米英によるイラク攻撃の速やかな停止を要求する ―自制心もてぬ主権国家から武力行使権限を剥奪する国際社会システムを創造しよう―

玉井 秀樹

今回の米英によるイラク攻撃はきわめて遺憾であり、その速やかな停止を要求する。この武力侵攻は一国の体制転覆を目的とした国連憲章の精神にもとる国家 行為であり、実際の攻撃に転じる以前から、武力による威嚇をもって国連安保理決議の遵守を要求するなど、米国・ブッシュ政権は当初から武力行使を前提とし た対イラク圧力をかけていた。同政権の自制心の欠如した政策こそが、武力侵攻以外の事態打開策を不可能にした主たる要因であると考えるが、米国の自制心を 失わせた国際社会にも問題がある。

イラクでの事態について言えば、まず、国内における重大な人権抑圧と中東地域において軍事的覇権を追及するという、イラク・フセイン政権自体の重大な過 誤を指摘しなくてはなるまい。しかし、そのように問題のあるイラク政権の軍事大国化を可能にしたのは米国の対イラク軍事支援であったことは看過できない。 国際社会におけるパワーの源泉を軍事力においている大国、しかもかつてはその力を与えてくれた大国が要求する武装解除に説得力はない。イラクを増長させた 原因は米国政権自らにもある。

米国は国際社会でフセイン政権が大量破壊兵器を保有することの危機を訴え、国連安保理常任理事国5カ国もそれに同調した。しかし、彼らは自らが大量破壊 兵器を保有することが危険ではないということを一切証明しなまま、そうした兵器の独占体制を変えようとしていない。大量破壊兵器は存在そのものが人類に とっての災厄なのであり、持ち主によって危険度が変わるわけではない。常任理事国自らの大量兵器廃絶への努力も示さないままに要求する武装解除に説得力は ない。イラクを増長させた原因は国際社会にもある。

2001年の9.11事件については不明の部分多いが、今や象徴的な対米抵抗運動とみなされている。こうした対米抵抗運動を”テロリズム”として恐怖 し、過剰報復する米国政権の反応には、無反省な独善性さえみることができる。しかし、国際社会は、暴力的抵抗運動の不適性を糾弾するとともに、そうした抵 抗についての真摯な内省ができる米国となるよう説得・協力すべきところ、米国政権に恐怖心=反撃欲求の抑制のみを要求し続けた。そのためついに米国政権の 自制心を強化することができず、攻撃欲求の抑制にも失敗した。

今や地球上に比肩しうるもののない軍事超大国になった米国には、その力にふさわしい自制的行動が要求されると考える。しかし、9.11事件から今回のイ ラク侵攻にいたる過程をみれば、そのような一方的な米国への期待が自然に実現するようには思われない。そこで、恐怖心=武力依存性を抑制するという過重な 責務をひとり米国にのみ押し付けることがないような国際社会のシステムを構築することを訴えたい。すなわち、あらゆる軍事力を国際社会の統制下におくとい うことである。今日の国際安全保障システムである国連システムの基礎となったカント平和論の完結、つまり、主権国家による常備軍廃止の完全実施を今こそ推進すべきであると訴える。

21世紀の人類社会はすでに軍事力を行使する必要のない紛争解決、人権回復、社会変革のシステムや技法を開発、発展させてきている。主権国家から軍事力 行使権限を国際社会に譲渡し、民主的な国際社会警察の創設によって、このような非暴力システムのグローバリゼーションを可能にしようではないか。