イラク攻撃への所感

その他

投稿者:林 亮

軍事力の恐怖で世界を思うがままにすることは許されない。
大量破壊兵器を廃棄し戦略爆撃を禁止する。
21世紀にふさわしい非暴力の秩序を構築せよ。

<「衝撃と畏怖の攻撃」は戦略爆撃そのものである>

3月22日のCNNは、バグダッドへの空襲開始を「shock and awe=衝撃と畏怖の攻撃」と伝えた。この戦略は激烈な空爆の与える恐怖でイラク国民自身にフセイン政権を打倒させる戦略と説明された。

この米国の考え方は「民間人を標的にして、都市爆撃の恐怖で敵国の抵抗の意志を崩壊させ、政治的目的を達成する」戦略思想とほとんど完全に一致する。これは戦略爆撃の思想そのものである。

<戦略爆撃は20世紀の戦争において恐怖と殺戮を生み出した発明物である>

戦略爆撃は20世紀に始まった。スペインの都市ゲルニカへの都市爆撃、そして旧日本軍の中国都市重慶への爆撃、これらは無防備の都市住民を標的とするこ とで敵国に恐怖を与え継戦意志を崩壊させる目的で実行された。これらの都市爆撃はやがて米英連合軍によって遙かに大規模に敵国を焦土と化す戦略爆撃として ハンブルグ・ベルリン爆撃、東京大空襲、そして広島・長崎原爆投下へと行き着く。

「都市への大規模爆撃で相手を屈服させる戦略」は、核兵器の巨大な破壊力と弾道ミサイル兵器の距離を超越した即時性を具有することで、核抑止戦略として究極的な形態に到達する。

歴史的に言っても核兵器を都市に投下したのは米国だけであり、米国は今も大量破壊兵器の最大保有国である。

<冷戦時代の核均衡の大前提は核保有国の核軍備縮小・廃棄の約束であった>

冷戦時代の「平和」はNPT(核拡散防止条約)とCTBT(包括的核実験禁止条約)による米ソ間の核の恐怖の均衡によっていたとされる。しかしこの均衡は5核保有国の核独占を国際社会が黙認することによって成り立っていた。

しかしこの黙認は核保有国は核兵器の削減・廃止実現に向かって絶え間なく努力する義務履行が大前提となっていた。いわば冷戦時代の国際秩序は非核保有国の全面的核廃絶への希望によって成立していたといえる。

我々は大量破壊兵器の全面的廃棄と戦略爆撃禁止の国際的合意形成を目指すべきだ。

米国は大量破壊兵器を保有し、戦略爆撃に使用できるが他国にはこれを認めないと言う立場はとうてい国際社会の合意を得られるものではない。

<大量破壊兵器の全面的廃棄と戦略爆撃禁止の国際的合意の上で、軍事力に依存しない理解と合意による世界秩序を目指せ>

世界的な情報共有化の進行は停止できまい。大量破壊兵器は国際社会の広範な合意なしにその拡散を防止することはできないだろう。しかも経済のグローバル 化によって世界経済の脆弱性は拡大するばかりである。米国をはじめとする軍事強国の巨大な軍事力でもこの敏感な世界的情報通信流通のネットワークは防衛し きれないだろう。

21世紀の国際社会には、米国も含めた大量破壊兵器の保有と開発禁止、戦略爆撃を世界的に禁止する合意形成が不可欠である。その上で軍事力の脅しに依存しない理解と合意による世界秩序形成への努力が始められなければならない。

本文は2003年3月24日開催の創価大学平和学会緊急シンポジュウムでの林報告に手を加えたものです。