アメリカ発展途上社会論 ―ラトガース大学での研究を終えて― (PDF)

中西 治

私は2002年4月1日から2003年3月29日まで1年間、創価大学から派遣されてアメリカ合衆国 (以下、アメリカと略称) ニュージャージー州立ラトガ-ス大学地球的変化統御センターで訪問研究員として研究する機会を与えられた。私のアメリカ訪問は1973年に同国国務省の招待で初めて50日間同国に滞在して以来10回目である。

私は小学校(当時は国民学校と称していたが)時代から人間の歴史に興味を抱き、学んできた。1945年8月15日の第二次大戦終結後はこれからの世界はどのようになるのかに関心を持ち、1952年に大学で国際関係を研究し始めた時に地域研究の対象として私は躊躇なくソヴェト社会主義共和国同盟 (以下、ソヴェトと略称) を選んだ。中華人民共和国は生まれたばかりであり、社会主義・共産主義と言えばソヴェトの時代であった。私が共産主義やソヴェトに関心を持ったのはあの戦争中に世界各国においてもっとも勇敢に命を賭して戦争に反対したのが共産主義者であったからである。

私はソヴェトの経済と政治と社会、ソヴェトを中心とする国際関係、とくにソヴェトとアメリカの関係を研究するとともに両社会の比較研究を始めた。その後、大学において国際関係論とともに国際社会論を担当するようになり、さらに研究領域を広げ、中国と日本を加えて四つの社会を比較するようになった。ソヴェトは社会主義の先進国、中国はその後発国、アメリカは資本主義の先進国、日本はその後発国。これらの社会を比較研究することによって地球社会の将来を予測できるのではないかと考えたからである。

私はすでにソヴェトの内政と外交の諸問題、ソヴェトと中国との関係、ロシアとアメリカとの関係、ロシア社会とアメリカ社会との比較については一連の研究結果を発表している。

現在私が取り組んでいるのは21世紀にふさわしい地球社会論の確立である。本稿はその一環として現代において唯一の超大国と言われるアメリカを取り上げ、アメリカはいかなる社会であるのかを検討したい。最初にラトガース大学と日本との関係を紹介し、ついでアメリカの歴史を振り返りながら奴隷制の問題、ステートと同盟との関係、人種・宗教・貧富の問題、政治と外交の問題などを考察し、アメリカはまだ未成熟な発展途上の社会であることを明らかにしたい。

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  • はじめに
  • ラトガース大学と日本
  • 先住民の共同体からヨーロッパの植民地を経て独立国家へ
  • 今も続く人種分離主義者と奴隷制廃止論者の抗争
  • 法的には複数の一邦国家の同盟、政治的には一つの多邦国家
  • 広くて豊かな社会と貧しい人々
  • 不公正な選挙と金持ち民主主義
  • 自己中心の力の信奉者
  • むすび

『ソシオロジカ』Vol.28, No.1 (通巻47号) 創価大学社会学会、2003年12月20日、1-26ペ-ジ。