朝鮮半島とトランプ・金正恩・プーチン

中西 治

現在、世界でもっとも緊張しているのは朝鮮半島です。この朝鮮半島をめぐって米国のトランプ大統領と朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が罵り合っています。子供の喧嘩のようですが、二人とも感情的な人ですから、何を仕出かすか分かりません。

他方、ロシアのプーチン大統領はヨーロッパからユーラシア大陸を横断し、朝鮮半島を縦断して韓国の釜山(プサン)に至る鉄道の開設を呼びかけています。プーチンさんが「時の氏神」になるのか否か。朝鮮半島はどこへ行くのでしょうか。それをここ
で検討します。

今回、口火を切ったのはトランプさんです。彼は2017年9月19日に国際連合総会で演説し、次のように述べました。

「米国は偉大な力と忍耐力を持っている。しかし、米国自身とその諸同盟の防衛を余儀なくされた場合、われわれは北朝鮮を全体的に破壊するより他に選択はないであろう。ロケット・マンは彼自身と彼の体制のために自殺的な役割を果たしている。」

Remarks by President Trump to the 72nd Session of the United Nations General Assembly

これに対して金正恩さんがいきり立ち、同月21日に次のような声明を発表しました。

「トランプが世界の前面で私と国家の存在自体を否定し、侮辱し、わが共和国をなくすという歴代で最も暴悪な宣戦布告をした以上、われわれもそれに相応する史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮するであろう。ものを聞き分ける能力もなく、自分の言いたいことだけを言う老いぼれには行動によって示すのが最善である。」

朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長声明

2017年9月25日の『朝日新聞』によると、朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外務大臣は同月23日に国連総会で演説し、「最終目標は米国との力の均衡をとることだ」と述べました。

プーチンさんはすでに2017年6月2日にロシアのペテルブルグで開かれた国際経済フォーラム全体会議で次のように述べていました。

「私たちは国際法の諸基準と基本的諸原則を皆が同じように理解することについて合意し、これらの原則を守ろうではないか。国際法についての合意ができ、それが守られるまで私たちがいま北朝鮮で見ているような問題が生じるであろう。小さい国々は核兵器の所有以外に、自国の独立、安全、主権を守る他の方法を有していない。」

http://kremlin.ru/events/president/news/54667

また同年9月5日にプーチンさんは中国で開催されたBRIKS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)首脳会議後のロシア人記者との会見で次のように述べていました。

「イラクでは大量破壊兵器があると言ってサダム・フセインとその家族を子供や孫まで殺した。北朝鮮の人々はイラクで、その後リビアで行なわれたことを忘れていない。昨日も言ったが、北朝鮮の人々は安全を感じない間は草を食べてもその計画を放棄しないであろう。何が安全を保障するのか。国際法の復活である。すべての関係者の間の対話である。北朝鮮を含むすべての参加者が全滅されると恐れないようにしなければならない。逆に紛争のすべての当事者が協力の道に進まなければならない。戦争ヒステリーの焚き付けは地球的惑星的大惨事と多数の人的犠牲をもたらすであろう。北朝鮮の核問題は平和的外交的に解決する以外に道はない。」

http://kremlin.ru/events/president/news/55535

さらにプーチンさんは同月7日にロシアのウラジヴォストークで開催された東方経済フォーラム全体会議で北朝鮮も参加する次のような計画を明らかにしました。

「北朝鮮を徐々に地域協力に引き込まなければならない。ロシアにはすでにすべての人が知っている具体的提案がある。ロシアのシベリア横断鉄道と韓国の鉄道を北朝鮮経由で結びつけ、ロシア・朝鮮・韓国の共同鉄道をつくるとともに、パイプライン輸送をおこない、北朝鮮の港湾を開発すること等である。この他にサハリン(樺太)に橋を架け、サハリンと北海道を結ぶ計画もある。」

http://kremlin.ru/events/president/news/55552

以上の発言をまとめると、プーチンさんの考えは次のようなものです。

イラクとリビアで起こったように米国は気に食わぬ国の政権を転覆し、最高指導者とその家族を殺すから、朝鮮のような国は核兵器とミサイルで自国を守らざるを得なくなる。これを力で押しつぶそうとすると核ミサイル戦争になるから「話し合い」で解決するとともに、当該国を国際社会へ復帰させなければならない。

私はこの考えに賛成です。朝鮮半島を対立の場としてだけでなく、協力の場としても見ることが必要です。シベリア横断鉄道を朝鮮経由で韓国の釜山まで延長する計画は前にもありましたが、それが無くならないで再登場したことを私は大変喜んでいます。北海道がサハリン経由でユーラシア大陸と繋がる。素晴らしい「夢」です。