二酔人四方山問答(24)

岩木 秀樹

B:ムハンマドは西暦570年頃生まれたといっていたけれど、どんな人物でどんな生涯だったの。

A:メッカの有力部族クライシュ族のハーシム家の生まれで、父アブドゥッラー、母アーミナの子として誕生した。ただ父はムハンマドが誕生する以前に、母も6歳頃に亡くなった。

B:えー、そうだったの、かわいそうに。

A:幼い頃からそういうような経験をしたので、指導者になれたのかもしれない。その後孤児として祖父アブドゥルムッタリブ、その死後は伯父のアブー・ターリブに育てられた。確かに両親を早くに亡くしたことは寂しいことであったかもしれないが、孤児を一族で育て保護するということは、イスラーム社会では当たり前のこととなっている。

B:へー、孤児を一族で保護するということがあるんだ。

A:トルコ共和国建国の父ムスタファ・ケマル・アタテュルクやイラクの前大統領サダム・フセインも孤児として伯父に育てられた経験を持つ。イスラーム社会では、孤児や旅人、貧しい人、病人などは手厚くもてなされる雰囲気とシステムが現在でも存在する。

B:僕も聞いたことがあるよ。イスラーム圏に旅行すると嫌というほどもてなしを受けるということを。

A:ホスピタリティの厚い社会と言えると思う。そのような中で育てられたムハンマドは富裕な商人ハディージャに雇われ、隊商貿易に従事した。彼女はムハンマドの人柄と手腕を見込んで結婚を申し込んだとされている。

B:ムハンマドが何歳の時。

A:ムハンマド25歳、ハディージャ40歳。

B:えっ、15歳も年上の姉さん女房。

A:しかも彼女は2度の結婚経験があるんだ。

B:えっ、ばつ2。今の日本だってそんなケースは稀だよ。僕の母だったら許してくれるかな。

A:離婚にうるさいカトリックだったら、あまり考えられないことだろうな。イスラームは預言者ムハンマドにしてこうだから、そのあたりは非常に大らかだ。性に関しても忌み嫌い恥ずかしいものという雰囲気はあまりない。

B:イスラームって厳格で怖い宗教だという印象が強かったけれど、そうでもないんだ。

A:世俗や現世に対して非常に肯定的に捉える傾向が強い。ところでムハンマドは結婚後も妻とともに隊商に従事していた。普通の家庭生活を送っていたわけで、そのあたりがキリストや釈迦と異なる。

B:そうなんだ。日常生活を送っていたわけか。

A:ただよく思索にふけることが多くて、メッカの郊外のヒラー山の洞窟で瞑想をすることが多かったらしい。彼が40歳になった頃、そこで神から啓示がおりたんだ。

B:良き家庭人、商人としてのムハンマドに預言者としてのムハンマドが加わるんだね。