二酔人四方山問答(16)

岩木 秀樹

A:朝鮮で、私たちが泊まったホテルやレストラン、お土産屋は全て外貨が使えた。ユーロ・ドル・中国の人民元、日本円など。基本的な表示はユーロだった。

B:やっぱり、アメリカとの敵対関係があるから、ドル表示をしないのかな。

A:世界的に見てもドルよりもユーロの方が使われるようになってきている。中東でもその傾向がある。やはりアメリカの単独主義的軍事・外交政策に対する反発があると思う。

B:日本円はどうだったの。

A:もちろん使えたよ。私たちが行くところはどこでも使えた。硬貨まで使えた。世界中で日本円が使えるところは多少あるかもしれないが、硬貨まで使用可能なのは、朝鮮くらいじゃないかな。

B:へーすごいね。

A:もっとすごいのが、朝鮮のお金を見ることも、手にすることも無かったことだ。普通の海外旅行では考えられないことだ。だから私たちに とっては外貨が使えるというよりは、外貨しか使えないということだった。でも無理を言って、「お釣りは朝鮮ワォンでください」と言ったら、奥の方から持っ てきてくれた。ちょっと嫌な顔をされたけどね。その時初めてレートを知った。だいたい1円は1,3ウォンくらいかな。

朝鮮の100ウォンと50ウォン
朝鮮の100ウォンと50ウォン

B:やっぱりその国に行ったら、その国のお金を見てみたいし、使ってみたいよね。ところで平壌の街並みをどうだった。

A:広い道路に車はわずかで、信号機は一つも無かった。平壌に無いのだから、朝鮮には一つも信号が無いんだろう。車が少ないのは、「わが国 は公共交通が発達しているから車が必要ないのです」との公式見解があった。そうそう信号がない代わりに、美しい婦人警官が交通整理をしているんだけれど、 機械的な動きでおもしろかった。

北朝鮮:交通整理をする婦人警官
交通整理をする婦人警官

B:ところで、他の交通手段は何。

A:バスやトローリーバス、地下鉄、そして自転車に徒歩だ。そうそう地下鉄とトローリーバスに乗ったよ。

B:どうだった。

A:トローリーバスは私たちだけの貸し切りになった。停車場で待っている人が恨めしそうに見ていた。申し訳なかったな。

B:そうだったんだ。地下鉄はどうだった。

A:地下100メートルにあったよ。これほど深ければ、核シェルターや防空壕としても使えるかもしれない。ただ平壌には大同江という川があ り、地盤が緩いので深く掘る必要があると言っていた。駅構内にはシャンデリア、壁画、彫刻などがあり、地下宮殿とも呼ばれているらしいよ。

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地下鉄のホーム

B:へー、それはすごいね。

A:地下鉄にしてもトローリーバスにしても旧社会主義圏の車両を使ったり、駅などの雰囲気もそのような国に似ていると同行の先生方は言っていた。そうそう、平壌の街並みも 大きなアパートや巨大なモニュメントが多く、これまた旧ソ連の街並みにそっくりだとも言っていた。

B:今じゃあ、旧ソ連の大都市も変わって、ネオンぎらぎらで利益やお金が最優先されているようだけれど、そのうち朝鮮もそうなっちゃうのかな。

A:それはそれで寂しいね。将来、「古き良き平壌の街並みよもう一度」なんて懐かしむ時代が来るかもね。今は電力の問題で夜の平壌は真っ暗だけど、将来ネオンでぎらぎらになったりして。

B:夜は真っ暗なんだ。

A:だから電力問題を解決するために、原子力発電所が必要だと言っていた。真っ暗だけど、人はずいぶん歩いていた。女性も1人で気楽に歩いているところを見ると、治安はかなり良さそうだ。

B:考えてみれば、夜は暗いのが当たり前で、何十年か前の日本もそうだった。夜が明るすぎるのも問題だよね。