ロシア十月革命100周年記念日に寄せて ー朝鮮戦争を再発させてはならないー

中西 治

2017年11月7日はロシア十月革命(ロシア旧暦1917年10月25日)100周年記念日でした。この日に寄せて、この革命の意義と現在の朝鮮危機について書きます。

まずロシア十月革命についてです。

十月革命の指導者はロシア社会民主労働党多数派(ボリシェヴィキ)のレーニンでした。この党は革命成功後の1918年3月にロシア共産党と改名しました。

この党の主要な課題は当時進行していた第一次大戦から離脱し、ロシアの民衆に平和を、農民に土地を与えることでした。

十月革命によって誕生した旧ロシア帝国内のロシア、ウクライナ、ベロロシア、ザカフカスなどの国々は1922年12月30日に「ソヴェト社会主義共和国同盟(以下ソヴェトと略称)」を結成しました。

ソヴェトは社会主義社会さらには共産主義社会の建設をめざしました。それは前人未到の旅の始まりでした。

ソヴェトは第二次大戦においてヒトラー・ドイツを打倒する上で決定的な役割を果たしました。アメリカ合衆国(以下米国と略称)は日本軍国主義を打倒する上で決定的な役割を果たしました。

この結果15の共和国から成るソヴェトと50州から成る米国が戦後世界で超大国として指導的役割を果たしました。米ソ両国は戦時協力から戦後冷戦となりましたが、公然と戦争をすることはありませんでした。両国は日独の報復戦争を阻止しました。

米国の力と影響力を弱めたのは1950年代の朝鮮戦争と1960年代のヴェトナム戦争でした。米国では1960年代に公民権革命が起こりました。

ソヴェトの力と影響力を弱めたのは1980年代のアフガニスタン戦争でした。ソヴェトでは1990年代に入りソヴェトから離脱する国が出始めました。1991年12月25日にゴルバチョフ大統領が辞任するとともにソヴェトは消滅しました。

ロシア十月革命の最大の意義は人類が初めて社会主義社会・共産主義社会の建設に意識的に取り組んだことでした。それは途中で挫折しましたが、その教訓はソヴェトの後継国家であるロシア連邦や中華人民共和国に受け継がれています。

ロシア連邦ではプーチン大統領のもとで経済振興とユーラシア経済連合やBRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)などの強化・拡大が図られています。

プーチンさんはソヴェト時代に国家保安委員会(KGB)の軍人で、共産党員でした。彼はソヴェト共産党がなくなった後も党員証を持っていました。彼はソヴェト時代が生んだ優れた知識人の一人です。

中国では1921年7月にロシア十月革命の影響をうけて中国共産党が創立されました。この中国共産党が1949年10月1日に中華人民共和国を建国しました。

2017年10月18日に開催された中国共産党第19回大会で習近平総書記は中国共産党が形成した「新時代の中国の特色ある社会主義」思想をマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、?小平理論、「三つの代表」重要思想、科学的発展観を継承し発展させたものと規定しました。

この習近平総書記の報告によると、現在から21世紀半ばまでの30年間ほどは次の三つの時期に分けられています。

  1.  現在から2020年まで:小康社会(ややゆとりある社会)の全面的な完成を決する時期。
  2.  2020年から2035年まで:社会主義の現代化を基本的に実現する時期。
  3.  2035年から今世紀半ばまで:中国を富強・民主・文明・調和の美しい社会主義現代化強国に築き上げる時期。

中国の社会主義社会建設は68年かかってここまで来てました。これからが大変です。

中国は対外的に一帯一路計画を提起し、ユーラシア大陸を鉄路と海路で結び、広大な経済圏を形成する計画を進めています。

ロシアと中国との間ではユーラシア経済連合と一帯一路計画を結合して大西洋から太平洋に至る地域の統合を図ることが考えられています。

ロシアと中国の計画は壮大です。そこには夢があります。共産主義者の夢です。

ロシア十月革命の意義はソヴェトの経験だけではなく、ロシア連邦の経験と中国革命の経験なども踏まえて検討・評価されるべきでしょう。それは100年に限定されるものではないでしょう。

次は現在の朝鮮危機についてです。

米国は第二次大戦での勝利によって大西洋を越えてヨーロッパ大陸に、また、太平洋を越えてアジア大陸に、大きな影響力を行使できる国になりました。ヨーロッパでは北大西洋条約機構(NATO)を組織することによって軍事的にも優位に立ちました。

それに陰りが見え始めたのは1949年10月1日に中華人民共和国が誕生したときでした。アジアでの米国の影響力が低下しました。

追い打ちをかけたのが1950年6月25日の朝鮮戦争の勃発でした。朝鮮半島の南部(大韓民国)と北部(朝鮮民主主義人民共和国)がともに朝鮮半島の武力統一をめざして戦いました。この戦争に米国(国連軍)と中国(義勇軍)が軍事介入し国際的な大戦争となりました。

1953年7月27日に休戦協定が調印されましたが、この協定に調印したのは北と中国義勇軍と国連軍(この中に南の軍隊が入っていました)の代表だけでした。

南の李承晩大統領はこの協定の交渉に参加せず、調印もしませんでした。その理由は停戦になれば武力統一の機会が遠のくと考えたからでした。彼は米国が南と「相互防衛条約」を締結することを条件に停戦を妨害しないことを約束していました。この条約は1953年10月に締結されました。この条約に基づいて米国軍がいまも南に駐留しています。

これが今日の朝鮮危機の始まりでした。

朝鮮戦争の結果は米国に深刻な影響を与えました。米国は朝鮮戦争で負けはしませんでしたが、勝てませんでした。さらに1960年代から1970年代にかけておこなわれたヴェトナム戦争で米国は負けました。

この間に日本は1951年9月8日にサンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約に調印し、1952年に発効しました。安保条約は1960年1月に改定されましたが、いまも米軍基地は日本にあります。

2017年11月5日に米国のトランプ大統領は日本にある米国軍の横田基地に到着し、7日に横田基地から韓国に向かいました。この基地は日本にありますが、日本のものではありません。米国のものです。私はこれをテレビで見て、米軍による日本占領はまだ続いていると思いました。

トランプさんと安倍さんは朝鮮問題や日米貿易について話し合いました。日本は戦争に備えてたくさんの武器を米国から買い、米国の貿易赤字を減らすのに努力するようです。日本がその武器を使って朝鮮と戦ってくれれば米国にとってはなお有難いでしょう。

私は「制裁だ、制裁だ」と声高に言っている人は実際には「戦争を挑発」している人であると思っています。本当に平和を願っているならば、いまこそ、話し合いのテーブルに率先して着くべきですし、相手にも着いてもらうように努力すべきです。

私は今回の問題の解決はそれほど難しいことだと思っていません。休戦協定を平和条約に変え、北と米国の間で国交を正常化すれば良いのです。幸いにして現在の南の文在寅(ムンジェイン)大統領は話し合いで問題を解決しようとしています。いまがチャンスです。

トランプさんが決断すれば一挙に解決します。

核の問題、ミサイルの問題はそのあとの問題です。世界にはすでにたくさんの核とミサイルがあります。これらの核・ミサイルの問題とともに今回の核・ミサイルの問題も解決すれば良いのです。世界は核全廃の方向に向かっています。

朝鮮半島に住む人々は南も北も戦争を望んでいないでしょう。戦争勃発とともに彼らの住む場所は戦場となります。

中国もロシアも今回は絶対にこの戦争にかかわらないでしょう。前回で懲りています。

米国も本当は朝鮮で戦争をしたくないでしょう。前回の戦争で手こずりましたし、今回は米軍人がたくさん韓国にいますから、戦争が起これば、ただちにそこが戦場になり、多くの米国人が死にます。トランプさんは強気な発言をしていますが、米国人はこれを許さないでしょう。朝鮮半島は米国にとって命がけで戦わなければならない場所ではありません。

日本はこのままいくと戦争に引きずり込まれます。沖縄だけでなく日本全土が戦場になります。

1962年のキューバ・ミサイル危機のとき私は米ソ核戦争は起こらないと思っていました。それは人間の理性を信じていたからです。ソヴェトのフルシチョフ首相と米国のケネディ大統領の理性を信じていました。

今回も私は人間の理性を信じています。金正恩さんとトランプさんの理性を平和のために信じます。