「世界情勢」について(3)

今井 康英

前回に続き、「世界情勢」について述べます。

20日、プーチン大統領が2000年9月以来5年ぶりに来日しました。 21日に首相官邸で日露首脳会談が行われ、共同記者会見がありました。 毎日新聞(11月21日)によると、 首脳会談で、北方領土問題をめぐっては、北方四島の帰属確認後に 平和条約を結ぶとした「東京宣言」(93年)の再確認を小泉首相が求めたのに対し、 大統領は宣言に言及せず、具体的な進展はなかった。 両首脳は領土問題の解決を目指し協議を継続することでは一致したが、 共同声明(政治文書)の発表は見送られた。 両政府は首脳会談後、経済分野を中心に12の合意文書に署名。 東シベリアのパイプライン建設に関し「来年のできるだけ早い時期」までの合意を 目指すとしたが、日本が求める太平洋ルートの優先着工は明記されなかった。 ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟を承認する2国間合意や、 ロシアの退役原子力潜水艦5隻の解体に日本が協力することも盛り込まれた。 北方領土問題については、

首相  北方領土の帰属問題を解決し、平和条約を締結するという認識は共通しているが、 立場には相当開きがある。さまざまなレベルで協議を続け、溝を埋める努力をしていく。 良好な経済協力を強化し、協力できる分野を広げ、 将来の平和条約締結に向けた環境を醸成していきたい。

大統領  双方に善意さえあれば、双方にとって受け入れ可能な解決策を見いだし、 四島の住民、そしてロシアと日本の国益に合致する解決策を見いだすことができることを 確信している。平和条約がないことが露日間の経済協力を妨げているのは間違いない。 しかし、経済協力発展の方向で問題を解決できるよう努力していく。

外務省HP掲載の会談結果概要(11月22日)によると、 北方領土問題については、

(1)小泉総理より、1956年の日ソ共同宣言、1993年の東京宣言、2003年の日露行動計画等 の諸合意はいずれも極めて重要かつ有効であり、 これらに基づいて平和条約締結交渉を継続していく必要がある、 日露両国には、四島の帰属に関する問題を解決して 平和条約を可能な限り早期に締結するとの共通の認識がある、 その意味で真剣な話合いを行うことは重要である、 日露双方が受け入れられる解決を見いだす努力を続けていきたい旨述べた。

(2)これに対してプーチン大統領より、 この問題を解決することは我々の責務である、 ロシアは本当にこの問題を解決したいと思っている、 平和条約が存在しないことが日露関係の経済発展を阻害している、 その一方で、この問題は第二次世界大戦の結果であり、 他の問題への連鎖という難しい問題がある旨述べた。

(3)両首脳は、平和条約締結問題につき、これまでの様々な合意及び文書に基づき、 日露両国が共に受け入れられる解決を見出す努力を行うことで一致した。

(4)小泉総理より、国後島沖で拿捕された「第78栄幸丸」の速やかな解放を要請したのに対し、 プーチン大統領より、解決できない問題はない旨述べた。

つい先日表明された小泉首相の信念では、 日米同盟さえ強化すれば、すべての国際関係がうまくいくはずである。 今回の領土交渉で、ロシア大統領にも説明しただろうか? 隣国の大統領は、その信念に基づき日米同盟が強化されることを歓迎してくれただろうか? 中国との軍事演習、武器売買などには両首脳が言及したようだが、 あえて日米軍事同盟の強化には触れなかったのかも知れない。 多分、先日の日米首脳会談でも、ブッシュ大統領が北方領土返還のために、 「一肌脱ぐ」気があるとまでは言ってくれなかったに違いない。 私見ながら、プーチン大統領も述べたようにロシアの「善意」が発揮されなければ、 北方領土問題の解決は困難です。 自国の戦死者だけを追悼し、頼りは日米同盟だけと決め込む首相がいるような国に対して、 しかも現に米軍のための基地を持ち続ける国に対して、 日本がなにもせずに相手に善意が生まれるはずがない。 ロシアの国民が大戦の戦利品だと見ているその4島を返してもらうには、 平和で友好的な隣国だから日本に返しても良いと思えるような両国関係を築く必要があります。 そのためにも、日本はロシア国民からどんな善意を求められているのかを考えるべきだ。

ところで、両国間で未解決なのは領土問題だけではありません。 私も関係者の一人として、「シベリア抑留」についても述べないわけにはいきません。 JNN(11月20日)によれば、 日本を敵国として活動していた元KGBのアレクセイ・キリチェンコ氏も、 「抑留問題が解決されないと日露間に汚点として永遠に残ってしまいます」 と述べたほどです。 外務省HPによると、 シベリア抑留問題については、

(1)小泉総理より、高齢化が進むシベリア抑留者の方々の心情に配慮し、記録開示、 遺留品の返還等についてロシア側が今後一層協力を強化することを期待する旨強く要請した。

(2)これに対しプーチン大統領より、 仮に支障があるとすれば官僚主義によって対応が遅いということであり、 支障の克服は可能である、協力したい旨述べた。

共同通信(11月22日)によると、 補償問題や遺骨収集に取り組む元シベリア抑留者ら約20人が同日、 衆院第2議員会館で集会を開いた。 日露首脳会談で補償問題などに動きはなく、出席者から 「元抑留者は高齢化している。なぜ進展しないのか」といら立ちの声が上がった。 集会では、全国抑留者補償協議会の有光健参与が、 首脳会談で1991年の政府間協定に基づき、 遺留品返還や情報開示を進めることが確認されたと報告した。 遺骨収集に取り組む出席者からは「11年間で1万6000柱しか収集できていない。 まだ3万柱残っており、収集のペースを上げてほしい」と国の対応の遅さを批判した。 ロシアだけではなく、日本でも官僚主義的対応が解決を遅らせています。 領土問題決着には、年月はかかるでしょうが、いずれ両国の善意によって解決出来ます。 しかし、シベリア抑留の当事者には、残された時間はもうありません。 早期に解決しなければならない所以です。