トランプ大統領の施政方針演説について

中西 治

2017年2月28日に米国のトランプ大統領が米国議会上下両院の合同会議で大統領就任後初めての施政方針演説をしました。

Trump address to joint session of Congress 2

トランプさんは演説の冒頭で米国において毎年2月に催されている「黒人歴史月間」が終わるにあたり、「今夜、私たちはこれまでの公民権運動の歩みとまだ残されている課題を思い起こしています」と述べ、「拍手」を受けました。

続いてトランプさんは「アメリカのそれぞれの世代は真実、自由、正義のたいまつを今日まで受け継いできました。そのたいまつはいま私たちの手にあります。私たちはそれを世界を照らすために使います。私は今晩ここに団結と強さのメッセージを伝えるためにいます。それは私が心からの思いを込めて送るメッセージです。米国の偉大さの新しい章がいま始まっています。私たちが今日、目にしているのはアメリカ精神の再生です」と述べました。

さらにトランプさん次のように語りました。

「9年後の2026年にアメリカ合衆国は建国250年ー独立宣言250年を祝います。それは世界史における偉大な里程標の一つです。アメリカは250年を迎えるときどのようになっているのでしょうか。どのような国を私たちは子供たちに残すのでしょうか。」

トランプさんは演説の開始と同時に聴衆の意識を1776年7月4日の独立宣言に戻し、自己をその思想の継承者として位置づけました。

トランプさんはこのあと米国の現状を次のように描きだしました。

  1. 多年にわたり米国の雇用や富が外国に流れ、国内の中間層が縮小しました。外国のプロジェクトには次々と融資し、建設してきましたが、米国のシカゴ、バルティモア、デトロイトなどの市の子供たちの運命は無視されてきました。他国の国境は守ってきましたが、自国の国境は開けたままでした。誰もが国境を越え、ドラッグ(薬物)が流れ込んできました。米国は中東だけでおよそ6兆ドルを使いましたが、米国内のインフラはぼろぼろでした。
  2.  労働人口に加わっていない米国人が9400万人います。4300万人を超える人々が貧しさのなかで暮らしています。そして4300万を超える米国人がフードスタンプ(食糧配給券)に頼っています。働き盛りの5人に1人が働いていません。
  3. 北アメリカ自由貿易協定(NAFTA)が承認されてから製造業の雇用の4分の1以上を失いました。中国が世界貿易機関(WTO)に加入してから6万以上の工場を失いました。2016年の米国の世界貿易赤字は8000億ドルに達しました。

トランプさんはこの現状に対し不満を持つ民衆を2016年の大統領選挙のときに自己の支持者に変えました。「地殻変動」が起こり、トランプさんが大統領となりました。

トランプさんは次のような施策を提起しました。

  1.  米国人の職を奪う「環太平洋経済連携協定(TPP)」からの撤退。
  2. 「暴力犯罪減少のためのタクスフォース」の創設。薬物の流入阻止、若者への汚染阻止。
  3. 「南側の国境沿いに大きな壁」を建設。
  4. 「過激なイスラムのテロリズム」から国を守るために強硬手段をとる。
  5. 「歴史的な税制改革」。大きな税率カット。企業への税率を減らし、中間層に対しても大型減税実施。
  6. 米国内のインフラに官民の資金で「1兆ドルを投資」し、数百万の新規雇用を生み出す。この取り組みの核となるのは「米国製品を買うこと」と「米国人を雇用すること」。
  7. 「オバマケア(オバマ前大統領の医療保険制度改革)」の廃止。新しい制度改革の実施。
  8. 数百万人ものアフリカ系米国人やラテン系米国人の子供たちを含む若者が「通学する学校をえらべるようにする資金」を提供。
  9. 警察官や保安官などの「法の執行者を支援」。
  10. 「犯罪被害者への支援」。
  11. 米国の安全を保持し、米軍に武器を提供するために「米国史上で最大級の国防費の増額」。

「大盤振る舞い」です。問題は「歴史的な税制改革」の中でこれらの施策が実現できるのか否かです。

トランプさんは対外政策について次のように述べました。

  1. 北大西洋条約機構(NATO)を強く支持します。しかし、私たちのパートナーは財政上の義務を負わなければなりません。
  2. NATOであれ、中東であれ、太平洋であれ、私たちのパートナーが戦略的、軍事的な作戦の中で直接的で意味ある役割を担い、そして応分の費用を負担することを期待します。
  3. 米国はすべての国が自国の未来図を描く権利を尊重します。私の仕事は世界を代表することではなく、アメリカ合衆国を代表することです。
  4. 私たちは過去の失敗から学ばなければなりません。戦争や破壊などの人道危機を解決する唯一の長期的方法は、自らの土地を追われた人々が再び安全に故郷に戻り、生活を再建する長い、長いプロセスを始められる状況をつくることです。
  5. 米国は利害関係を共有する新たな友人たちと出会い、新たな関係を築くことに前向きです。米国は過去の敵とも今は友人です。最も緊密な同盟国のいくつかとは、何十年も前、ひどい、ひどい戦争で敵国として戦いました。この歴史から私たちは、よりよい世界をつくれる可能性を信じることができるはずです。

最後にトランプさんは再び2026年の建国250年に戻り、次のように語りました。

建国100周年だった1876年に全土の市民がフィラデルフィアに集ったとき、アレキサンダー・グラハム・ベルが初めて電話を展示し、レミントンが最初のタイプライターを紹介し、トーマス・エジソンが自動電信と電気ペンを見せました。アメリカの250年に私たちの国はどのようにすばらしいものを知ることができるのでしょうか想像してください。

トランプさんは「もう一度、アメリカを信じて下さい」、「合衆国に神のご加護を!」との言葉で演説を終えました。

トランプさんはずいぶん「アメリカ合衆国大統領」らしくなりました。

ロシア、中国、朝鮮半島の問題については沈黙を守りました。

トランプさんの周りに知恵者がいることを感じました。

最大の問題は「米国史上最大級の国防費の増額」が実際にどのようになるのか、それが米国をどこへ導き、世界をどこへ導くのかです。

「国防費増額」は不況のときに考える政治家の「浅知恵」です。それが「戦争」へと導くのです。

真の政治家は「開戦・戦中・戦後」を考え、平和的に問題を解決することを考えるのです。