中国の主導する普遍的国際秩序形成の可能性

ねこくま

「戦後60年と東アジアの平和」シンポジュウムに参加してきました。専門的、包括的で東アジア安全保障の枠組みが今後いかなる方向性をもって再編成されるかについて示唆に富んだ報告の数々でした。5名のパネラーの報告は、いま私が研究しているアジア太平洋地域あるいは東アジアの安全保障秩序がどうなるかという問題を考える上で、非常に参考になりました。とくに清水学先生の「上海協力機構」に関する報告が、私にとっては一番参考になりました。

「上海協力機構」とは、中国がロシアと、旧CIS共和国の何カ国かが、安全保障上のコンセンサスをとりまとめるために締結した組織です。ところが一時アメリカのイラク侵攻に際して、ロシアやこれらイスラム系共和国が基地を提供するなど積極的に協力したために有名無実化したものと見なされていました。これが中国が主導したか、ロシアが主導したのか見えないのですが、米軍基地を地域から撤退させるという決議を実行し、中国が地歩を取り返した訳です。

まあ、今回はこれら中近東地域をめぐる中国の逆襲といった趣ですが、米軍基地の撤退、同機構へのインド、パキスタンの加盟認可、さらにオブザーバーながらアメリカから敵視されるイランを加えたことで「上海協力機構」の意味合いが大きく変化したと思われます。

ここから先は、今年末に発刊予定の某学会誌「グローバリゼーション特集号」に書いた論文の内容に関わるわけです。この論文で私は、中国がアジア太平洋地域で東アジア共同体を指向し、安全保障面ではARF(ASEAN地域フォーラム)や TAC(東南アジア友好協力条約)に積極参加している状況を、私は「アメリカ主導のグローバル秩序と東アジアの地域的安全保障枠組みの角逐」と捉えました。しかし、清水先生の提起した「上海協力機構」をめぐる中国安全保障枠組みの拡大の試みは、アジア太平洋地域での中国の試みと結びつくと、アメリカのグローバル安全保障秩序と平衡する新たな地球規模の安全保障枠組み形成試みの一貫と解釈できるようになります。

タイトで画一的な価値に支えられたアメリカ主導のグローバル秩序と、多元的で緩やかな結びつきによる秩序の主導権をめぐる競争が始まっていると理解できるわけです。国際社会の歴史は非常に早いテンポで変化しつつあり、アメリカ中心のグローバル秩序が何時までその有効性を保てるのかも不透明です。

地球大の安全保障秩序を普遍的に保持しようという努力に費やされるエネルギーはいかほどのものなのでしょうか。緩やかで協調的な国際秩序の方が、現実的で実効的なグローバル秩序の資格を有しているのではないでしょうか。今回のシンポジュウムに出席してASEAN的な緩やかな求心力による秩序こそ、冷戦とグローバリゼーションで傷ついた世界が求めている秩序ではないかと感じました。