進んでいます。一方で陸上自衛隊がロシア製火器を輸入するという記事がでていました。自衛隊の仮想敵がロシア製火器を装備している可能性が高いので、 実際に自衛隊の装備を射撃してみて対弾性能とか防御能力を実地で試験するのが目的のようです。昔ロシアが日本の航空自衛隊に、ロシアが中国にも売った SU27という新鋭戦闘機を空中戦の訓練相手に買わないかと売り込みに来ました。このときは日本は相手にしなかったようですが、今度は小銃や対戦車ミサイルに限らずロシアから色々購入することになるかもしれません。

米軍との合同作戦を前提に戦力が構成されている自衛隊ですから、当然アメリカが仮想敵とする中国軍事力との衝突を準備し始めているのでしょう。

海の向こうでは、日中戦争をテーマにしたオンラインゲームが「若者の愛国主義と民族精神を育てる」ために中国で開発中と伝えられていま す。参加者が兵士に扮して日本軍と戦うロールプレイング・ゲームだそうです。中国の指導者たちが、アメリカの軍事力に正面から対決できない大衆の憤懣を、 侵略戦争の歴史を受け入れない日本に転化することはたやすいでしょう。それでも日本の政治家たちは、中国やアジアのナショナリズムを逆なでする靖国参拝を 強行しています。

ここは少々冷静になって状況の沈静化を図らなければならないところです。そこで客観的な数字の登場となります。防衛白書の日中軍事力比 較を見てみましょう。17年度防衛白書によれば中国陸上兵力160万人(日本14.8万人)、中国海上兵力750隻(日本150隻)、中国航空兵力 2390機(日本480機)です。しかも中国の国防費は17年連続で10%以上の伸びを達成しているとされています。

白書の巨大な数字を見れば中国軍事力は巨大で、日本が喧嘩を売るどころか極東アメリカ軍の力を借りなければ日本の防衛も覚束ないかに見 えます。しかし中国軍の実態は、数は多いものの外洋で作戦可能な軍艦は件のロシアから最近輸入されたごく少数のミサイル駆逐艦や潜水艦のみで、弾道ミサイ ル戦力を除外すれば沿岸地域に限定された中国の軍事力投射能力が小規模で限定的なものであるのは周知の事実です。

一方で最先端軍事技術を満載するイージス艦を中心に構成される日本の海上自衛隊は、世界有数の海軍力を誇っています。軍事力の比較は複 雑で単純化が難しい問題です。それ故従来から相手の軍事的意図と能力を取り違えて、軍事力強化のエスカレーションを引き起こし、戦争を引き起こすのが世界 政治の現実です。

世界最強の軍事力を保有するアメリカから敵視され、国内には「台湾解放問題」を抱え、わずか半世紀前に中国大陸に侵攻した隣国日本は排外的なナショナリズムを強めている。これでは中国ならずとも防衛力強化に乗り出さざるをえないでしょう。

領土問題とナショナリズムは、政治家が大衆の支持を得るためにもてあそぶ道具としては危険すぎます。領土紛争は国境線をめぐって長期的で 本格的な戦争を引き起こします。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では、激高した狂気のナショナリズムが引き起こす悲劇を目の当たりにしたばかりです。

キッシンジャーは中国の軍事力はアメリカより20年は遅れている。しかし20年後にはその遅れは今より遙かに縮小されているだろう。中国のグローバルパ ワーとしての台頭をアメリカは受け入れるべきだと言明しています。地理的条件からも現実の経済的結びつきからも日本は対中関係を独仏関係並みに改善しなけ ればならないくらいの発言を、日本の政治家からも聞きたいものです。