「憲法改正問題」について(4)

今井 康英

今回は「憲法改正問題」について述べます。

改憲論者の目的の一つは、憲法違反と判断されない「自衛軍」を保持することです。 そのため自民党新憲法草案では、現行第9条の第1項を維持しつつ第2項を全文削除して、 「第9条の2」を新設し、第1項で「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、 内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する」と規定している。 さらに第2項ないし第4項において、「法律の定めるところにより、 国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」などを 「自衛軍」が行えるようにするものである。

現行憲法の下でも、「自衛隊」は保持しています。 防衛庁設置法(昭和29年法律第164号)は、 次のように規定している。 第2条(設置) 内閣府設置法(平成11年法律第89号)第49条第3項の規定に基づいて、 内閣府の外局として、防衛庁を置く。 第3条(長官) 防衛庁の長は、防衛庁長官とし、国務大臣をもつて充てる。 第4条(防衛庁の任務) 防衛庁は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とし、 これがため、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊を管理し、及び運営し、 並びにこれに関する事務を行うことを任務とする。 第2項  防衛庁は、前項に規定する任務のほか、条約に基づく外国軍隊の駐留 及び日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の規定に基づく アメリカ合衆国政府の責務の本邦における遂行に伴う事務で 他の行政機関の所掌に属しないものを適切に行うことを任務とする。

自衛隊法(昭和29年法律第165号)は、 次のように規定している。 第3条(自衛隊の任務) 自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、 直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、 必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。 第2項  陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、 航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。 したがって、「自衛軍」が行うべき任務は、すでに自衛隊が実施している。 違いは、合憲か違憲かだけである。

ところで、衆議院(第151回国会)に提出された防衛省設置法案要綱によると、
第一 防衛省の設置
一 防衛省を設置するものとすること。
二 防衛省の長は、防衛大臣とするものとすること。
三 防衛省の任務、所掌事務、組織等については、 現行の防衛庁設置法に規定されているものと同様のものとすること。

第二 施行期日
この法律は、別に法律で定める日から施行するものとすること。

第三 関係法律の整備等
一 現行の防衛庁設置法は、廃止するものとすること。
二 この法律の施行に伴い必要となる経過措置及び関係法律の整備については、 別に法律で定めるものとすること。

防衛省設置法案によると、 第2条(設置) 国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第3条第2項の規定に基づいて、 防衛省を設置する。 第2項 防衛省の長は、防衛大臣とする。 つまり、現状でも自衛隊を管理、運営するには「防衛省」が相応しいようだ。 自衛隊合憲論者なら、当然の結論なのかも知れない。

仮に自衛隊が合憲で、防衛省が設置できるなら、憲法改正の必要はない。 わざわざ憲法第9条の2を新設せずとも、防衛庁を防衛省に昇格させて、 ついでに自衛隊を自衛軍に改称するだけで良い。 そうすれば平和憲法の下で自衛軍を保持できるようになり、 改憲論者の目的は達成されます。 対イラク戦争で大量破壊兵器が有ろうが有るまいが、 フセイン政権を打倒することが正しかったという主張が罷り通るようでは、 日本でも「防衛」や「国際貢献」と言う口実で、何でもできてしまいそうです。

自民党の要請により、公明党も防衛省の昇格を承認するようですが、 これはとんだ大間違いです。 20日の党内論議では、「名称を変える積極的理由がない」との声や、 「仮に名称の変更を是認すれば、集団的自衛権行使の議論に進むステップを 与えてしまうのではないか」「公明党の平和の党としての印象が変わるのでは」 といった慎重論も出たらしい。 こういう時こそ、叱咤激励をして、踏み止まらせなければならない と私は思います。