アメリカのイラク戦争開始にあたって

中西 治

アメリカが2003年3月19日アメリカ東部時間午後9時30分(日本時間20日午前11時30分)頃に遂にイラクへの戦争を開始しました。2002年4 月1日に日本を発つ時にすでにアメリカのイラク攻撃は必至と見られていましたので別に驚きではありません。むしろ、アメリカ国民と地球の各地の人々が今日 までよくブッシュ大統領の手を縛り付けてきたと思っています。

ブッシュ大統領のテレビを通じての開戦演説を聞きながら51年余り前の1941(昭和16)年12月8日の日本によるアメリカへの宣戦布告を発表したラ ジオ放送を想い起こしていました。アメリカ国民の多くは今回の戦争に賛成していると言われていますが、あの時に日本国民が示した程の熱狂は今のアメリカに はありません。私のまわりにはこの戦争を積極的に支持する人は一人もいません。3月22日(土)午後にはニューヨークで10万人から15万人が参加する戦 争反対のデモが予定されています。

ブッシュ大統領の演説に力はありませんでした。イラク国民への尊敬の念をもって戦争を始めるというのです。このような宣戦布告演説を聞いたことはありません。尊敬の念を持っているのならば、その人々が殺される戦争をしなければ良いのです。

目的はただ一つ、フセイン大統領を殺し、アメリカの思うようになる人物を政権の座につけて、イラクの石油を思いのままにすることです。

アメリカはこれまでイラクが持っているか持っていないか分からない大量破壊兵器を無くすためと言ってきました。私も大量破壊兵器はもちろんのこと、すべ ての兵器に反対です。したがって、私はアメリカの主張に賛成です。しかし、もしアメリカがイラクに対して大量破壊兵器の廃棄を求めるのであるならば、まず アメリカが率先してこの種の兵器を廃棄すべきでしょう。自国はたくさんの大量破壊兵器を持ちながら他国に対してのみそれを求めても説得力はないでしょう。

私は今回のアメリカ国内旅行中にサクラメントで中年のアメリカ人夫婦と知り合いになりました。ご夫婦のお嬢さんは数年前に大阪の高等学校で学ばれたよう です。その奥様からイラクの核兵器について聞かれました。その時に私はいま世界でもっとも危険な兵器はアメリカが持っているたくさんの核兵器であると答え ました。しかも、アメリカはこの兵器を使った世界でただ一つの国です。この方からまたフセイン大統領をどう思うかと尋ねられました。私はフセインはイラク の大統領であって、アメリカ合衆国の大統領ではないと答えました。

フセイン大統領は確かに問題のある大統領のようです。しかし、問題のある大統領や首相は他にもいます。私はブッシュ大統領も問題のある大統領であると 思っています。アメリカ国民の中にも未だにブッシュ大統領は投票結果をねじ曲げクーデターによって大統領になったと主張している人がいます。しかし、私は ブッシュ大統領の退陣やましてやアメリカからの退去などは求めません。それはアメリカ国民が決めることです。フセイン大統領の運命を決めるのはイラク国民 です。

ブッシュ大統領はヒトラーを引き合いにだし、宥和政策が第二次大戦をもたらしたのであるから今のうちにフセインを叩き潰しておかなければならないと言っ ています。しかし、今、世界制覇を唱えているのはだれでしょうか。フセイン大統領でしょうか、ブッシュ大統領でしょうか。

アメリカは21世紀の地球秩序をアメリカ主導で力によって作り出そうとしています。そのためにアメリカではこの1年間に本土安全保障省の設置をはじめと して急速に戦時体制が敷かれてきました。戦争に反対する人は愛国者ではないと非難されています。ここでも国家総動員法の制定から真珠湾への道が二重写しに なります。

アメリカはイラクにさまざまな兵器を廃棄させ、大量破壊兵器が無くなれば戦争はないと言いながら、まだ残っていると言って戦争を始めたのでした。これで はだまし討ちではありませんか。近代兵器を駆使し、丸裸同然のイラクを叩くのですから戦場で勝つのは当然でしょう。しかし、アメリカは道徳的には負けてい ます。アメリカには大義がないからです。

ブッシュ大統領はアメリカの歴史上初めて先制攻撃をしました。これまでも小競り合いを利用して戦争を始めたことはありますが、今回のようなことはなかっ たのです。しかも、アメリカは独立革命以来の盟友であったフランスの支持を失いました。ブッシュ大統領はフランス、ドイツ、ロシア、中国などヨーロッパ大 陸からユーラシア大陸、アジア大陸の主要な国の反対をうけています。戦争開始の段階で国の内外にこれほど大きな反対をうけている国は最後には敗北するで しょう。

日本はアジアでただ一つ積極的にアメリカを支持することを表明した国です。小泉さんにはもう首相を止めてもらわなければなりません。口でいかに平和を唱 えても戦争を積極的に支援する小泉さんを支持する人は戦争を支持する人です。真に平和を求める人は今こそ毅然として平和の側に立つべきです。ここで小泉内 閣が潰れ日本国の首相が代われば今回の戦争の過程も変わりますし、21世紀の地球の歴史が変わります。

私は確信を持って平和の側に立ちます。