二酔人四方山問答(14)

岩木 秀樹

B:朝鮮の旅で最も印象に残っているのはどんなことなの。

A:いろいろあるけれど、あえて一つだけあげると、子供達かな。モラン第1高等中学校や少年宮での演奏や演舞、アリラン祭も多くは生徒や学生がやっていた。どれも大人顔負けのほとんどプロといってもよかった。

B:あー、たまに日本のテレビでも放映されているものか。でもちょっと作られた笑顔が子供っぽくないけど。

A:確かにそういう側面はあるけれど、どこでどのような笑顔をし、どこでお客さんの手を引くのかを熟知していた。私たちの心を和ませるプロだった。それにあれほどの技術を身につけるのは一朝一夕には出来ないだろう。あの笑顔の裏には相当の努力があったと思う。

B:そうか。普段の学校生活も見たの。

A:まだ夏休みだったようだけれど、私たちのためにわざわざ来てくれた人もいたようだ。 教室ではブラウスに赤いスカーフをした小学校高学年くらいの子供達が歓迎してくれた。モラン第1高等中学校はたぶんエリート校だと思うんだけど、理科室や生物の剥製や視聴覚室、講堂などずいぶん充実していた。日本の私立学校並だったように思う。

B:そうなんだ。

A:帰りに校庭を見たら、数十人の男子生徒がサッカーをしていた。その光景は万国共通だと思った。そうそう、話は変わるけれど、屋外での青 年舞踏会も平壌市内各所で行われていた。8月28日が青年の日か何かで、それを記念して行われるそうだ。その舞踏会が男女の出会いの場になるというのがお もしろかった。日本などで報道されてる朝鮮のイメージとは違う、普通の青年たちの生活や恋愛を少し見たような気がした。日本人も飛び入り参加していたよ。

主体思想塔前での舞踏会
主体思想塔前での舞踏会。向こうの川は大同江。

B:へー、おもしろそうだね。

A:アリラン祭は圧巻だった。10万人以上が入る巨大なスタジアムで、マスゲームや人文字が行われた。単に見せるだけではなく、民族の苦難の歴史を表現しているので、飽きなかった。しかも10月までこれをほぼ毎日やっているというのを聞いて、とてもびっくりした。

B:アリランてどういう意味なの。

A:「あー、リラン」という意味で、リランは男の人の名前。リランとある女性は恋人同士で、ある時リランは村からでることになった。リラン がいなくなった後に、地主がその女性に言い寄ってきた。その現場にちょうどリランが出くわし、再び村を後にした。リランを追っかけて、その女性は「あー、 リラン、あーリラン、いかないで、戻ってきて」と叫んだそうだ。大体こんな話がベースになって、アリランが生まれたそうだ。

B:へー、「あー、リラン」だったのか。男女の話と民族の歴史をだぶらせて、アリランの公演は行われているのか。

アリラン祭
アリラン祭の一場面

A:そうそう、「南男北女」という言葉知っているかい。

B:なにそれ。知らない。

A:李氏朝鮮の頃から言われているらしいんだけど、男は朝鮮の南の方がハンサムで、女は北の方が美人とされている。ほとんど迷信かもしれな いけれど、でも確かに美しい女性が多かった。外国人と接するスチュワーデス、ガイドやウェイトレス、ホテルの従業員には才色兼備の女性を配置しているよう に思う。物腰も柔らかく、あーアジアの女性だなと感じた。

B:なんかだんだん朝鮮に行ってみたくなってきたよ。恐ろしい国だとばかり思っていたよ。