エッセイ19 精神面の強さと弱さ

木村 英亮

スポーツの勝敗には、精神的要素が大きく影響するようである。野球のような集団によるゲームでは、チームワークが勝敗を左右するが、それがうまくいくためには選手間の和が必要である。

相撲やボクシングなどの個人競技では、心理的要素の果たす役割が大きい。気迫が足りないとか勢いに乗るなどといった言葉がよく使用され る。硬くなって実力が発揮できないが、慣れも心理的要素にはいるであろう。相撲の場所中は、なかなか眠れないという話を聞いたことがある。

城山三郎は、鋭いパンチを持っている男よりも、そうした格別の利器はなくても、打たれても打たれてもなお倒れない男の方が、(拳闘の)チャンピオンになる確率が高い、という(城山三郎『打たれ強く生きる』新潮文庫、122)。性格や知能も関係があり、城山は、「頭は少し弱めがいい」という渡辺淳一の説を紹介している。たしかに、完璧を求めやすいエリートには、失敗のショックが致命的になることがあるであろう。

しかし、精神面を強調しすぎると、「精神主義」になるおそれがある。運動部でよくある気合を入れる暴力がふるわれることになりかねない。やはり、スポーツの訓練も合理性が大切で、実力をつけることが第一である。

そのさい城山も述べているように、基本の大切さは言うまでもない。これはスポーツに限らずあらゆる分野についてあてはまることであるが、気まぐれやはったりはだめである。