設立記念講演会 中西治(地球宇宙平和研究所理事長・創価大学教授)

事務局

「現在の国内・国際情勢と地球宇宙平和研究所の役割」

2002年3月17日(日)午後3時半より5時まで
かながわ県民センター402号室

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現在は、人間中心の社会であると言われている。それがモノ中心の社会よりも良いことは確かだが、はたしてそれでよいのか。人間中心でやってきたことの結果 が、今日の環境破壊などにつながった。従って宇宙や地球から人間を見直す必要がある。宇宙や地球といった大きな視点から、人間の平和の問題を考えなくては ならない。このような観点から、地球宇宙平和研究所という名前を付けた。

私たちが生きているこの宇宙は、遥か過去、150億年前に誕生した。地球は45億年前に誕生し、長い年月をかけて生物が生きられる環境になった。生物が 生きるためには92の元素が必要であるが、そのような環境は地球だけではないと考えられる。他の大宇宙にそのような天体があっても不思議ではない。私たち 人間が生存できるこの地球は、宇宙の中でも素晴らしい環境を有している天体である。

地球ができてから今日までを24時間とすると、北アメリカ大陸西部コロラドのグランド・キャニオンができてから今日までわずかに7分、人間が地球上に現 れたのは一日が終わる47秒前である。人間の存在は宇宙や地球の歴史に比べるといかに小さな存在であるか。そのような中でなぜ人間は争うのか。わずかな時 間しか生きていない人類がなぜこの地球上で争わなくてならないのか。

今から440万年前に猿人、20万年前に現生人類が誕生した。日本には3万から2万年前から人間が住んでいたと言われている。その最初の2万年間は狩 猟・採集社会であり、その日暮らしの貧しいが、助け合いの社会であった。日本で戦争が起こるのは弥生時代からであり、狩猟・採集社会には戦争はなかった。 人間は争いを好み、常に戦争をするわけではない。何万年にもわたって人間は仲良く生活してきた。このことからも、戦争が人間の本性から来るものではないと いうことがわかる。

1万年前に、農業革命が起こり農業社会になり、生活が向上・安定し、貧富の格差が増大した。その結果、支配・被支配の社会になった。ルソーはその状況について、人間の不平等が土地の私有によって起こると指摘した。だが人間が本当に平等に生まれ落ちるのかは疑問である。

300年前に産業革命が起こり産業社会になり、大量生産、大量消費の時代になった。豊かな社会にはなったが、革命や戦争によって、大量破壊・大量虐殺の世界にもなった。

30年前に知識情報革命が起こり、知識情報社会になった。かつては何万年、何百年もかけて世界が変わっていったが、現在では短時間で世の中が大きく変化するようになった。

20世紀は戦争と革命の時代だった。マイナスの面も多いが、素晴らしい時代でもあった。20世紀の前半までは、どうしても問題を解決できない場合は、国 内の矛盾は革命で、国際的な矛盾は戦争によって、一気に暴力的に解決してきた。古い体制をつぶすことによって、その後めざましく発展した場合もある。革命 や戦争はそれまで積極的に評価されていた。

第二次大戦後のヤルタ・ポツダム体制は、ドイツと日本の報復を阻止する体制であった。両方とも占領下において民主化した。日本については、沖縄をアメリ カが取り、北方領土をソ連が取り、軍事的に威圧しながら日本の民主化を進めた。東欧はソ連のもの、日本はアメリカのものとなった。この体制はヨーロッパで は崩壊しているが、アジアではまだ残っていて、近い将来にこの体制はなくなるであろう。ヤルタ・ポツダム体制を崩壊させたものは第三次大戦である。それは 朝鮮戦争・ヴェトナム戦争・アフガニスタン戦争である。 現在は知識情報革命と国際社会の大きな変動という二重の変化の時代に私たちは生きている。この時 代に普通の今までのような生活をしていたのでは生き残れない。

20世紀はあまりに犠牲の大きな世紀だった。革命や戦争は有効で正しい手段ではないということを人類は学び取った。内外の紛争問題を平和的に解決するこ とは重要である。この意味で、国際連合憲章や日本国憲法は、人類の偉大な成果である。どんなに時間がかかっても、問題を平和的に解決することが20世紀の 教訓である。21世紀に生きる者の課題は、そのようなルールや制度を作ることである。

現在、バルカンから中東にかけての地域において、石油の利権もからみ、アメリカは力を使ってでもアメリカ主導の秩序を作ろうとしている。湾岸戦争とコソ ボ戦争は、アメリカ主導の世界秩序作りであった。それへの反発が9・11事件であった。9・11事件とこれに対するアフガン戦争は力には力で対抗するとい うことの現れである。この悪の循環を断ち切ることが重要である。そのためには殴られても殴り返さないことが必要である。これは非常に難しいことではある が、それを実践していかなくてはならない状況に現在、世界はなっている。

このような観点から、国家を守ることはあまり重要なことではなくなっている。そのことを実感したのは第二次大戦終結の時である。国敗れて山河ありというのを痛切に感じた。国が敗れても庶民はあまり関係がない。むしろ庶民は良かったと思った。国が敗れて困るのは、支配者であり体制である。

現在の国内情勢としては、1993年に自民党政権が崩壊し、その後連立の時代に入っている。世界的な新しい状況に日本がどのように対応するのかというこ とについて、政治家も国民も戸惑っている。もう少しこの混乱は続くであろう。小泉政権は先が見えていて、いずれ政界再編は起こるが、軸になるのは憲法問題 である。現在、チャーチルやローズベルト、スターリンに匹敵する政治家は世界にも日本にも存在しない。

国内・国際秩序ともに転換期であり、内外の諸問題を平和的に解決するルールと制度の確立が必要である。その意味からもわれわれの研究所に課せられた課題 は重い。平和の旗を掲げる団体は君子の集まりだと思っている。従って組織そのものも君子の組織にしたい。そういう組織こそ、21世紀以降の人類に対して、 灯台となり、導きの星になれる。この研究所が視野に入れているのは、この地球上に住む60億以上の人々全てである。人類全てを味方にしたいと思って活動し ている。今後、世界や日本社会に対して、こういう社会を作るべきだということを積極的に提起していきたい。そのためにも高い理念の旗を掲げることが大事である。多くの人々も、まさにそれを求めているのである。