「靖国参拝問題」について(3)

今井 康英

今回は、「靖国参拝問題」について述べます。

小泉首相の靖国参拝について、高裁レベルで次々と判決が出ました。朝日新聞(9月29日)によると、同日の東京高裁(浜野惺裁判長)の判決では、2001 年8月13日に実行された参拝について、「自己の信条に基づいて行った私的な宗教上の行為か、または個人的な立場で行った儀礼上の行為」と位置づけ、「内 閣総理大臣の職務行為として行われたとは認めがたい」とした。つまり、「私的参拝」であり、憲法判断はしていない。

毎日新聞(9月30日)によると、同日の大阪高裁(大谷正治裁判長)の判決では、2001年8月13日、2002年4月21日及び 2003年1月14日に実行された参拝について、少なくとも行為の外形において、内閣総理大臣としての「職務を行うについて」なされたものと認定。各参拝 は「憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たる」と判断した。つまり、「公的参拝」であり、憲法違反である。

読売新聞(10月5日)によると、本日の高松高裁では、水野武裁判長(紙浦健二裁判長代読)は、原告側の訴えを退けた1審・松山地裁判決 を支持、原告側の控訴を棄却した。憲法判断には触れなかった。小泉首相の靖国参拝を巡っては、同様の集団訴訟が全国6地裁に7件起こされており、これまで 計10件の判決が言い渡されている。2004年4月の福岡地裁の判決と、今年9月の大阪高裁判決以外の6件の1審判決や7月の大阪高裁(別の原告団)、9 月東京高裁の控訴審判決は、今回の判決同様に憲法判断に踏み込まなかった。つまり、地裁であれ、高裁であれ、「良心」のある裁判官のいる裁判所が憲法判断 をすれば、 「違憲」判決以外はないと言うことだ。

さて、時事通信(9月30日)によると、小泉首相は同日午後の衆院予算委員会で、大阪高裁判決について「総理大臣の職務として参拝してい るわけではない。憲法違反であるとは思っていない」年内に参拝するかどうかについては「適切に判断する」と述べた。「戦没者に対する哀悼の誠をささげるこ とと、二度とあのような戦争を起こしてはならないという気持ちで参拝している」「一国民として参拝するのがどうして憲法違反なのか理解に苦しんでいる」と 述べ、判決に不快感を示した。

また、日経新聞(同日)によると、小泉首相は同日夕、大阪高裁が違憲と判断を下したことについて、「分かりませんね。何で違憲なのか」と 憮然とした。今回の判決が、今後の靖国参拝の判断に影響を与えるかに関しては「いや、ないですね。勝訴でしょう」と強調。憲法の政教分離規定との整合性に ついても「それも厳格に対応しているつもりですけどね」とし、「伊勢神宮参拝は、これはどうなんですかね」と記者に反問した。

現に内閣総理大臣の職にある者が靖国神社に参拝して「内閣総理大臣」と記帳していながら「一国民」として参拝したなどと言い張る人物が、 実際に内閣総理大臣の職に居続けられることの方が理解に苦しむと言うべきだ。 もちろん、総理の職にある内は、伊勢神宮参拝も自粛が当然だ。戦後60年にして、総理の職にある者が「靖国参拝は当然で、違憲だと思わない」と公言してい るようでは、 またそれを国民が放置しておくようでは、いつまでもこの国で戦後未処理問題が片付くはずがないと言わざるを得ない。むしろ、いずれ靖国神社に祀るべき英霊 (戦死者)をつくり出すことにもなりかねない。

今まさにイラクに派遣された自衛隊員は「戦地」にいることを忘れてはならない。この際、主権者として国民は今一度、憲法前文に銘記した 如く、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、この憲法を確定したことを想起すべきではないかと思います。