米中首脳会談に寄せて

中西 治

米国のトランプ大統領が2017年4月6日(木)から7日(金)にかけて2日間、米国フロリダ州パームビーチの別荘「マール・ア・ラーゴ」に中国の習近平(シーチンピン)国家主席を招き、会談しました。

この会談中の6日午後9時40分(米国東部夏時間、日本時間7日午前10時40分)にトランプ大統領はシリアのアサド政権がシリア国民に対して恐るべき化学兵器を使用したとしてアサド政権下の空軍基地を攻撃する命令を発しました。

https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/04/06/stat…  Statement by President Trump on Syria

米国のティラーソン国務長官が7日午後3時58分(日本時間8日午前4時58分)からの記者会見で語ったところによると、この攻撃の事実をトランプさんは6日夜の晩餐会の終わりころに習近平さんに直接伝えました。習さんはこの事実を伝えられたことに感謝し、人々が子供たちを殺すようなときには、このような対応が必要なことを理解すると述べたと言われています。

https://whitehouse.gov/the-press-office/2017/04/07/bri… Briefing by Secretary Tillerson, Secretary Mnuchin,and Secretary Ross on President Trump’s Meetings with President Xi of China

他方ロシア大統領報道部は7日午前9時(モスクワ時間、日本時間7日午後3時)に「ロシア大統領はシリアに対するアメリカの攻撃を国際法の基準を侵すものであり、主権国家への侵略とみなす。その際こじつけの口実が用いられている。シリア軍は化学兵器を保有していない。」とのコメントを発表しました。

http://kremlin.ru/events/president/news/54241

ティラーソン米国務長官はロシア大統領のこのコメントについて先の記者会見で次のように述べています。

「私はロシア人からのこのような反応に失望している。なぜなら、これはアサド政権に対する支持を今後も続けることを示すものであり、とくに、このような恐ろしい攻撃の仕方を自国民に対して実行する体制を今後も支持することを示すものである。」

今回の習近平さんの米国訪問の結果、現在の米国と中国の関係が明らかになってきました。

米国は中国を対等のパートナーとして見ていないようです。そうでないと、遠路はるばる中国から来た客人を前にして中国と親しいロシアが支持するシリアを攻撃するなどということはしないでしょう。トランプさんは習近平さんに「米国」をとるのか、「ロシア」をとるのかを試しました。

また、先のティラーソンさんの記者会見によると、トランプさんは朝鮮問題についても習近平さんに「中国が私たちと一緒にできない」のであるならば、「私たちは独自のコースを描く用意がある」と言っています。

習近平さんは客人としてトランプさんの顔を立て、事を荒立てず、決裂を避け、今後の「米中関係」の枠組みを作って帰国しました。

本来ならば、首脳会談後には両国首脳の共同記者会見があり、共同宣言や共同声明などが発表されます。ところが今回はそれらがありませんでした。

習近平さんとしては公開の席で米国のシリア攻撃に賛成したり、支持する声明を発表するわけにはいかなかったのでしょう。

習近平国家主席との会談終了後に発表されたトランプ大統領の所見は「米国と中国との関係にめざましい進歩が見られた。私たちは今後多くの進歩を追加して創り出すだろう」でした。

https://www.whitehouse.gov./the-press-office/2017/04/07/re… Remarks by President Trump After Meeting with President Xi of China

トランプさんは「したいようにする」人のようです。

シリア問題でも「したいように」しました。「イラク戦争の教訓」はありません。

朝鮮問題でも「したいように」するでしょう。「朝鮮戦争の教訓」はありません。

トランプさんは化学兵器で亡くなった人々を悼むのですが、そのことによって生ずる新たな戦争による死者に対する哀悼の気持ちはないようです。戦争の危険が高まりました。

これに対して私たちはどのように対応するのか、一人一人が考えるべきときのようです。