イラク攻撃に思う

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投稿者:木我 公輔

イラクの隣国シリアに昨年から在住しています。今回の米国主導の対イラク戦争に私は反対です。侵略者は米英の側です。反対の理由は、戦争による犠牲と他国 の武力による体制転覆が国際社会にもたらす弊害です。イラクの現体制によって、イラク国民が抑圧されているのは確かですが、彼らの大統領は彼らが決めるべ きです。イラク国民は抑圧的なサッダーム=フセイン体制に不満を持っていますが、空爆による死を求めていません。

米英のイラク侵攻開始から9日が過ぎました。私は毎日自宅でこの戦争の報道を見ています。1991年の湾岸戦争とこの戦争が大きく異なるのは、カタルの 衛星放送アルジャジーラなどによってミサイルや爆弾の飛んでいく方向、攻撃を受けるイラク国民の様子が同時に世界に発信されていることでしょう。11年前 の湾岸戦争の際、私は高校生で米軍の艦船からミサイルが次々と発射され、飛行機が爆撃を加えていく映像を見せられました。当時の私にはこれがまるでテレビ ゲームのように感じられました。

日本では規制のため、放映されていないかもしれませんが、バスラの病院の様子が撮影され、放映されていました。運び込まれた子供の腕の肉が剥ぎ取られ、骨が見えていたのです。空襲で殺されたバグダード市民の死体も見ました。

ブッシュ大統領は小泉首相との電話会談で「罪なき人々の最小限の犠牲」で勝利すると述べました。これら犠牲になったイラク国民は何のための犠牲なので しょうか。大量破壊兵器の発見、破壊でしょうか。しかし、大量破壊兵器を失くすための戦争で、大量破壊兵器が使用されているのです。しかも、米軍は300 箇所以上の疑わしい大量破壊兵器関連施設のリストをもっていて、イラクの大量破壊兵器開発の証拠を探すのだといいます。なぜ、このリストを国連査察団に渡 さなかったのでしょうか。実際に米国が査察団に渡したのは稚拙な偽造文書でした。

多くのシリア人が、アラブの石油支配こそが米国の真の戦争目的であると考えています。しばしば、彼らはイスラエル建国以来のアラブに対する一貫した米国 の陰謀を指摘します。彼らは学者でもなんでもなく、普通の市民の直感的な考えです。私には今回の戦争を見て、こうした考えがかなり本質をついているように 思えます。

現地での対日感情も微妙なものになっているようです。シリア人はそれほどでもありませんが、シリア国内のパレスティナ人たちの中には、日本人に日本政府 の攻撃支持をなじる人もいたそうです。小泉首相の攻撃支持表明はこちらでも報道されています。こちらの人たちは日本政府の態度も日本での反戦デモのことも 報道を通してよく知っています。

日本は中東で植民地をもった経験がありません。だから、中東の人々は大変親日的で、欧米諸国との関係とは違うのだとよく言われてきました。しかし、今回 の攻撃支持表明で中東で日本は初めて手を汚したように思えます。アラブ世界の人々の恨みを買うことは日本の国益にかなえるとは私は思えません。北朝鮮の脅 威が支持の理由とされていますが、武装解除に応じても攻撃されるのでは、誰が軍縮に応じるというのでしょうか。むしろ、中途半端な武装ではなく、核武装を もって攻撃を抑止する方向に向かうのではないでしょうか。

戦争が始まってしまった現在、求められるのは、停戦と米英軍のイラク領内からの即時撤退です。その上で、査察団の望む期間をもって査察を再開し、イラクの復興・民主化に向けた国際社会の努力が為されなければならないと私には思えるのです。