エッセイ20 上から、外から

木村 英亮

「山の郵便配達」という中国映画を見た。主人公はリュックを背に、道のない山村をめぐり、手紙を届ける。目の見えない老人には手紙を読んで聞かせ、相談相手にもなる。

今回の日本の選挙では郵政民営化が争点とされ、国鉄に次ぎ、郵便事業が民営化されようとしている。たしかに、さまざまな情報手段の発達によって、郵便の比重は小さくなっており、なんらかの対応が必要であろうが、それは公営か民営かとは別の問題である。

このような「改革」は、まず問題点と根拠となる資料が提示され、その上で利用者の意見がよく聞かれなければならない。しかし、なによりも 優先しなくてはならないのは、そこで働く人たちの意見である。ただ安ければいいというもではなく、質が守られるかどうかが大切だからである。そのために は、「山の郵便配達」の主人公のように、その職場で働く人たちが、仕事に誇りをもち、仕事の目的をしっかりつかんで、それに基づいて働くことが第一であ る。ただ経営の都合だけでおこなっても、本質的には経営も改善されないであろう。

1987年国鉄が民営化され、JR6社が発足した。それは国労をつぶすというのが目的の一つであったので、全体としても鉄道労働者の意 見や利益は顧みられなかった。西宮事故は、その結果であるとみなすことができる。国鉄民営化の総括を行ってみて、他の民営化はその上でおこなうのが筋では ないだろうか。その場合、労働者、利用者の意見も聞かねばならない。

日本の「改革」は、いつも当事者から出発せず、「上から」「外から」の指示によっておこなわれた。戦後改革もそうである。これは、占領 軍の圧力がなければ、あのようにできたかどうかわからない。本来大学人のイニシアチブでおこなわれるべき大学改革も文部省の指示を仰ぎ、ついには、大部分 の教員が反対する独立行政法人化が実現されてしまった。一番事情のよくわかる大学の教員、職員の意思は十分に反映されず、講義を聴き、授業料を払う学生の 意見が聞かれることもなかった。